ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ジャッジ!』

2019-01-06 00:00:13 | 日本映画









 
2014年の正月に公開された日本映画です。

とある広告代理店の冴えないCMプランナー(妻夫木聡)が会社命令で海外の広告祭(CMコンペティション)に審査員として出席する事になるんだけど、その裏には秘密のミッションがある。

それは、お得意先企業のドラ息子が創った、どう見ても駄作なCMにグランプリを穫らせること。本来、審査員を務めるのは上司の豊川悦司さんなのに、お人好しな妻夫木くんに「断ればクビ(乳首)」って押し付けちゃったワケです。

もしグランプリを穫らせる事が出来なければ、会社は一番の得意先を失って大損害を被っちゃう。だから「失敗したらクビ(乳首)」って事で、妻夫木くんに逃げ場は無い。さぁ、どうする?

……とまぁ、序盤の展開だけ観たら凡庸なドタバタ喜劇なんだけど、ここからが素晴らしい。

実際に妻夫木くんが広告祭に参加してみたら、そこは当たり前のように買収がはびこる出来レースの温床だった。それはつまり、上手に立ち回りさえすれば、駄作CMにグランプリを穫らせる事も充分可能なワケです。

だけど、妻夫木くんにはそれが出来ない。自分が駄作だと思ってるCMに賞を穫らせる気には、どうしてもなれないんです。才能には乏しいけど、彼は根っからのクリエーターなんですね。自分のクビが懸かってるというのに……

そんな妻夫木くんに感化されて、出来レースに浸りきってた周りの審査員たちも、クリエーターの心を取り戻して行きます。私は泣いちゃいました。

現実のCMコンペはあそこまで酷くないだろうとは思うけど、お金とコネを持つ者が有利になる傾向は、少なからずあるんじゃないでしょうか? そしてそれは、映像や広告の業界に限らず、あらゆるジャンルに通ずる事かも知れません。

私自身、ほんの短い間ながら映像業界に身を置いた過去があり、あの世界で生き残るにはクリエーターとしての才能よりも、世渡りの才能の方がよっぽど必要である事を思い知らされました。

だけど、偉い人達に自分の顔を売ったりゴマを摺ったりする事が、私にはどうしても出来ませんでした。インディーズ時代に参加した映像コンペでも、他の応募者たちがせっせと組織票を集めてるのを横目で見ながら、そんな事して賞を貰っても意味が無いし、虚しいだけだと思って何もしませんでした。

本気で上を目指すなら、そんなちっぽけなプライドは捨てて、アンフェアな事でも何でもやるべきなんです。だけど私は結局、自分を捨てられなかった。負け犬です。ヘタレです。乳首です。足の裏です。だから、この映画の妻夫木くんには思いっきり感情移入できました。

現実には、あんなバカ正直な人間が周りを変えて行く事なんて、まずあり得ないだろうと思います。だからこそ、せめて映画の中だけでも夢を見たいじゃないですか。正直者がバカを見る事なく、ちゃんと報われる世界を。ちゃんと正義が勝つ世界を。

良かったです。面白かったです。めっちゃ笑ってめっちゃ泣きました。押し付けがましくないハイセンスな演出で、確実に笑わせてくれる永井聡監督の演出。巧みに張り巡らせた伏線を、意外な形で見事に回収してくれる、澤本嘉光さんの脚本。

そしてキャスト陣も皆さん素晴らしかったです。妻夫木くんは勿論のこと、広告祭に彼と同行するツンデレキャリアガールの北川景子さん。これまでイマイチ魅力を感じなかった女優さんなのに、本作では光ってます。

胡散臭さバツグンの豊川悦司さんにリリー・フランキーさん、ほか(敬称略)鈴木京香、荒川良々、玉山鉄二、伊藤 歩、風間杜夫、でんでん、加瀬 亮、木村祐一、あがた森魚、柄本時生、竹中直人etc…と、素晴らしいキャストが揃ってます。

これは観て損なし、皆さんにもオススメします。特にクリエイティブな仕事や趣味をお持ちの方は必見です。是非!
 

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2 コメント

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Unknown (キアヌ)
2019-01-06 22:25:09
ご推薦ありがとうございます!!!
素晴らしい作品でした!

ちょっぴり疲れていたので、とても元気が出ました!!!

基本的に映画はかくあるべきだと思います!!!

明日から頑張ります!!!
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>キアヌさん (ハリソン君)
2019-01-07 09:28:12
クリエイターの方が是非とも観るべきは『カメラを止めるな!』じゃなくて、こっちかも知れませんね。特に、企業に所属して様々なしがらみを味わってるプロの方ほど、強く共感できる映画じゃないかと思います。

そういうことを抜きにしても純粋に面白いし、もっと話題になって然るべき映画でしたよね。
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