2016年の秋シーズン、フジテレビ系列の日曜夜9時枠で全10話が放映された、フジテレビ&共同テレビの制作による警察ドラマ。
東京・北町警察署に署長として赴任したばかりのキャリア警視正=遠山金志郎(玉木 宏)が、自ら町に出て庶民のピンチを救う、刑事ドラマ版『遠山の金さん』といった趣。
そんな署長と対立するノンキャリアのベテラン刑事に高嶋政宏、新米刑事に瀧本美織、その同僚に白州迅、平山祐介、勝矢、副署長に柳沢慎吾、キャリア警視監に近藤正臣etc…と、地味ながらも堅実なレギュラーキャスト陣。
警察署長を主人公にしたドラマは過去にもあるし、人情系の捜査ドラマゆえ、展開はほぼ先読み出来ます。私が求める目新しさ、サプライズは期待出来ないし、おかしな部分も少なくないんだけど、好感度の高さと安定感で、観ると癒されるドラマになってます。
イジメやDV、ストーカー被害など、庶民がSOSを発信しても警察がなかなか応えられない現実を憂い、どんどん現場に出て小さな声を拾おうとする主人公のキャラクターが、玉木宏さんの飄々とした佇まいにピッタリで、とても魅力的です。
そんな署長をサポートする新米刑事役の瀧本美織さん。ハツラツとしながら爽やかな色気も漂わせて、ずっと観ていたくなる吸引力があります。朝ドラ『てっぱん』の時は何も感じなかったのにw
そして高嶋政宏さんの極端な武骨さがまた、物腰柔らかな玉木さんと実に対照的で面白い。
刑事ドラマはやっぱり、謎解きよりもキャラクター(そしてキャスティング)が肝心。安易に話題性を狙う事なく、ちゃんとしたものを創ろうとする姿勢が本作には感じられます。
ただ、小さな出来事が大きな事件と繋がってることを示す展開が、ちょっと初回は強引すぎましたw
で、これはけっこう致命的な弱点かも知れないのが……
飄々として腰の低い玉木さんが初めて、署長という身分を悪人たちに明かすクライマックス。桜吹雪の入れ墨、あるいは黄門様の印籠よろしく、玉木さんが警察バッジ(桜の代紋)を振りかざし「この桜に誓って悪事は見逃しません!」って、クサい台詞を決めるw
さすがに「ははあーっ!」って、相手がひれ伏すまではいかないんだけど、初回では犯人のボンボン学生とその父親(町の権力者)が、「ええっ? しょ、署長ぉーっ!?」ってw、腰を抜かさんばかりに驚き、観念してました。
これを言っちゃあ、お終いなんだけど……所轄署の署長に、それほどの威厳があるんでしょうか?w 『踊る大捜査線』で言えば、初代が北村総一朗さんで二代目がユースケ・サンタマリア君ですよ?w
それ以前に『太陽にほえろ!』の時代から、所轄の署長と言えば本庁の言いなりで、そのくせ部下にはガミガミと口うるさいだけの、どちらかと言えば小者として描かれて来ました。
現実は違うのかも知れないけど、我々視聴者にはそういうイメージが定着してますから、めちゃくちゃ違和感があるんですよね。だからこれ、企画として根本的に失敗してるような気がしてなりません。
でも、そういうチグハグさがチャーミングだったりもする。挑戦しなければ失敗もしないワケで、何もかも無難に定型通りに収めようとする、例えば裏番組の日曜劇場なんかよりよっぽど魅力的です。
皆さんにオススメするのはやめときますがw、私個人としては応援したい番組です。