2021年冬シーズン、テレビ東京系列の月曜夜10時「ドラマプレミア10」枠で全8話が放映された、テレビ東京&ギークピクチュアズの制作による刑事ドラマ。我が中部地方では半年遅れの放映となりました。
インターネット上での誹謗中傷や炎上などを苦に、被害者が自殺してしまうキーボードによる殺人、いわゆる「指殺人」が社会問題化していることに対応するため警視庁・生活安全部に新設された架空の部署「指殺人対策室」メンバーたちの活躍が描かれます。タイトルの「アノニマス」は「匿名」を意味するギリシャ語由来の英語だそうです。
かつて捜査一課の敏腕刑事だったけどワケありで新設部署に飛ばされた一匹狼のやさぐれ警部=万丞渉に、香取慎吾。
そして万丞の相棒となる元交通安全課婦警の碓氷巡査部長に関水渚、情報収集担当の菅沼巡査部長にMEGUMI、デジタル担当の四宮巡査部長に清水尋也、室長の越谷警部に勝村政信が扮するほか、山本耕史、シム・ウンギョン、田中要次、高橋克実etc…といったキャスト陣が脇を固めます。
匿名のネット民たちによる「文字の暴力」に鉄槌を下す刑事たちっていう設定は、実に素晴らしい!と、まずは思いました。
香取慎吾くんの演技は相変わらずクサいし、他のキャラクターたちも皆ステレオタイプに感じるけど、とにかく卑劣なネット民どもを誰か懲らしめてくれ!っていう我々の切なる願いに応えてくれた、創り手の皆さんには惜しみない拍手を贈りたいです。
……ただ……
第1話を観た限りだと、ちょっと方向性が違うんじゃないの?って、言わざるを得ない内容になってます。
ちょっとしたゴーマン発言がバッシングの的にされた人気モデル(八木莉可子)が自殺し、その両親(松平健&床嶋佳子)の訴えにより指殺人対策室が動き出すワケだけど、捜査の結果、誹謗中傷の火に油を注いだSNSの書き込みが全て特定のファン(山中 崇)による偽造だったり、そいつを動かしてた黒幕が被害者のモデル仲間(中田青渚)で、ライバルであり親友だった彼女の心ない一言が、実は自殺の引金になってたことが判明していく。初回はそんなストーリーでした。
なんか、違うよなあ~、それじゃ意味が無いんだよなあ~って、私は思いました。
「指殺人」の問題って、そういう事じゃないでしょう? 被害者とは直接関係のない、顔も名前も分からない連中が、正義感のつもりで無責任に書き込んだ言葉が被害者を追い詰めちゃう、その悪質さを裁かないと何の意味も無くないですか?
実行犯が被害者を偏愛するストーカーみたいなヤツで、黒幕が被害者を密かに憎んでる親友だった!って、それじゃいつもの謎解きゲーム番組と何も変わりませんやん!って話です。モデル仲間が被害者に直接言った言葉が自殺の引金なら、指殺人じゃなく口殺人じゃないの!?って。
「指殺人」が単なるネタというか、話の取っ掛かりだけで終わっちゃってますよね? 一応、炎上を煽った一部のネット民たちにも罰は下るだろうって、サラッと一言で片付けてましたけど、おいちょ待てよ、そっちをメインに描くんじゃなかったの!?って、新婚さんいらっしゃいの文枝師匠ばりにズッコケましたよ私はホントに。
やれやれ…… たぶん、最初はそうするつもりだったと思うんです。だけど「それじゃドラマにならない!」だの「謎解き&どんでん返しが無いと誰も観ない!」だのって、ど素人が集まった「製作委員会」連中の横やりが入って、ああだこうだイジッてる内に普通のミステリーになっちゃったって、どうせそんな顛末でしょう。
会議室にこもって何時間もああだこうだ言い合ってる内に、果たして何が正しいのか、自分たちがいったい何をやりたかったのか、頭がウニになって見失なっちゃう事ってあると思うんですよね。そうでなければ途中でヤル気が無くなったか、いずれにせよ思考が停止しちゃったように見えてなりません。
「強い人間なんていない。人は誰でも、この指1本で傷ついてしまう」
この万丞警部のセリフこそがメインテーマであり、それを罪悪感なく軽い気持ちでやってる不特定多数を炙り出し、片っ端から懲らしめなきゃ意味がない!と私は思う。現実には難しいことをやり遂げてこそドラマじゃないの?って。
何が何でもミステリーにしなきゃダメなんですか? 本当に視聴者は皆それを望んでるんですか? テレビ屋さんたちが勝手にそう思い込んでるだけでは? あるいは、そうせざるを得ない「大人の事情」があったりするの?
せっかく2020年代ならではの社会問題にフォーカスを当てたのに、何をやってんですか?と私は問いたいです。つくづく、香取慎吾くんのドラマとは相性が悪い!
唯一の収穫は、前クールの刑事ドラマ『キワドい2人/K2』(TBS) でもヒロイン役だった、関水渚さんのハツラツとした演技。陰気なストーリーの中で私にとってのオアシスです。
グラビアアイドルから映画『町田くんの世界』('19) でヒロイン役に抜擢され高評価を獲得、『カイジ/ファイナルゲーム』('20) や『コンフィデンスマンJP/プリンセス編』('20) 等の映画でも注目され、'21年夏ドラマ『八月は夜のバッティングセンターで。』ではいよいよ主演を務められるそうで、いま注目すべき女優さんの1人です。
まぁ、物語にするには多少の脚色は必要なのかも。
ただ昨今の芸能人に対する誹謗中傷。特に衝撃的だった木村花さんの件にインスパイアを受けての作品だと思うんですが、なんか方向性が違うような。
しかし、製作としてはボカすしかない部分もあるのかもしれないすけど。
ドラマを放送するテレビ局も、どちらかと言うと人を傷つける側の立場ですし。
木村花さんの件も原因は番組の演出だったのに、ネットの誹謗中傷に責任転嫁した感否めない。
そもそもの題材が破綻していたのかもしれないですね。
社会問題を描くより娯楽作品にした方が作るのが楽ですしw
とはいえ、今のテレビ番組に出来る、これが精一杯なのかも知れませんね。創り手は決してラクな道を選んだワケじゃなく、ギリギリまで闘った結果なのかも?
木村花さんの件は確かに、番組スタッフの責任も問われて然るべきですよね。ギャラをもらった以上、被害者側は文句を言いづらい(言ったらそれでまた袋叩きにされちゃう)かも知れないけど、マスコミはもっと斬り込んでも良さそうなもんです。ほんとモヤモヤするばかりの世の中ですね。
クズばかりではないだろうことが、私にとっての救いでありますが。。。。
世の人々には、現実の世界と仮想空間との違いをどうか分かっていただきたいものです。クズを相手にする必要はないのです。アノニマスの立場で自分の発言に何を言ってこようが無視すればいいのです。自分の名前も言えないようなヤツの言葉なんか、即“削除”すればいいのです。クズの言うことを真に受けて命を絶つなんてアホらしいにもほどがある!
ハァハァ・・ちょっとお茶を一杯。。
私は今の民放になんの期待もしていません。ずっと期待し続けて疲れてしまいました。もしかするとかつてのような“来週も見たくなる”ドラマをこれから作ってくれるかもしれませんが、ハッキリ言って期待していません。
民放ドラマを楽しみに待っていらっしゃる方が世間に大勢いらっしゃることは重々承知していますし、そういう人たちのことをあれこれ言うつもりは全くないのです。
ただ、私は見ない。
昨日やってたEテレの『なれそめTV』は、私にいろんな示唆をくれました。世の中は、私の知らないことばかりです。
あ、関水渚さんには私も期待しています。『町田くんの世界』での彼女の存在感は格別でした。民放ドラマで削られる前に、映画や舞台で活躍する姿を拝見出来ればいいなと思っていますが、まあ、事務所次第でしょうか。
インターネットも、こんな殺伐としたメディアになっちゃうとは予測してなかったです。やっぱり怖いですね、人間は。世の中は……久々にこのフレーズを書きますが、破滅です。