1988年から2005年まで(年1回のスペシャル版を含めると2009年まで)、別のシリーズと半年(末期は3ヶ月)交代で放映された長寿番組です。全18シリーズ(第8シリーズまではフィルム撮影)、スペシャル版含めて全444話に劇場版が1本。
テレビ朝日&東映の制作で、水曜夜9時枠の放映。つまり『特捜最前線』から後の『相棒』へと繋がる伝統の刑事ドラマ枠です。このシリーズの合間に宇津井 健『さすらい刑事旅情編』や柴田恭兵『はみだし刑事情熱系』等が放映されてました。
東京・山手中央署刑事課の名物刑事「やっさん」こと安浦吉之介(藤田まこと)の人間味あふれる捜査を描いた、人情系の刑事ドラマです。
藤田さんの他、梅宮辰夫(署長)、岡本 麗、ぼんちおさむ、島田順司(課長)らがレギュラー刑事を務め、若手刑事枠を木村一八、吉田栄作、西島秀俊、城島 茂、七瀬なつみ、ケイン・コスギ、賀集利樹、村上信五、植草克秀らが代々務めておられます。
私は知らなかったのですが、末期には加藤 茶、国広富之といった人らも刑事を演じられてたみたいです。あと、安浦が通い詰める高級バー「さくら」のママさんに眞野あずさ、安浦の娘に小川範子、松岡由美。
「刑事にも人情がある。犯人にも事情がある」
↑ っていうのが本作のキャッチコピーなんだけど、私としては「んなこたぁ分かっとるわい」ってなもんでw、当時はほとんど相手にしてませんでした。
人情系の刑事ドラマって、如何にも「正論」を「説教」されてる気になっちゃうんで、私は今でも好きにはなれません。勿論アクション系の番組にもそういう要素はあるんだけど、それがメインになっちゃうと敬遠したくなります。
だって、人情やモラルを説くだけなら、別に刑事じゃなくたって出来るワケです。同じ説教されるなら、学校の先生とか爺ちゃん婆ちゃんとか、国家権力など持たない身近な人にされる方が、素直に聞けるんじゃないでしょうか?
それより、正義の名の下で堂々とヤクザをぶん殴ったり、拳銃をぶっ放したり出来るのは、日本だとドラマの中の刑事さんか、後は特撮ヒーローぐらいしかいないワケです。
謎解きなら家政婦やタクシードライバー、三毛猫にだって出来ちゃうんだし、刑事物でしか出来ない事って言えば、やっぱりアクティブな描写、ドンパチやカークラッシュに尽きるワケです。それをやらずして何の為の刑事ドラマなの?って、私は言いたいです。
だから、アクションで売ってた舘ひろしさんが人情系の刑事ドラマをやったり等、全くナンセンスだと思います。どうしても人情系で行かなきゃ仕方ないのなら、それを演じきれる俳優さんに任せるべきです。
この『はぐれ刑事純情派』が成功した理由って、主役に藤田まことさんをキャスティングした事に尽きるんじゃないでしょうか? 職業が刑事であろうが何であろうが関係なく、藤田さんの人情ドラマに多くの視聴者が共感した。
それと、ターゲットを思いきって年輩層に絞った戦略ですよね。テレビがもはや、家族揃って観るメディアじゃなくなった時代に、見事それがハマったんだろうと思います。
藤田さんはテレビというメディアの幼少期に『てなもんや三度笠』を、青春期に『必殺仕事人』シリーズを大ヒット&長寿番組化させ、中年期から老年期にこの『はぐれ刑事純情派』をモノにされた。まさにテレビメディアの成長と共に人生を歩んだ俳優さんで、年輩視聴者にとっては「テレビの顔」だったんでしょう。
脇を固める俳優さん達にしても、旬の人気者より実力重視のキャスティングが、年輩層に好まれたんだろうと思います。若手刑事枠にしても、東山くんじゃなくて植草くん、長瀬くんじゃなくて城島くん、ですからねw ルックスじゃない、他の何かを見て選んでるとしか思えませんw
私自身は上記の理由でほとんど観てなかったけど、たまに観れば確実に楽しめる番組でした。脚本のクオリティーが高いし、芝居がちゃんと出来る人、味のある人が演じるドラマはやっぱり面白い。
でも、この番組がヒットしたからって、刑事ドラマが一斉に人情路線に走ったのは間違いでした。別に世の中が人情刑事を求めてたワケじゃなくて、たまたま面白い番組が順当にヒットしただけの話なんだから。
バブル崩壊でテレビ番組の製作費が急落した事や、撮影に対する法規制がどんどん厳しくなってアクション物が創りにくくなった事など、刑事ドラマが人情路線に走る理由は他にも色々ありました。そんな時に『はぐれ刑事純情派』が絶妙なタイミングで現れ、ヒットしちゃったのは、アクション系の刑事ドラマにとってトドメの一撃でした。
だから私にとっては恨めしい番組なんだけど、質の高さは認めざるを得ないし、刑事ドラマというジャンルが生き残る道を開拓した功績には、素直に敬意を表したいと思います。
ゲストキャラは感情移入できないし話も「なんでそうなるんだ?」で。