2016年に公開された、中野量太 監督・脚本による日本映画。
1年前に夫の一浩(オダギリジョー)が失踪し、パートの仕事でなんとか娘の安澄(杉咲 花)を育ててる双葉(宮沢りえ)が、体調不良で倒れて精密検査を受けてみたら、末期ガンで余命数ヶ月だったから驚いた!
探偵(駿河太郎)を雇い、若い女と同棲してた一浩を見つけ出した双葉は、その隠し子(伊東 蒼)と一緒に彼を連れ戻し、死ぬまでにやるべき4つのことを果たしていきます。
1つは、一浩の失踪で閉めていた銭湯の営業を再開すること、もう1つは学校のイジメっ子たちに安澄を立ち向かわせること、そして残りの2つは……そこはかなり計算されたサプライズになってますので、ここでは伏せておきます。
余命数ヶ月をどう生きるか?っていうシンプルな話に見えて、この映画はかなり捻ってあります。前半に出てくる蟹や手話、新品のブラジャーといった何気ないアイテムが、後半への重要な伏線になってて、その意味が判るたびに泣かされます。
あざといと言えばあざといんだけど、それら全てに共通して込められてるのが双葉の「無償の愛」なんですよね。人を愛するという事がどういう事なのか、言葉じゃなく行動で示す双葉に、誰もが魅了され、死んで欲しくないと思わずにいられません。
涙が枯れるほど泣かされるんだけど、これみよがしな「泣かせ」演出が無いからこそ素直に泣ける。むしろ、普通ならそこをタップリ見せて泣かせるだろうっていうシーンを、ことごとく省略してるんですよね。
冒頭、銭湯の休業を知らせる貼り紙が映されるんだけど、双葉が書いたに違いない「湯気のように店主が蒸発したので休業します」っていう文面に、この映画が単なる「お涙頂戴」じゃないことが象徴されてて、私は心を鷲掴みにされました。
この上なく深刻な状況下でもユーモアを忘れない、双葉の明るさと強さ。それがこの映画そのものの魅力になってると思います。
「湯を沸かすほどの熱い愛」っていうタイトルの意味が示されるラストシーンは衝撃的で、巷では賛否両論(あり得ない!って言う人が多い)らしいけど、私は自然に受け止めました。この人達ならそれくらいやるだろうって思えるように、キャラクターがちゃんと描かれてますからね。
この映画はオススメです。ただの泣かせ映画じゃありません。むしろ、深刻だからこそ笑えるコメディで、だからこそ泣けちゃうという珍しい作品です。
たぶん、監督さんも日曜劇場みたいな「涙の押し売り」が大嫌いな方で、そうじゃない描き方を考えに考え抜いた渾身の一作なのかも知れません。
かく言う私も、タベリストのyamarineさんがブログで薦めておられなきゃ観なかった種類の映画で、師匠に感謝ですm(__)m
宮沢りえさんを筆頭にキャストみんなが素晴らしいけど、特に杉咲花ちゃんが良かった。イジメに立ち向かうために教室で見せる下着姿は、痛々しくも母の愛を感じさせる温かい場面で、いやらしい眼で見てたのは私だけですw
(ただし、あれでイジメっ子たちが本当に改心するものかどうかは疑問。基本、この映画は性善説を信じるスタンスで、そこに甘さを感じなくはありません)
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