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2010年の暮れ、某通販サイトからメールが届きました。当時、私は『太陽にほえろ!』関連の商品が出たらメールで知らせてもらうアラートを設定してたんですね。
そのメールで紹介されてたのは『デカワンコ』というタイトルの、どうやらテレビ番組のサントラCDらしいんだけど、それがなぜアラートに引っ掛かったのかワケが分かりません。
で、曲目を見てみたら「太陽にほえろ!メインテーマ'97リミックス駄馬篇」とか書いてある。にわかには意味が解りませんでしたw
やがて、テレビ雑誌に'11年1月スタートの新番組が紹介されるようになり、そこで私は『デカワンコ』というのがコミック原作による刑事ドラマであること、それも主人公がロリータファッションの女刑事というチョー変化球な内容であること、そして朝ドラ女優の多部未華子さんが主演であることを初めて知ったのでした。
なるほど、そういう番組ならば過去のヒット作のテーマ曲をパロディで使うことは有り得る、と納得はしたものの、同時に「それ、絶対スベるやろ」とw そんなイロモノ番組で『太陽にほえろ!』の名を汚してくれるなよと、ネガティブな感情を抱いたのも事実でした。
かくして、全く期待せず、ボロカスにけなしてストレス発散する為に観た『デカワンコ』の第1話。それがまさか、2000年代になって初めて私が「どハマり」する刑事ドラマになろうとは、そして生まれて初めて特定の女優さんの虜になってしまうとは、もちろん夢にも思ってませんでした。
☆File. 1『ライバルは警察犬』
(2011.1.15.OA/脚本=伴一彦/演出=中島悟)
ファーストショットは、ビルの谷間から見える夕陽。この構図は『太陽にほえろ!』のオープニングとソックリですw つまり、このドラマが『太陽』にオマージュを捧げてる事と、ファーストシーンの時間設定が夕刻である事を示す、ダブルミーニングのショットです。
ところが、このエピソードを二度三度と観返してる内に、もしかするとあの夕陽には、もう1つの意味が込められてるんじゃないか?ってことに気づくんですよね。それを意識した上でこのファーストショットを観ると、ちょっと熱いものがこみ上げて来るかも知れません。
その夕陽に込められた3つ目の意味とはいったい何ぞや? それは後々のシーンで判る仕掛けになってますw
場面変わって、ロリータファッション専門の(?)アクセサリーショップ。可愛い手が可愛いアクセサリーを選んで、可愛いケータイの……ではなく、拳銃のストラップに取り付けますw
フリフリのスカートをめくり、太もものホルスターに銃を納める、ロリータファッションの可憐な少女……ではなく、もういいオトナの花森一子(多部未華子)。
黒い手袋をはめ、キリッとした顔を作る一子ですが、大真面目にヒーローごっこしてる小学生にしか見えませんw その感じこそが演出の狙いであり、多部未華子さんは的確にそれを表現してるワケですね。
そして一子は、先輩の「キリ」こと桐島刑事(手越祐也)と合流します。ファッションをコーディネートしてる間、先輩を店の表で待たせてたんでしょうか?w 一子は、そういう事をシレッとやっちゃう人なんですよね。悪気があるのか無いのかは、未だ謎ですw
「おい、お前ヘラヘラやってんじゃねえぞ」
「だって、楽しいんだもん」
キリはなかなか刑事らしく鋭い眼つきですから、機嫌が悪いとけっこう怖そうに見えるんだけど、一子はこれっぽっちも物怖じしてませんw
新米の一子より1年先輩で、やっと後輩が出来ると思ったら、入って来たのはフリフリスカートの女の子。キリが終始イライラしてるのも無理ありません。
ちなみにキリのフルネームは桐島竜太。これも『太陽にほえろ!』(ゴリさん=竜雷太)へのオマージュでしょうか?
2人は「矢追町殺人事件」のw、容疑者を含むチャイニーズマフィアを逮捕すべくアジトへと向かいます。「矢追町」ってのは『太陽にほえろ!』でよく使われた架空の町名です。
「キリさん、パトランプ出します!」
一子が覆面パトカーの助手席から、箱乗り状態でパトランプを車の屋根に装着。と同時に「太陽にほえろ!メインテーマ’97リミックス土曜篇」がバックに流れます。
以前のレビューにも書いた通り、私が『デカワンコ』を観てみようと思ったのは『太陽にほえろ!』のテーマ曲が使われる事を事前に知ってたから。(正確には『太陽』の復活版である『七曲署捜査一係』のテーマを小西康陽さんがリミックスした曲です)
この辺りまでは前述の通り、ドラマの内容に対して私は懐疑的な想いを抱いてました。思いっきりイロモノ的な企画であり、創り手のセンスと主演女優の力量がよっぽど素晴らしくて、奇跡的な化学反応を起こさない限り……つまりは、かなりの確率で失敗するだろうと私は予測してました。この時はまだ、多部未華子という女優さんをよく知らなかったんですね。
この箱乗りシーンでだだっ広いオデコを丸出しにし、従来の清楚で知的なイメージからは想像もつかないヘン顔を披露してる多部ちゃんを見て、私は「ほら、やっぱ無理してんじゃないの?」って、この時点では思ってました。
敵のアジトは、港のコンテナ倉庫。既に日は暮れてます。
「コマさん! ガラさん! チャンコさん! ヤナさん! デューク!」
「いちいちうるせー!」
「はい」
到着した一子が、わざわざ先輩刑事たち全員のニックネームを口にして叱られる場面。この実にバカバカしいやり取りを見てw、ようやく私は「これ、面白いかも?」って思い始めました。
特に、叱られた時に一子が発する「はい」っていう空返事が、全く反省してない気持ちが的確に伝わって来てw、ホント絶妙なんですよね。たった2文字の台詞なのに!
「わたし、花森一子。警視庁の刑事です。刑事部捜査一課第八強行犯捜査殺人捜査第13係に所属して、約1ヶ月……」
「うるせーなお前は!」
自己紹介のナレーションかと思いきや、現場で一子が実際に喋ってたというw、このモンティパイソン的なギャグにしても、多部ちゃんの心ないリアクションがあればこそ笑えるんですよねw
多部未華子っていう女優さんのコメディセンスは、本当にタダモノじゃないと思います。しかも、ご本人は「人を笑わせようと思って演技した事は一度もない」みたいな事をおっしゃるw
つまり、多部ちゃんは全くウケを狙ってない。狙ってるのは脚本家や演出家であり、彼女はその注文を的確な演技力で具現化してるに過ぎないんです。
だけどそれは、その表現がなぜ人を笑わせる結果に繋がるかを、ご本人が感覚的に理解してる=卓越したコメディセンスがあればこそ。単純に演技力があるってだけじゃ不可能なんですよね。
多部ちゃん(の所属事務所)は『デカワンコ』以来、コメディエンヌ的な役柄を避けてるように見えますが、それは実に勿体無いことです。これだけのセンスを持った若手女優はそうそういないんだから、もっともっと生かして欲しいです。
それはともかく、この第1話は多部ちゃんのコメディ演技がフルスロットル状態で、周りの個性派俳優さん達は「受け」の芝居に徹底されてる感じです。
それが回を追う毎に、周りの人達がどんどんボケ始めて、多部ちゃんがむしろ「受け」に回って行くというw、逆転現象が起こって行くんですよね。
つまり、共演者たちがどんだけ前に出ても、主演女優が埋没しちゃう恐れが無い。それどころか、彼女がしっかり受け止め、上手に泳がせてくれるっていう安心感が、この初回で得られたからじゃないでしょうか?
後に『デカワンコ』と同じスタッフによって製作された『戦力外捜査官』の個性豊かなキャスト達が、なんだか主役の2人(武井咲&EXILEの誰か)に遠慮して控えめな芝居をされてた(ように見えた)のとは実に対照的です。
さて、異変に気づいたマフィア連中が刑事たちに襲いかかり、派手なアクションシーンが始まります。
昨今の刑事ドラマじゃほとんど見られなくなった、本格的な立ち回り。これも『デカワンコ』の大きな魅力です。謎解きや泣き落としなら探偵や家政婦にだって出来ちゃうワケで、刑事ドラマならではの醍醐味は華麗なるアクション描写に尽きるワケですよ!
ただし、肝心の一子はカッコつけてるだけで、ほとんど役に立ってませんw 主役の刑事がこれほど無能に描かれたドラマって、私が記憶する限り『噂の刑事トミーとマツ』ぐらいしかありませんw
けど、トミーに「オカマ呼ばわりされるとスーパーコップに変身する」特殊能力があったのと同じで、とんでもない能力が花森一子にも備わってることが、後々明かされて行きます。
アクションは更にエスカレートし、このドラマじゃ最初で最後の銃撃戦が展開されます。一子もしっかり2~3発撃ってて、現時点(2018年)においては多部ちゃん唯一の発砲シーンかと思われます。
ちなみに一子のリボルバー拳銃には、複数のストラップがぶら下がってるばかりか、シリンダー(弾倉)にはピーポくんのシールまで貼ってありますw これは、いざという時にシールが引っかかり、シリンダーが回転しない(つまり撃てない)かも知れない、とっても危険な行為ですw
「だって、可愛いじゃん。ホントはもっとデコりたかったんだけど……」
それ以上デコったら、拳銃がホントにただのアクセサリーになっちゃいますw 実際、後のエピソードではストラップがホルスターに引っかかって、肝心な時に拳銃が全然抜けないという大ピンチが描かれましたw
さて、ここで機動隊が到着し、突入していく様を13係のメンバー達が見学しますw そして「太陽にほえろ!メインテーマ’97リミックス駄馬篇」が流れ、一子の「ワン……ダフル!」の台詞を合図にOPタイトルへ。
ドラマは、まだ始まったばかりですw
(つづく)
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