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ショーケンさんの呑み友達だった縁と、第20話『そして愛は終わった』でゲスト=沢田研二さんの指名もあって『太陽にほえろ!』に初参加された脚本家=市川森一さんの第2作。
クールな色男ってキャラ設定がイマイチ馴染まなかった殿下(小野寺 昭)に、優し過ぎて刑事に向いてない男という新たな個性が与えられ、定着するきっかけになったエポックなエピソードでもあります。
先のジュリー編や第36話『危険な約束』など屈指の名エピソードの数々、そして番組終盤まで活躍する名物ゲスト=鮫やん(藤岡琢也)というキャラまで生み出した市川さんは、やっぱり凄い人です。
この第33話でも、殿下が刑事になった理由が「男らしさ」へのコンプレックスで、学生時代に男からラブレターを貰ったショックがきっかけだったり、殺人を犯した女性の動機が「土地への執着」だったりと、私ら凡人には発想出来ないアイデアの数々に唸らされます。
で、その女性を演じたのが、刑事ドラマファンにもタベリストにも馴染み深いベテラン女優=吉行和子さん。1950年代から活躍され、当時すでに37歳なんだけど、そうは見えない若々しさ。
本作は脚本も素晴らしいけど、吉行さんの吸引力&説得力ある演技で、とても見応えあるエピソードに仕上がってます。
☆第33話『刑事の指に小鳥が…』
(1973.3.2.OA/脚本=市川森一/監督=金谷 稔)
ストーカーにつきまとわれる人妻=澄江(吉行さん)の相談に乗り、知らず知らず彼女の魅力に傾倒していく殿下。そのストーカーが澄江のマンションで転落死した日から、落ちぶれた漫画家である彼女の夫(柳生 博)も行方不明になり……
ジュリー編と同じく冒頭から犯行の様子が描かれ、澄江が2人とも殺した事を我々視聴者は知ってるんだけど、その動機が分からないもんだから最後まで興味を引かれるし、彼女の本質に気づかない殿下にもハラハラさせられます。
最初に澄江が怪しいって言い出すのがマカロニ(萩原健一)なのも面白いし、殿下が初めて感情を露わにしてマカロニに掴みかかったり等、他の回では観られない描写が多々あって新鮮です。
しかし、華奢な女性である澄江に、大の男をベランダから突き落とす事が出来るのか? その疑問に対する答えを、澄江に同じ手口で殿下を突き落とそうとさせる事で示す、市川脚本らしい残酷さ。豹変する吉行さんの表情がまた圧巻です。
さんざん翻弄され、殺されそうになっても、最後まで澄江に対する思いやりを貫く殿下こそ、真に男らしい男と言えるかも知れません。市川森一さんが描く殿下は実に魅力的です。
吉行和子さんは後に第144話『タレ込み屋』にもゲストで登場されます。また今回は殿下の妹=島 京子も初登場しますが、演じた三谷文乃さんは1回限りの出演で、後に中田喜子さんが京子役を引き継ぐ事になります。
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