ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』とMGCパイソン

2018-11-25 11:25:30 | 刑事ドラマ HISTORY









 
コルト・パイソン357マグナムのプラスチック・モデルガンがMGC社から発売されたのは、1978年頃だったかと思います。

武骨なデザインでとても格好良く、実銃の世界でも特に有名なリボルバーですから、日本の刑事ドラマでも引っ張りだこになるかと思いきや、実際に広く使われたのはローマン&トルーパー(コルトMkーIIIシリーズ)の方でした。

実際にMGCのパイソンをいじった事がおありの方なら、その理由はよくご存知かと思います。要するに、故障し易いんですよね。私が初めて手にしたMGCパイソンも、買ったその日に動かなくなっちゃいましたw

とにかく複雑怪奇なメカニズムで、修理しようと思って分解したら最後、よっぽど手慣れた人でなければ容易には元に戻せません。壊れ易くて直しにくい、オマケに作動も発火も不確実というw、実に扱いづらいモデルガンだったワケです。

そんなパイソンを日本のメディアで初めて見たのは、私の場合『熱中時代/刑事編』サントラ盤レコードのジャケット写真でした。水谷豊さんが6インチのパイソンを構えておられました。(実際のドラマでは旧ローマン2インチを使用)

ドラマの刑事さんがパイソンを愛用したのは、たぶん『大追跡』の沖雅也さん(6インチ)が最初だろうと思います。あと『大捜査線』で杉良太郎さんが6インチ、『走れ!熱血刑事』で松平健さんが4インチを使っておられました。

最も印象深いパイソンは『噂の刑事トミーとマツ』で松崎しげるさんが愛用された4インチかも知れません。劇中で使う機会は少なかったけど、何しろ視聴者が毎週眼にするOPタイトルが、いきなりパイソンと旧ローマン(国広富之さんが使用)のクローズアップから始まりますから。

後は『西部警察PART II』で三浦友和さんが後期に4インチを、舘ひろしさんがPPCカスタム仕様の4インチを使われてた位でしょうか?

あ、それと『もっとあぶない刑事』における柴田恭兵さんの愛用拳銃が、パイソンの2.5インチでした。(発砲シーンにはトルーパーのフレームにパイソンの銃身を取り付けたプロップガンが使われたそうです)

こうして列挙してみると、あんなに扱いにくいパイソンなのに、けっこう色んな番組で使われてた事に驚きます。格好良さじゃピカイチのリボルバーですから、リスクがあっても使いたくなるんでしょうね。

『太陽にほえろ!』ではドック(神田正輝)登場後に、スニーカー(山下真司)がパイソン4インチを初使用しました。

だけどスニーカーは「走って跳んで」が基本の熱血キャラですから、拳銃はあまり使わないんですよね。トルーパーからパイソンに持ち替えて以降、ガンアクションが描かれたのは第430話『東京大追跡』と、前回レビューした第442話『引金に指はかけない』位しか無かったように思います。

スニーカーの後任刑事=ラガー(渡辺 徹)は当初、日本警察の制式拳銃であるニューナンブM60の3インチを使ってました。と言っても、ローマンのフレームにニューナンブっぽい銃身を取り付けた珍品カスタムで、あまり目立った活躍は無かったですね。

その後ラガーは、登場編でスニーカー先輩から新品のスニーカーを譲り受けたのと同じ様に、パイソン4インチも引き継いで愛用する事になります。

ラガーもこれまた熱血キャラですから、ガンアクションと呼べるエピソードはほとんど無くて、殉職直前の主演作『左ききのラガー』が唯一だったように思います。でも、その時は既にラガーの拳銃はパイソンからS&W・M586(4インチ)に代わってました。


パイソン時代のラガーで拳銃にまつわるエピソードと言えば、思いつくのは第534話『俺の拳銃が無い!』ぐらいでしょうか。

守(水上功治)という少年院上がりの青年が、バイト先のガソリンスタンドで売上金ネコババの疑いをかけられ、逆上して暴れた弾みで店長を死なせてしまう。

そのまま守は逃走しちゃったもんだから、大方ネコババも彼の仕業だろうと見られる中で、ラガーだけは「濡れ衣だったからこそ逆上したのでは?」と考えます。ラガーにも、少年時代に給食費ネコババの疑いをかけられた苦い経験があるんですね。

「無実なのに疑われる。それがどんなにツラいか… どんなに悔しいか… 疑われた人間にしか解りません」

私もかつて、とあるサイトの掲示板で「荒らし」の濡れ衣を(何の根拠も証拠も無く)着せられ、死にたくなるほどツラくて悔しい思いをした事があります。こんなに「書くこと」が大好きな私が、それ以来いっさい掲示板の類には書き込みしなくなりましたからね。とても恐ろしくて書けないワケです。

疑いをかける側は面白半分でも、疑われた側は一生消えない心の傷を負うんだって事を、私もその時、身をもって知りました。

だけど、ラガーは刑事です。人を疑うのが仕事なんです。守のネコババ疑惑はやはり濡れ衣だった事が証明されたものの、店長を死なせてしまった罪は償わせなくちゃいけない。どんな手を使ってでも……

守の不良仲間だったサブ(長谷川 諭)をマークするラガーは、根は優しいサブとやがて意気投合します。サブは、守が隠れてそうな場所に行って自首するよう説得するから、信じて待っていて欲しいとラガーに懇願します。

ラガーは迷いながらも、信じて待つ事をサブに約束します。約束するんだけど、刑事としてはサブが守を逃がしちゃう可能性も疑わなくちゃならない。あるいは、サブが守に殺される危険性だってある。

隠れ家で再会した守とサブの前に、ラガーが現れます。

「テメエ、尾行してやがったのか!? 最初から騙すつもりだったんだな!?」

逆上したサブはラガーに襲いかかり、守と2人でボコボコにリンチした挙げ句、ラガーのパイソンを奪い去って行くのでした。

「俺が……俺が馬鹿だったんです! 人に疑われるのがどんなにツラいか、一番よく知ってたのに、サブを疑ってしまいました……」

結果的に守とサブを、より重い犯罪へと導いてしまった事で、ラガーは自分の取った行動を激しく後悔します。

だけど、約束通りにサブを信じて待ったとして、本当に守は自首しただろうか? 刑事として正しい判断をした筈なのに後悔してるのは、サブに好かれたいっていう気持ちがあるからじゃないのか? 兄貴分のドックが、ラガーを諭します。

「刑事っていうのはな、嫌われ者なんだ。そうでなきゃいけないんだ」

刑事が拳銃を奪われちゃう話ってのは定番中の定番で、他の番組じゃ大抵「自分の銃が新たな犯罪(最悪は殺人)を生む」事への恐怖と焦りがメインに描かれるもんだけど、『太陽にほえろ!』は違いますよねw

それよりも、刑事としての在り方、人間としての在り方について悩み、乗り越え成長していく若者の姿こそを描く『太陽』は、やっぱ青春ドラマなんです。

ラガーも着任してから2年目に入り、ひと皮剥けて大きく成長しようとする時期でした。既に身体の方は立派に大きくなってましたけどw

で、ヤケになった守とサブは強盗を企てるも失敗し、人質を取って商店に立てこもります。ラガーは自分が身代わりになるから人質を解放するように交渉し、丸腰で店に入る。そして2人が油断したスキを突いて、足首に隠したコルト・ローマン旧2インチを抜いて、サブが持つパイソンを撃ち飛ばすのでした。

「汚ねえぞ、また騙したな!? いつかぶっ殺してやる! 一生忘れねえぞテメエーっ!!」

サブが浴びせる罵詈雑言に、じっと耐えるラガー。刑事っていうのは、嫌われ者なんだ。そうでなきゃいけないんだ…… そんなラガーの肩を、いぶし銀の山さん(露口 茂)がポンと叩きます。

「いつか解るさ、あの連中にも。騙されて、助かったんだって事をな」

山さんが言うと説得力があります。超シビアな展開の中で、救いになる、ホント素晴らしい台詞でした。

ただ、このエピソードで残念だったのは、その直後の取り調べシーンで、サブが早速ラガーに理解を示しちゃったこと。笑顔で「ホントは、捕まってホッとしたんだ」って、感謝までしちゃってるw

「いつか解るさ」で終わる方が絶対良かったですよね。ここで甘さが出ちゃったら、それまでのシビアな描写が台無しやんって、私は思いました。無理やりハッピーエンドにしなくて良かったのに!

それともう1つ、細かい事だけど、足首に隠し持つ銃としては(いくらラガーは縦にも横にもデカいとは言えw)ローマンはデカ過ぎます。『フレンチコネクション』のポパイ刑事(ジーン・ハックマン)に習って、そこはチーフスペシャルにして欲しかった!

それはともかく、七曲署でパイソン4インチを使ったのはスニーカーとラガーだけで、2人とも熱血キャラだから、パイソン自体の印象は薄かったと言わざるを得ません。

その点、短銃身のパイソン2.5インチは、ジプシー(三田村邦彦)→デューク(金田賢一)→喜多さん(寺尾 聰)と、発砲頻度の高いクール系の刑事達が使ってたんで、4インチよりも印象深いですね。


第494話『ジプシー刑事登場!』では、そのパイソンにまつわる珍場面が見られました。七曲署に初出勤したジプシーは、着任の挨拶もせず地下射撃場に直行、新しい拳銃を試し撃ちします。その時、彼の手に握られてたのは、お馴染みのローマン旧2インチでした。

ところが次の場面。車ごと喫茶店に突っ込んだジプシーが籠城犯を仕留めるんだけど、その時に持ってた銃はパイソンなんですよねw

射撃場で試射した時は的を外してたんで、ローマンを却下して代わりにパイソンを調達したのかも知れないけど、そんな時間の余裕があったようには見えません。このローマン→パイソンの早変わりには、3通りの理由が考えられます。

☆その1=単純に小道具さんの調達ミス。

☆その2=射撃場のシーンでは何発も撃たないといけないから、その時だけ(作動と発火が確実な)ローマンを使った。(銃の種類が違う事には、余程のマニアでなきゃ気づかないだろうという判断)

☆その3=銃を持ち替えるシーンが本来あったんだけど、カットされた。

2つ目が一番「ありそう」だと私は思うんだけど、願望としては3つ目であって欲しい。なので、射撃場のシーンでジプシーは、実は最初からパイソンとローマンの2種類を用意してたんだとw、勝手に脳内補完する事にしました。

つまり、先にパイソンを試射する場面があるんだけど、尺の都合でカットされたワケです。それなら時間を置かずに銃を持ち替える事が出来るんで、辻褄はバッチリ合います。……でもまぁ、やっぱ2つ目の理由なんでしょうねw


第515話『生いたち』は、とにかくジプシーがとことんカッコ良く、逆に犯人(剛たつひと)がとことんカッコ悪く描かれたエピソードですw

深夜、帰宅時に通りかかったスーパーの異変に気づいたジプシーは、強盗3人組を発見。取り逃がしたものの犯行は未然に防ぎます。

犯人の1人である内村(剛さん)は、ジプシーの姿を見て愕然とします。実はこの内村、ジプシーとは小学校から高校まで同じ学校だった同級生で、ずっと彼をライバル視して来た男なんです。

と言っても、ジプシーにはそんな記憶がまったく無くて、内村が勝手にコンプレックスを抱いてただけ、というカッコ悪さw

勉強は頑張ってトップクラスの成績を得たものの、身体を張ってクラスメートをいじめっ子たちから守ったりするジプシー少年の、持って生まれた勇気や正義感だけは真似しようが無い。

その後もエリートコースを歩んで来たものの、事業の失敗で地位を失った内村はヤケッパチ状態。そんな時にジプシーが現れた事で、彼は憎しみの矛先をジプシーに向ける事で現実逃避します。

まず幼児を誘拐し、身代金の運搬にジプシーを指名。その現場に向かう前にジプシーは、なぜかパイソンの弾倉をいったん空にしてから、まるでゴリさん(竜 雷太)みたいに1発だけ弾丸を込めて出発するんですよね。その時点では意図不明なんだけど……

内村は金の運搬先とタイムリミットの指示を次々に変え、ジプシーをいたぶるようにしてアチコチ走らせます。そんな事で嬉しそうに勝ち誇ってる姿がもう、最高にカッコ悪いですw

で、人質と身代金を交換する段になって、内村はジプシーに「拳銃をよこせ」と命令します。「おっと、その前に1発撃って見せろ。空の拳銃を渡されたんじゃかなわねぇ」

なるほど、ジプシーはそこまで先を読んでたワケですね。カッコ良すぎです。そして、1発だけ撃ってからパイソンを渡すジプシーを見て、完全に勝ち誇りながら人質を手放しちゃう内村は、カッコ悪すぎですw

ジプシーが人質の安全を確保した時点で、形勢はあっさりと逆転します。ビルの屋上まで追い詰められた内村は「来たら飛び降りるぞ!」というw、最高にカッコ悪い脅し文句で悪あがきします。

そのあまりにカッコ悪い姿を見て、心底情けなくなったジプシーは、取り戻した愛銃パイソンの弾倉を開き、黙って1発、また1発と弾丸を込めて行きます。

「な、何やってんだテメエ?」

「本当に死にたいんだな、内村」

そう言うとジプシーは、内村に向けて黙々とパイソンを撃ち始めます。頬、肩、脚と、百発百中の腕前で、内村の身体に軽傷を負わせて行く非情なジプシー。

「どうした、死んでも良かったんじゃないのか? 望み通りにしてやる。騒ぐな」

ジプシーは更に弾丸を詰め替え、内村を撃ち続けます。「クールファイター」の呼び名に相応しい非情さとハードさ。私は、こんなジプシーがもっと見たかった!

「わ、分かった! 分かったよ! もう勘弁してくれ! やめでぇーっ! 許してぇーっ!!」

刑事ドラマ史上、これほど徹底してカッコ悪い犯人が存在したでしょうか?w 少年時代も今も、ジプシーを勝手にライバル視しながら、全く相手にされてない。あまりに一方的なジプシーの圧勝で、演じる剛さんは100%、三田村さんの引き立て役でしたw

このエピソードではジプシーが「片肺」っていう初期設定が無かった事にされてるんだけど、逆にそれを生かして、ジプシーのピンチも描いた方が良かったように私は思います。

内村は、ジプシーが片肺である事を知った上で、わざと走らせる。ジプシーは汗びっしょりで顔面蒼白、限界ギリギリまで走らされ、あわや死にそうになっちゃう。

そんな描写があれば、最後の逆転劇がもっと痛快になったんじゃないでしょうか? あれじゃ内村がちょっと可哀想ですw

とは言え、ジプシーが登場編を凌駕するほどの非情さ&銃さばきを見せてくれた点で、私はこのエピソードを(個人的に)ジプシー編のBESTに挙げたいと思います。


ジプシーの次にパイソン2.5インチを愛用したのは、金田賢一さん扮するデュークです。第660話『デューク刑事登場!』では、いきなり犯人に3発も撃ち込んで射殺しちゃうハードさを見せてくれました。

だけど以前にも書いた通り、金田さんの演じるアクションは、マイコン(石原良純)よりちょっとだけマシ、というレベルだったのですw つまり、殺陣も銃さばきも格好良く決まらない。

そのせいか、第667話『デュークという名の刑事』で銃撃戦(マイコンとコンビでw)を見せたのを最後に、パイソンを使う機会はほとんど無くなっちゃいました。

その点『太陽にほえろ!PART2』に登場する喜多刑事を演じたのは、何たって『大都会PART III』と『西部警察』で誰よりも格好良い銃さばきを見せてた寺尾聰さんですから、パイソンを構える姿もバッチリ決まってました。

『西部』ファンの友人は「44マグナムを使わない寺尾聰なんて寺尾聰じゃない!」みたいなこと言ってたけど、そんなワケがありませんw 決まる人は、何を使おうが決まるんです。

僅か1クール(3ヶ月)の出番ゆえ、銃撃戦が描かれたのは第2話『探偵物語』と第8話『ビッグ・ショット』の2本のみだったけど、それでもパイソンを構える寺尾さんの超クールなお姿は、今も私の脳裏に焼き付いてます。
 

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1 コメント

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Unknown (適当谷損気)
2020-07-12 11:04:31
20世紀刑事ドラマの警察拳銃といえばハイパト、ローマン、パイソン…本職の人からしたら「そんな高級な銃持てるかよ」だったでしょうね…。
ちなみに現代の韓国では、映画やドラマに登場する警察拳銃で日本製エアガンやガスガンのパイソンやM586シリーズが多用されています。
ただ、日本と違うのは、玩具に見えないようにする加工が省かれている、発砲無しの場合が多く、あっても似ても似つかない空砲専用銃(チーフススペシャルを不格好にしたような小型リボルバー)が使われるか、CG処理+役者の演技でそれっぽく見せてる、ということですかね。
乱文失礼いたしました。
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