先週『帰ってきた あぶない刑事』を観に行ったショッピングモールの本屋さんで「月刊 映画秘宝」の最新号をパラパラと立ち読みしてたら、今年4月に発売されたばかりの新書『刑事ドラマ名作講義』(星海社 刊/太田省一 著) を紹介した小さな記事が眼に飛び込んで来ました。その本屋さんで探したけど見つからず、即インターネットでポチッ。
映画を観に行かなければ知らずに終わったやも知れず、なんだか運命に導かれたような気がしつつ、持ち前のアンテナが働いて見事キャッチしたような気もしたり。
いずれにせよ、何かを「とても好き」であり続けると、こういうことも起きるんですよね。
『七人の刑事』『太陽にほえろ!』から、『古畑任三郎』『踊る大捜査線』『相棒』『MIU404』まで。テレビの歴史に燦然と輝く、名作「刑事ドラマ」19選を徹底解説!
テレビの黎明期以来、「刑事ドラマ」はつねにテレビドラマの中心にあり続けてきた。『七人の刑事』など、いまの刑事ドラマの原点となった作品が登場する1960年代から、『太陽にほえろ!』を筆頭に多彩なタイプが生まれた1970年代、『あぶない刑事』のようにコミカルな要素がヒット作の条件となった1980年代、警察組織をリアルに描いた『踊る大捜査線』など重要な変革が生まれた1990年代、そして刑事ドラマの歴史を総合するような『相棒』が始まった2000年以降まで。
日本の刑事ドラマ繁栄の理由を、歴史と作品の両面から深掘りする堂々の432ページ! (以上、ショッピングサイトに掲載された紹介文より)
で、『ダイヤル110番』(’57) を起点とする刑事ドラマ約70年のヒストリーを俯瞰しつつ、著者が深堀りする対象に選んだ作品が、以下の19本。
1 /七人の刑事
2 /特別機動捜査隊
3 /太陽にほえろ!
4 /非情のライセンス
5 /俺たちの勲章
6 /Gメン’75
7 /特捜最前線
8 /西部警察
9 /噂の刑事トミーとマツ
10 /あぶない刑事
11 /はぐれ刑事純情派
12 /古畑任三郎
13 /沙粧妙子―最後の事件―
14 /踊る大捜査線
15 /ケイゾク
16 /相棒
17 /警視庁・捜査一課長
18 /BORDER
19 /MIU404
異議なし!のラインナップではあるけど、ちょっと驚いたのが17番目の作品。これを特別視してるのは私だけだろうと思ってた、あの『警視庁・捜査一課長』が入ってる!
対象を連ドラのみに絞り、主人公が警察組織に属さない『ザ・ガードマン』や『キイハンター』等は除いても何百作とあるであろう刑事ドラマの、言わば頂点として選ばれた19本に、あのマニアックな番組が!w
その時点でもう、著者=太田省一さんはホンモノだ!と確信しました。いつぞや爆笑問題さんのラジオ番組にゲスト出演してた自称「刑事ドラマ研究家」さんとは全然レベルが違う!
実際、さわりだけ読んでも取材量と考察力がハンパじゃない。本のタイトルだけ見たときは「講義って、なんか上から目線やな」「わしに勝てるんか?」なんて思ったりしたけど、失礼致しました。
私がこのブログに“レビュー”と称して書いてるのは単なる感想文で、必要最小限の情報は調べて載せるけど、基本的には「好きか嫌いか」「おっぱいが出るか出ないか」で評価を下す、ただの独り言。
“講義”に必要なのは圧倒的な情報量と的確な分析力、そして個人的な好みを排した客観的な目線と、理路整然とした言語(文章)力。全てにおいて私は足元にも及びません!
ただ、刑事ドラマのことをもっと詳しく知りたい!と思ってる人にはバイブルになり得るけど、それ以外の人にはもしかすると、偏愛に満ちた私のブログの方が面白いかも知れない。いっさい無許可で載せてる画像も満載だし!(名作講義は残念ながら写真が一点も使われてません)
このブログを「おっぱい」目当てで訪問してるに違いない皆さんにとっては、ほぼ価値のない本と言えましょう。ほんとド変態の巣窟ですね!
それはさておき、まだ『あぶない刑事インタビューズ』が三分の一ぐらいしか読めてないもんで、本格的な受講は後日となります。せめて、著者による各作品のキャッチフレーズをここに抜粋することで、その視点の客観性や考察の的確さが伝われば幸いです。
☆テレビの社会的使命を担った刑事ドラマの理想形『太陽にほえろ!』。
☆青春ドラマの時代に生まれたバディもの刑事ドラマの原点『俺たちの勲章』。
☆無国籍な空間で繰り広げられる個性派たちのハードボイルド群像劇『Gメン‘75』。
☆時代に左右されない面白さ。脚本の力で魅せる刑事ドラマ『特捜最前線』。
☆まるで西部劇のような銃撃戦! 映画のスケールを目指した娯楽大作『西部警察』。
☆いまでもバディものを代表する名作。トレンディドラマ的「軽さ」の凄み『あぶない刑事』。
☆人情派刑事と事情を抱える犯人。変わらない庶民の哀歓に共感する『はぐれ刑事純情派』。
☆警察という組織の細部にこだわり、刑事ドラマの文法を書き換えた『踊る大捜査線』。
☆「変人刑事」ゆえに真相にたどり着く、杉下右京が決して失わなかった青臭さ『相棒』。
☆刑事ドラマの花形部署が舞台。2時間ドラマの世界観がルーツ『警視庁・捜査一課長』。
☆女性スタッフたちが手掛けたバディものの成熟したかたち『MIU404』。
……参りました。ウチはやっぱり「おっぱい」で勝負するしかありません。もっと真面目に刑事ドラマを語って欲しいとおっしゃる方は、この本がありますから迷わず私の飛行機から飛び降りて下さい。
☆☆☆☆☆☆☆
ところでこの機会に、我が家にある“刑事ドラマ研究本”のコレクションをざっと紹介させて頂きます。
↑
映画『さらば あぶない刑事』公開に合わせて2016年に発行された、洋泉社MOOK(映画秘宝EX)『にっぽんの刑事スーパーファイル』。
『刑事ドラマ名作講義』に比べると“広く浅く”な内容だけど、そのぶん読み易いし、関係者インタビューやスチール写真も掲載された充実の内容で、入門書としては最適かも知れません。
『大都会』シリーズや『大追跡』、『大激闘/マッドポリス’80』『警視ーK』など“日テレ火曜21時枠のアクションドラマ”にけっこう頁を割いてるところが如何にも「映画秘宝」らしい!
↑
同じ枠で放映された『探偵物語』や『プロハンター』も含む一連の作品を深掘りした2015年発行の『NTV火曜9時/アクションドラマの世界』は、山本俊輔&佐藤洋笑の共著による約500ページの単行本。
↑
日テレ火曜21時枠ドラマの中でも『大追跡』のみにスポットを当てた、かわだ わか編·著によるワイズ出版の単行本『沖雅也と“大追跡”』は、『太陽にほえろ!』や『俺たちは天使だ!』など他の出演作も通して“沖雅也”という稀代のアクションスターを語り尽くす究極のファンブック。2008年に発行されました。
↑
日テレの公式本や岡田晋吉プロデューサーの著書(回顧録)はたくさん出てるのに、客観的な視点による研究本が(同人誌は別として)意外と見当たらないのが『太陽にほえろ!』。
唯一、それに近い内容と言えなくもないのが、1993年に発行されたスターツ出版の単行本『毎週金曜夜8時 君は太陽にほえろ!を見たか? 〜熱き刑事達、今ここに甦る〜』。
生粋のマニアから見れば“広くて浅い“ファンブックって感じだけど、岡田プロデューサーの著書すらマカロニやジーパンの話題に偏りがちな中、ちゃんと全メンバーに光を当てた構成に私は感動しました。
特に、出演者インタビューに選ばれたのがボン=宮内淳さんとドック=神田正輝さんっていうセンスが素晴らしすぎる!(ありがちなゴリさんや殿下、ロッキーあたりは真面目すぎて面白くない。←私感です)
↑
2008年と’09年に発行された、洋崎文移 編·著による『“七人の刑事”と幻の刑事ドラマ』と『“特別機動捜査隊”/物語の検証』は、研究本というよりは資料本。特にドラマ本編がほとんど現存しない『七人の刑事』の資料収集に人生を懸けたような、著者の執念には圧倒されます。
↑
2003年から’09年まで全8刊が発行された辰巳出版のムック『刑事(でか)マガジン』の記念すべき創刊号。巻頭特集は結果的に痛すぎる記憶となった復活版『西部警察』。
前回の記事に書いた通り東映の息がかかったムックゆえ、当時まだ現役だった『はぐれ刑事純情派』やスタートして間もない『相棒』、そして過去作も『Gメン’75』を中心に東映系の作品が特集されがちだけど、初期は東宝の『太陽にほえろ!』や大映の『噂の刑事トミーとマツ』等へのリスペクトもちゃんと感じられました。
後期は『相棒』シリーズの提灯持ちに成り下がった印象だけど、刑事ドラマのみに特化した数少ない本ですから感謝の気持ちしかありません。
↑
刑事物に限らずだけど、毎回1つの番組を大々的にフィーチャーする隔月刊『テレビジョンドラマ』は‘80年代に生まれた雑誌で、まだ読者が文通コーナーで(サークルの会員募集やビデオテープの取引目的で)個人情報を堂々と晒してました。
公式本が発売されてない『ジャングル』や『ゴリラ/警視庁捜査第8班』『刑事貴族』等の特集号はとても貴重かと思います。
↑
1985年(昭和61年!)1月号=太陽にほえろ!特集第1弾では“本編フィルムのコマ焼き”という、当時としては画期的な試みが敢行されてます。巻末に「大好きな番組だからこれまでに無い特集を組みたかった」とのコメントが記されており、編集部の熱い心意気とTVドラマ愛が伝わって来ます。
この雑誌が廃刊されて以降、やがてテレビ雑誌の表紙はどれもこれも横並びでジャニーズタレント一色になっちゃいました。心意気はあっても圧力に屈するしかない、コンプライアンス時代の到来です。
↑
ミリオン出版が『太陽にほえろ!』生誕40周年のタイミングで刊行したコンビニ本『男泣き!刑事ドラマ天国』。
『刑事ドラマ名作講義』がNHKのドキュメンタリー番組だとすれば、こちらは民放のバラエティー番組みたいにラフな感じ。マニア以外の人でも楽しめる点において、今回紹介した中で一番オススメしやすい本かも?
特筆すべきは『デカワンコ』&『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』という“超”のつく異色作が、歴史的名作群と肩を並べて紹介されてること。2012年当時(旧ブログ)にも書いたけど、編集部に多部未華子さんのファンがおられるに違いありませんw
↑
そしてトリは再び洋泉社「映画秘宝」、その第4弾ムックとして1996年に発行された『男泣きTVランド』。
刑事ドラマというジャンルの縛りは無いけど、我々世代を夢中にさせた’70年代“テレビ映画”への愛を同世代のライター陣が各々(悪口も含めて)思い入れタップリに綴ってます。
表紙が松田優作さん、裏表紙が萩原健一さんである事からも分かるように、おのずと刑事物や探偵物が中心になるワケです。
「暴力・犯罪・差別・友情・挫折・反体制……あの頃、ブラウン管は男たちの血と汗と涙で濡れていた!」
……とのキャッチフレーズに、時代の変化に抗おうともがくライター陣の心情が滲み出てます。『刑事ドラマ名作講義』とはまったく対照的に、私感と曖昧な記憶だけで書いてる感じ(たとえば好き嫌いとか、おっぱいが出る出ないへのこだわりとか)が私のブログに大変よく似てますw
原点はここにあるんですよね。だからトリに持ってきました。
件のカルトクイズは私も一部しか答えられません。全問すんなり正解しちゃうツワモノも、きっとおられるんでしょうね。