1985年に公開された、ジャッキー・チェン主演&ジェームズ・グリッケンハウス監督によるアメリカ&香港の合作映画。
'80年公開の『バトルクリーク・ブロー』に続くジャッキーのハリウッド進出第2弾で、代表作『プロジェクトA』('83)、『スパルタンX』('84) に続いて公開された注目度MAXの作品。初めてジャッキーが現代劇で刑事を演じた作品でもあります。
とにかくジャッキーが最も勢いに乗ってた時期で、矢継ぎ早に公開される主演作の数々を、私も劇場に駆けつけてよく観てました。
もちろん、ポリスアクション物である『プロテクター』は特に楽しみにしてた作品です。なのに、近年ファン投票により選出された「ジャッキー映画ベスト50」において、本作はなんと第49位!という栄誉に輝いちゃいましたw(ちなみに第1位は『ドランクモンキー/酔拳』、最下位は『ツイン・ドラゴン』)
ストーリー自体にはこれと言って問題はありません。ニューヨーク市警に10年勤めるビリー・ウォン刑事(ジャッキー)が警備を担当したファッションショーで主催者令嬢(ソーン・エリス)が誘拐され、香港に連れ去られちゃう。シュワちゃんの『レッドブル』とは逆パターンで、ビリーはアメリカから故郷の香港へ飛んで大暴れするワケです。
その相棒となるのは同じニューヨーク市警の陽気な暴力刑事=ガローニ。演じるダニー・アイエロさんは小太りの薄毛中年で、もうちょっとカッコいい人はおらんかったんかい?とは思うけどw、ヤング筋肉スターのジャッキーを引き立てるには最高の適任者とも言えます。
ほか、前年公開の『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』でも印象深い悪役だったロイ・チャオ、歌手としても有名なサリー・イップ等、共演陣には恵まれてます。
じゃあファン達は一体、何が気に食わなかったのか?と言えば、たぶんジャッキー演じるビリー刑事のキャラがちっともジャッキーらしくなかったから、に尽きるかと思います。確かに私も、当時は大いに違和感を覚えながら観てました。
なにしろ冒頭のアクションシーンで、ビリー刑事はいきなり強盗犯に複数の銃弾をぶち込んで射殺しちゃう。その次のアクションシークエンスも銃撃戦で、なんとニューヨークにいる間は一切カンフーを披露しない!
で、舞台が香港に移って殺し屋に狙われ、そこでようやくジャッキーらしいカンフーアクションが見られるんだけど、いつものコミカル要素が封印されてイマイチ弾けない。しかも、あまり必然性が感じられない女性のヌード(アンダーヘア丸出し)が随所で見られちゃう! 嬉しい!w けど全然ジャッキーらしくない! ジャッキーが民間人を銃で脅して「ユー、サノバビッチ!」とか言うし!
どうやら監督のグリッケンハウス先生は『ダーティハリー』ばりのクール&ハードなポリスアクションを想定されてたらしく、根っからヒューマニストのジャッキーとは全くソリが合わなかったみたいです。
だから、ビリー刑事がハリー刑事ばりに問答無用で悪党を処刑しても、演じるジャッキーが納得してないもんで矛盾が生じちゃう。大型オートで何発も銃弾をぶち込んでおきながら、その表情には後悔が滲んでるから全然スッキリしないし、我々は彼の人間性がつかめず感情移入出来ないワケです。
多くのジャッキー・ファンはグリッケンハウス監督を責めるかも知れないけど、私は逆だと思います。ハリウッドに招かれた以上、ジャッキーは文句を言わず監督の意向に100%従うべきだった。そしたら、徹底してクールなジャッキーが本作ならではの見所になったはず。
だけどハリウッド進出第1弾の『バトルクリーク・ブロー』が不発に終わったせいで、ジャッキーにも譲れない想いが強烈にあったんでしょう。妥協せず自分の良さをしっかりここでアピールしないと!って。
なのでジャッキーは製作側と戦い、アジア圏で公開するバージョンを自ら改訂する権利を勝ち取り、自腹を切って再撮影&再編集を決行したそうで、私が当時劇場で観たのは恐らくその改訂版。今回、女性のヌードシーンを観て「あれっ? こんなシーンあったっけ?」って驚いたんだけど、DVDに収録されてるのはどうやら改訂前のアメリカ公開版みたいです。
そんなこんなで、ジャッキー・ファンの皆さんが本作を支持しない理由はよく解るんだけど、私はあまりに健全すぎるジャッキー映画(というよりジャッキーが演じるキャラ)が鼻について観なくなっちゃったクチなので、ダーティハリーの真似事をやらされてる本作のジャッキーは新鮮で逆に支持したくなります。
ジャッキー映画として観れば、ドンパチがメインの本作は確かに物足りない。けど、いかにもアメリカンなポリスムービーにジャッキー・チェンが出てる違和感こそが、今となっては唯一無二の見所になってると私は思います。
しかしそれにしても、ジャッキーが若い! スタローン先生もシュワちゃんもみんな若い! で、みんな還暦をとっくに過ぎた今でも現役アクションスターなんだから、ほんとに凄い!
実際に香港で起きた不動産王誘拐事件をモデルにした映画でして、それこそジャッキー映画によくあるコミカルさのない作品ですが、自分は好きです。
「プロテクター」も見てみようかな…。