好きなアクション映画は数限りなくあるんだけど、近作で真っ先にオススメしたい作品を1つ選ぶとしたら、リュック・ベッソン製作による2008年公開のフレンチ・アクション『96時間』になるかと思います。(近作と言っても、もう10年前なんですね……)
本作最大のポイントは何と言っても、主役を演じるのがリーアム・ニーソンであること。
『シンドラーのリスト』で注目されたこのベテラン俳優は、身体はごっつい(2メートル近くある!)けど知的な演技派のイメージが強く、重厚な人間ドラマが似合う性格俳優だと私は思ってました。
考えてみれば『スター・ウォーズ episode1』とか『バットマン・ビギンズ』みたいな娯楽大作にも既に出ておられたんだけど、それでもこの人がバリバリの肉体アクションを演じると聞けば、それだけで驚いたし興味も湧きました。
主人公のブライアンは元CIAの特殊工作員で、引退した現在はフリーのボディーガード業で生計を立ててるんだけど、彼には離婚した妻と娘がいる。
仕事漬けで家族を顧みなかったブライアンは、かつての自分を悔やみ、妻子との絆を修復したいと願っており、特に年頃になった娘のキム(マギー・グレイス)が心配で心配で仕方がない。でも、とっくに彼を見限った元妻(ファムケ・ヤンセン)は、大富豪と再婚しちゃうんです。
17歳になったキムのバースデーパーティーで、ブライアンは慎重にリサーチを重ねて選び抜いたCDラジカセをプレゼントするんだけど、キムは金持ちの新しいパパから贈られた可愛い馬に大はしゃぎ。
幸せそうな娘の姿を、端っこでポツンと、CDラジカセ片手に見守るブライアン。そんな冒頭数分の描写で、観客はすっかりブライアンに感情移入しちゃいます。
これがスタローンやシュワちゃんだったら笑っちゃうかも知れません。スティーブン・セガールだったら嘘っぽく見えてシラケるかも知れません。
演技派で、哀愁が服着て歩いてるみたいなリーアム・ニーソンだからこそ、冒頭数分だけで我々のハートを掴む事が出来るんですよね。
アクション映画が面白いか否かは、観客が主人公にどれほど肩入れ出来るか?で決まると私は思います。それがスムーズに出来なければ、どんなに素晴らしいアクションシーンがあろうとも「いやぁ、こりゃ凄いね」だけで終わって翌日には忘れちゃう。
その点で『96時間』は完璧だと思うし、それが出来たのはリーアム・ニーソンという存在があればこそ。もちろん、優れた脚本と演出も不可欠だけど。
というワケで、我々はブライアンが娘・キムの事をどれほど溺愛してるかを冒頭で認識し、彼には是非とも娘との絆を取り戻して欲しい!って、心から願いつつ先の展開を見守る事になります。
で、キムが旅行先のパリで人身売買組織に拉致されてしまう。売値が決まって海外に輸送される迄のタイムリミットは約96時間。それまでに救出しなければ、娘はほぼ100%戻って来ない。
異国の地でプロの犯罪組織に拉致され、手掛かりは何も無い。警察が動いたところで、96時間以内にキムを探し出せるワケが無いし、新しいパパがいくらお金持ちでもどうする事も出来やしない。
だけど、ブライアンは違う。彼はキムと国際電話で会話中にいち早く異変に気づき、拉致されるまでの僅か数十秒間にキムから犯人の特徴を聞き出しながら、同時に出発準備を始めちゃう!
そして、たった今キムを拉致した犯人が彼女の携帯電話を取ると、ブライアンはこう言うんです。
「私は、長年培った特殊なスキルを持ってる。今すぐ娘を解放するなら、何もしない。だが、もし解放しないのなら、私はお前がどこにいようと必ず見つけ出し、そして殺す」
そんな事が出来るワケ無いと思ってる犯人達は、当然ながらブライアンの温情あふれる交渉を無視します。その瞬間、彼らの運命は決まってしまうのでした。
この後、ブライアンがたった1人で如何にしてキムの行方を探し出し、異国の地で僅かなタイムリミット内に極悪非道な犯罪組織から救出して見せるのか?
とにかく、凄いです。彼は手段を選びません。選んでる暇も無いんです。敵と見れば一瞬の迷いも無く殺すし、情報を聞き出す為なら無関係な市民でさえ撃っちゃう。
「娘を助け出す為なら、私はエッフェル塔でも壊してみせる」
とんでもないオヤジがいたもんです。筋金入りの悪党どもが、そんな男の娘をうっかり誘拐しちゃった事を、悔やむ間もなくあの世に送られて行く様を、是非ともお楽しみ下さいw
PS. 本作にも2本の続編が存在しますが、そちらはオススメしません。『ダイ・ハード』シリーズと同じで、1作目がパーフェクトだと続編はツライですね。
セクシーショットはブライアンの愛娘=キムを演じた、マギー・グレイスさんです。
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