第324話『愛よさらば』(1978.10.13.OA/脚本=小川 英&四十物光男/監督=竹林 進)
もちろん、ボン(宮内 淳)が主役の回でロッキー(木之元 亮)が殉職する筈もなく、電気ショックによる心臓マッサージでなんとか息を吹き返します。
この大手術を担当されたお医者さんが実に冷静なお方で、終始淡々と処置しておられるもんだから、我々視聴者はあまりハラハラせずに済みましたw
昨今の医療ドラマで描かれる大袈裟な心臓マッサージとどっちがリアルなのか知る由もないけど、お医者さんにはもうちょっと焦って頂いた方が場面的に盛り上がったかも知れませんw
ともかくロッキーは生き返ったけど、まだまだ予断は許されない状態で、ボンは気が気じゃありません。なにしろ初めての後輩刑事であり同居人でもあるロッキーは、単なる同僚を超えた存在。毛むくじゃらだしイビキは超うるさいけど、素直で憎めぬ可愛い弟分なのです。
そんなボンの様子を見て、その兄貴分であるゴリさん(竜 雷太)が声を掛けます。
「ボン、大丈夫だ。あれだけの崖から落ちても死ななかった奴だ。一度呼び戻した命を金輪際離すもんか」
「ええ……でもまだ心配です。七曲署には1年目のジンクスがありますから」
「! ……ボス、そう言えばロッキーは」
「その話はよせ。そんなジンクスなんか、ロッキーが吹き飛ばしてくれるさ」
とは言いつつ、ボス(石原裕次郎)にも普段の落ち着きが見られません。
この時点での殉職者はマカロニ、ジーパン、テキサスの3名だけ。1年後にボンが、そしてその翌年に殿下が死んだ辺りから正直なところ「殉職」に重みが無くなっちゃうんだけど、この頃はまだ違ってました。
しかし今はロッキーの復活を祈るしかなく、ボンは恋人=白城幸子(純アリス)を奪って逃走した尾形清(清水健太郎)の人間性を掘り下げるべく、捜査を再開します。彼の内面を知れば行く先も予測できると踏んだワケです。
すると困ったことに、聞こえて来るのは「清はいいヤツ」という声ばかり。
清はワールドドラッグ社への投資の件を知らなかったのに、子供が生まれたばかりの仲間(穂積ぺぺ)に強盗をさせない為に、あえて自分の手を汚した。
過去に起こした殺人未遂事件も実は、幸子の生い立ちを知った途端に彼女を捨てた、元婚約者が相手だった。だけど清は、その動機を最後まで言わなかった。幸子をそれ以上傷つけない為に。
最初は清を撃ち殺しかねない勢いだったボンも、知らず知らず清に共感していきます。もし自分が清の立場だったら、きっと同じことをしたに違いない……
「清がなぜ彼女を拉致したのか、これでやっと分かりました」
ボンの話を聞いて、ゴリさんも頷きます。
「刑事のお前とは、所詮は結ばれない。それを彼女に納得させたかったんだろうな」
「……清たちと我々は、本当に違う世界の人間なんでしょうか?」
「…………」
「解り合うってことは、もうホントに不可能なんでしょうか?」
「いや、そんなことはない。絶対にない。非常に難しいのは事実だが……」
「…………」
ボンと清は似た者どうし。なのに片や裕福な家庭で愛情いっぱいに育てられた警察官。片や孤児で肉親の愛を知らずに育ち、さんざん差別や虐待も受けて来たであろうアウトロー。
ゴリさんが言う通り、解り合うのは並大抵のことじゃないでしょう。それでも、ボンは諦めません。あくまで人を信じ抜く意志の強さは、七曲署歴代刑事の中でも一番かも知れない男なんです。
ところが運命の悪戯か、北海道に渡って来た清の仲間=次郎が、その行方を追ってた長さん(下川辰平)や地元の刑事たちから逃げようとして、交通事故に遭って死んでしまいます。
次郎の目的はどうやら、警察の捜査を撹乱することにあった。これもまた、言わば自己犠牲……
「清を逃がすために命を捨てたのか、次郎……」
そんな時に、ようやくロッキーが意識を取り戻します。次週にはケロッと元気に仕事復帰しますから、彼はやはり人間じゃありません。
すぐさま見舞いに来たボンは、あの時なぜ自らロープを切ったのか尋ねます。するとロッキーは、一人でも命を救える道を選択するのが「山の掟だから」と答えます。
「方法は別として、自分たちの村を作るために命を捨てた次郎……そして山の掟とは言えお前は、清のために命を捨てようとした」
そうさせる何かが、尾形清という男にはある。
「つき合ってみると、ホントにいい奴かも知れないな、清って」
だけど刑事である以上、ボンは清を捕まえなくちゃいけない。もちろん、強盗に荷担してしまった大好きな幸子も……
その清と幸子は、北海道を諦めて海外で「俺たちの村」を作ることを決意し、密航準備を進めてました。ロッキーに命を救われて一時は心が揺らいだ清だけど、次郎が「警察に殺された」と知って再びダークサイドへの道を突っ走ってしまうのでした。
だけど港まで行くには厳重な包囲網を突破せねばならず、その為に二人は深夜、鉱山の工事現場にダイナマイトを盗みに行きます。そこでバッタリ出くわしてしまう若い作業員を演じたのが、この1年後にスニーカー刑事として登場する山下真司さん。
実はすでにレギュラー入りがほぼ決まってたそうで、なのにボンの殉職が延期されて浪人生活を送る羽目になり、その埋め合わせとして北海道ロケに呼ばれたみたいです。『太陽にほえろ!』における山下さんの不遇は登場前から始まってたワケで、そりゃあ確執的な思いが残るのもムリないかも知れません。
「山へ逃げ込んだ二人ってあんたたちだろ? 俺たちの村ってのが出来たら、俺も入れてもらおうと思ってたんだ」
スニーカーは警察に通報するどころか「好きなだけ持ってけよ」と盗みの手引きを自ら買って出ちゃう始末。
自分たちの牧場を作ることがそんな大した夢なの?っていう疑問は正直感じるけど、現実社会に絶望し、夢にすがってないと生きてられない彼らの気持ちは解らなくもありません。往年のアメリカンニューシネマみたいなもんで、行き着く先は破滅しか無いんだけども……
さて、清と幸子が強奪したと見られる車が検問を突破し、西部警察ばりにダイナマイトをぶっ飛ばしながら派手に暴走します。
すぐに駆けつけたボン、ゴリさん、長さんに包囲されるんだけど、運転してたのは清ではなく、後のスニーカー刑事でした。(もちろん実際のスニーカー=五代潤とは別キャラです。念のため)
「貴様、何者だ?」
「尾形清の仲間さ。もっとも仲間になってまだ半日しかつき合ってねえけどな」
そう、これも清たちを逃がすための陽動作戦。だけどそこは素人の浅知恵で、かえって刑事たちに清たちの行く先を特定させる結果を招きます。恐らく清はこの道と逆方向、つまり大雪山を目指しており、旭岳ロープウェイを使うに違いないとボンはヤマを張るのでした。
「ボン、車じゃ間に合わんかも知れんぞ」
「!!」
『太陽にほえろ!メインテーマ(信じあう仲間バージョン)』をバックに、ヘリを飛ばすボン! 眼下に広がるのは大雪山の雄大な風景! シビレます。『太陽~』にはなぜか大自然がよく似合う!
そしてロープウェイを降りたばかりの清&幸子を見つけたボンは、ヘリの着陸を待たずに決死のダイビング! このスタントにはジャパン・アクションクラブのメンバーが駆り出された模様です。
さぁ、ここで名曲中の名曲「ジーパン刑事のテーマ(青春のテーマ)」をバックにボンが疾走! カメラはその勇姿を上空から捉えます。単なる駆けっこをこれほど力を入れて撮り、これほど時間を割いて見せてくれるテレビ番組は、陸上競技の中継を除けば『太陽にほえろ!』以外にありません。だから私はこのドラマを愛してやまないんです。最高!
で、清と幸子は山の中腹にある避難小屋へと逃げ込み、ボンも続いて駆け込みます。そこには数人の登山者がいて、ダイナマイトを持った清にとって格好の人質となります。
拳銃を抜いたボンは清に銃口を向けながらも、必死に説得を試みます。
「盗んだ金でユートピアなんか作れやしない! やり直すんだもう一度!」
「うるせえんだよ! やり直せやり直せって、それがお前らの決まり文句さ! その一言で俺たちに手錠をぶちこみ、ムショに放り込んで安心してやがんだっ!!」
実際、地元の刑事は「あんな連中は1日でも長く刑務所に入れとくに限る」なんて言って、ボンを怒らせたりしてました。そんな世間に対する清の恨みが、積もりに積もってついに爆発したワケです。
「俺たちは、俺たちの村を作るほか無いんだよ……人間らしく生きるには……自由で幸せに生きるには、それしか無いんだ。それしか無いんだよ田口さん!」
「分かる! お前の気持ちは分かる! だから、それを正しい金で作るんだ。俺だって力になるよ! でも今はやめるんだ。俺はお前にこんなマネをして欲しくないんだよ! 清っ!!」
「あんたも、ただのデカなんだ! あんなインチキ会社に金返すくらいなら、お前らと一緒にここで死んでやるよっ!!」
「!!」
いよいよ清がダイナマイトの導火線に火を点けてしまい、ボンは拳銃の引金に指をかけます。撃たなければ、清を殺さなければ、幸子も登山者たちも救えません。でも……!!
ここで銃声が轟き、清の身体が小屋の壁へと叩きつけられます。と同時にゴリさんと長さんが突入し、導火線の火を消し止めます。
「お兄ちゃん!! お兄ちゃん!! お兄ちゃん!!」
幸子が駆け寄り、清の身体を揺らしますが、胸に被弾した彼は二度と動くことはありませんでした。
ボーゼンと立ち尽くすボンが窓の外を見ると、上空のヘリコプターに、拳銃を構えた藤堂ボスの姿が……
ボスが持ってたのはリボルバー拳銃のCOLTローマンMk-III4インチ。飛行中(すなわち激揺れ)のヘリから、数百メートル先の山小屋の中にいる人間を4インチの拳銃で狙撃し、たった1発で息の根を止めるという、ゴルゴ13でさえ不可能であろう神技をやり遂げられた理由はただ1つ。ボスだからです。石原裕次郎だからです。ロッキーとはまた違う意味で人間じゃない、ほぼ神様なんです。
だけど、ここはせめてライフル銃を使って欲しかった! この件については、後であらためて検証させて頂きます。
ともかく尾形清がボスに射殺され、「俺たちの村」の夢は完全に幻となりました。
「ボス……殺せなかった……俺には、殺せませんでした」
「……手錠だ、ボン」
「!!」
そう、ボンが愛した白城幸子は強盗事件に荷担し、清の逃亡を手助けするなど数々の罪を犯してしまったのです。ボンはじっと幸子の眼を見つめ、幸子も見つめ返します。
「白城幸子……強盗共犯容疑で、逮捕する」
切ないラストシーンです。充分に切ないんだけど、ボンが自分で尾形清を射殺しなかった事については、ファンの間で賛否両論があったみたいです。
『太陽にほえろ!』の新人刑事たちは代々、殺したくない犯人をやむなく射殺するという最大の試練を乗り越え、成長し、卒業していきました。
ところがボンだけは最後まで1人も殺さないまま殉職するんですよね! いや、正確にはマイコンとDJも射殺未経験のまま終わってるんだけど、DJは任期があまりに短かったし、マイコンは石原良純さんだから仕方ありませんw(ジプシーも確か殺さず終いだけど、彼は新人刑事じゃないから例外でしょう)
賛否両論の「否」は、要するに「甘いんじゃない?」って声だろうと思います。ボンというキャラクターに対しても甘いし、アクションを売りにした刑事ドラマとしても甘い。
だけど私は、ボンに限っては射殺経験ゼロで良かったと思ってます。とことん人間が好きで、何があっても人の良心を信じ抜くボンは、やっぱり何があっても人は殺せない。ドラマとして筋が通ってます。
もしかするとこのエピソードで、本来ならボンが清を射殺する予定だったんじゃないかって、思ってた時期もありました。それが撮影当日に急遽、ボスが代わりに射殺する案に変更されたもんで、小道具さんがライフル銃を用意しておらず、やむなくリボルバーを使う事になったのかも?って。
ところが脚本にはちゃんとボスが「拳銃で」射殺するって書かれてたそうです。ってことは多分、銃の知識に疎いライターさんがそう書かれたのを、小道具さんも真に受けてライフルを用意しなかった、っていうのが真相じゃないでしょうか?
思い返せば前編の中盤、ボンが射撃訓練所でマンターゲットの心臓ばかり狙う=憎しみに駆られて清を射殺するかも知れない、っていう伏線が張られてるんですよね。
本当にラストで射殺させるつもりなら、逆にそんな伏線は張らない筈です。つまり創り手たちは最初から、ボンにだけは何があっても射殺はさせないって決めてた。私はそう確信するワケです。
歴代刑事の中でもボンがイチオシだった私としては、そんな創り手たちのボン愛が詰まったこのエピソードもまた、イチオシせずにいられません。いや、ボンだけじゃなく、ロッキーも本当に痺れるほどカッコ良かった。今回だけはw
ゲストの清水健太郎さんも光ってるし、ヒロインの純アリスさんは歴代「ボンの相手役」の中でも一番ステキだったと思います。
そんなアリスさんは当時25歳。父親がニュージーランド人で2歳の時に両親が離婚しており、祖母に育てられ家庭というものを知らずに育った生い立ちは、今回演じられた白城幸子のキャラに少なからず反映されてるかも知れません。
柴田恭兵さんを輩出した「東京キッドブラザース」に所属し、同劇団でほぼ同期の三浦浩一さんと'80年にご結婚。次男の三浦孝太くんと三男の三浦涼介くんは共に俳優となり、特に涼介くんは私が脚本家として参加した戦隊ヒーロー番組にレギュラー出演された上、タベリストツアーで観に行った舞台で多部未華子さんと共演される等、ちょっとした縁を勝手に感じさせてもらってます。
なので昨年、アリスさんが66歳の若さで亡くなられたのはショックでした。ご冥福をお祈り致します。合掌。
実は、私…「2大胸ポロリ事件」の目撃者でして…
一件目は、「暑さをぶっ飛ばせ」という、関西方面のテレビのバラエティーで、水上リンボーダンスを水着姿のゲストと一般人がやり、バーを落としてしまったら、プールに突き落とされるという内容のものでした。
その時の被害者が、まだ写真集を出す前の純アリスさんだったのです。「アザミの花」で清純派でしたからその映像は「鮮烈」でした。
あれは、ヤラセではなく「放送事故」だったと思います。この事件がきっかけで、その後に脱いだのだと。
二件目は、「オールスター寒中水泳大会」で、プールに浮かべた板を男女で手をつないで渡るというゲームでのこと。
西城秀樹と組んだのは、若かりしころの浅野ゆう子さんでした。
水中に落ちたときに、右のブラがめくれあがって… 秀樹に引き上げられた時には… この映像も、繰り返し夢に見るほど「鮮烈」でした。
浅野ゆう子さんも、その後に写真集出されますが、この事件の影響からか「乳首だけは出しませんでした。」
二件ともに、いまだに思い出す「最高の記憶」です。
もう少し早く「家庭用ビデオ」があったら…と、悔やまれます。
特に少年期に目撃した女性のハダカ、それもメジャーアイドルのポロリと来れば、物凄い衝撃だし歳を重ねても色褪せないですよね。現在のテレビ番組は本当につまらないですw