ハリソン君の素晴らしいブログZ

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『大捜査線』#26

2018-11-16 12:00:03 | 刑事ドラマ'80年代









 
☆第26話『ああ沢木刑事! 青春の赤い墓標』

(1980.8.14.OA/脚本=田村多津夫/監督=高橋繁男)

『太陽にほえろ!』ではついに見られなかった、神田正輝さん=沢木刑事の殉職編です。

オンエアは'80年の8月14日。『太陽~』にドック刑事が登場したのは同年7月18日なので、神田さんは約1ヶ月間、2つの番組で刑事を演じた事になります。(たぶん撮影は掛け持ちではなく、それだけ『太陽~』のスケジュールがタイトだったって事でしょう)

暴力団の裏金に手をつけ、生命を狙われた若者カップルを救おうとして殺されちゃう設定は『太陽』のボギー(世良公則)殉職編に似てます。

父親が殉職刑事であるがゆえに刑事という職業を嫌う女性(吉村彩子)と、恋が芽生えた矢先に……っていう死亡フラグの立て方も、実に青春ドラマ的で『太陽』を彷彿させます。

されど、決戦の地に着いた途端ヤクザ軍団に取り囲まれ、すぐさま背後から1発、振り返ったらまた背後から1発撃たれて、あっという間に倒れちゃうあっけなさは『大捜査線』ならでは。

で、直後に駆けつけた加納主任(杉 良太郎)がコルトを撃ちまくり、例によって1人で敵を皆殺しw 今回はさすがに出番少なめで、神田さんに花を持たせてると思ったのに、そこだけは意地でも譲らないw

結局、神田さんの華麗な銃さばきは最後まで見られずじまいで、杉サマに「俺を見捨てるんだな」なんて嫌味を言われようが『太陽』に移籍して大正解でしたw

最後ぐらい沢木のガンアクションがあっても良かったろうにって思うけど、もし銃を持ったヤクザ数人に囲まれたら、そりゃあ1発も撃てないまま殺されちゃう方が現実的です。

で、加納主任が無我夢中でヤクザどもを片付けて、ふと振り向いたら驚いた! 沢木、死んでるじゃん!?って。

つまり、沢木が息絶える瞬間の描写もあえて省略されており、そこをしつこいほど見せちゃう『太陽』とは真逆のアプローチ。

リアルなのは圧倒的に『大捜査線』の方で、それだけに視聴者はトラウマを植え付けられたかも知れません。まして、今回が沢木の殉職編だと知らずに観た人は、かなりの衝撃を受けたんじゃないでしょうか?

沢木が好きだった女性が刑事部屋を訪れ、加納が自分の煙草を線香代わりに手渡す、切ないラストシーン。

「私……刑事って仕事、好きになれないけど、でも、理解出来るように努力するって、沢木さんに言いました……この人なら、理解出来るって思ったから」

父親が殉職したせいで刑事嫌いになった女性に、希望の光を与えた沢木もまた…… 彼女の言葉が、残された加納たち刑事の胸に突き刺さります。

そこで流れるエンディング主題歌が、番組後期から採用されたフツーの歌謡曲じゃなくて、あの『君は人のために死ねるか』なんですよね!

まさに沢木は、人のために……はっきり言ってしょーもない若造カップルのために、命を散らしたワケです。あいつの名はポリスマン!

この演出にはグッと来たし、自然と涙が出ました。全くの他人のために、自らの生命を懸ける。それを描いてこそ『大捜査線』であり、真の刑事ドラマなんです。

つくづく、昨今の謎解きゲーム番組にはウンザリです。ええかげん、そろそろまた、本物の刑事ドラマを見せてくれ! 結論はそれに尽きます。

沢木刑事と恋に落ちる女性を演じられた吉村彩子さんは、当時20歳。'80年公開のにっかつロマンポルノ『少女娼婦/けものみち』で主演デビューを飾るも、芸能活動はごく短かったようで、Wikipediaにもプロフィールは載ってません。本作は吉村さんの数少ない出演作としても貴重なフィルムと言えましょう。
 

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