1976年、石原プロモーションがメインライターに倉本聰さんを迎え、満を持して製作した初の連続TVドラマ『大都会/闘いの日々』は、クオリティーの高さを誇りながらも決して一般受けはしませんでした。
先に大ヒットして刑事ドラマのブームを巻き起こした『太陽にほえろ!』との明確な違いを打ち出す為に、倉本さんはリアリズムを追求し、刑事を決してヒロイックに描かない姿勢を徹底したんですね。
まず拳銃は使わないし、主人公の黒岩刑事(渡 哲也)は上層部の理不尽な命令にも黙って従い、時には権力者の悪事をあえて見逃したりもしなければいけない。
現実の警察ってのは一般企業以上にサラリーマン的な縦社会であり、その中において所轄署の一刑事が、如何に無力な存在であるか… その悲哀をリアルに描いて見せたワケです。
結果、社会派の人間ドラマとしては非常に見応えある作品になったけど、すこぶる暗くて地味でカタルシスもゼロという、大方の一般視聴者が刑事物に求める内容とは、およそ程遠い番組になっちゃった。
私自身も、そんな大方の一般視聴者の1人です。観たのは中学生の頃で夕方の再放送だったけど、そもそも暗いのが苦手だし、『太陽』の作劇に慣れ過ぎてるせいもあって、『大都会』をどう楽しめば良いのか当時の私には分かりませんでした。
最近になってレンタルDVDで観直し、創り手の情熱と志しの高さを感じてリスペクトするようになったものの、それでも何度となく睡魔に襲われ、目覚めたらもう終わってた、みたいなパターンになっちゃうんですよね。
刑事物はやっぱり、走って撃って殴って蹴っての、躍動感があってナンボだと私は思います。ファンタジーで良いのです。西部劇みたいなもんで、嘘をつかなきゃ成立しないんです。
最低限のリアリティは必要だけど、警察の現実を知りたいならドキュメンタリーを観ればいい。深い人間ドラマを求めるなら、刑事よりもっと身近な職業を描いた方が感情移入し易い筈です。
「今度は数字(視聴率)を取りに行こうよ」という社長=石原裕次郎の一声で、1977年4月からスタートした続編『大都会 PART II』は、一転してB級アクション活劇へと生まれ変わり、'78年3月まで全52話が放映されました。
主人公は前作から引き続いて渡 哲也扮するクロさん=黒岩刑事ですが、所属部署が城西署の捜査四課(マル暴担当)から捜査一課へと異動、と同時に階級も巡査部長に格上げとなりました。
そればかりかクロさん、あんなに組織の歯車の悲哀を漂わせて悩んでばかりいたのに……いや、だからこそか、いきなり非情な一匹狼キャラへと変貌、ウジウジした自分とサヨナラして、考える前にとりあえず殴る蹴る、そして迷わず撃つという、実に分かり易くて清々しい暴力刑事へと成長を遂げたのでした。
髪型も中途半端な七三分けをやめて、バッチリ剃り込みを入せた厳つい角刈りに。そして後々トレードマークとなるサングラス&ショットガンの「団長スタイル」も、このシリーズ中盤で完成する事になります。
前作では新聞記者だった裕次郎さんが、今回は警察病院の外科医に転職。クロさん達から殴る蹴るの体罰を受けた、気の毒な犯罪者を治療する役目に回ります。
しかし本作の目玉は何と言っても、黒岩の右腕として活躍する「トク」こと徳吉刑事=松田優作の存在に尽きるんじゃないでしょうか?
純朴キャラのジーパン刑事(太陽にほえろ!)から、ハードでクールな中野刑事(俺たちの勲章)を経て、後の『探偵物語』で披露する軽妙酒脱な魅力へと繋がる、橋渡し的なキャラクターがこの徳吉刑事と言えましょう。
基本的に暴力刑事である事はジーパン時代から一貫してるけどw、ボクシングを取り入れた徳吉刑事のキレ味鋭いアクションは、優作さん歴代の刑事キャラ中でもナンバー1の格好良さ。
それに加えて、隙あらば挿入されるユーモラスなアドリブ。例えば犯人追跡中に髪が乱れると「くそっ、昨日パーマあてたばっかりなのに!」とか、同じゲスト俳優が違う役で出て来たら「お前、この前のヤツと似てるな」とかw
泣く子も黙る渡哲也が相手でも容赦無しで、難事件解決後にタバコを一服しながら「クロさん、あそこ行きましょうよ、あそこ」なんていきなり言い出して、渡さんを素で苦笑させるw
天下の渡哲也にアドリブを仕掛けて許されるのは、恐らく松田優作ならではの事で、それに応えてアドリブを返したりする、渡さんの極めてレアな姿が見られるのも、本作の大きな見所かと私は思います。
そんな2人を中心に高品 格(マルさん)、小野武彦(坊さん)、峰 竜太(サル)、粟津 號(ヒラ)といった面々が一係の刑事を演じてます。途中でヒラが殉職し、神田正輝(ジン)、苅谷俊介(ベンケイ)も新加入。
そして口うるさい事なかれ主義の係長役を、小池朝雄、小山田宗徳、滝田裕介といったベテラン俳優陣が交代で演じ、『西部警察』の二宮係長へとバトンを継承して行きます。
本作のB級アクション路線は狙い通りに高視聴率を稼ぎ、翌年にはアクション描写を更にエスカレートさせた『大都会 PART III』がスタート、より凶悪度を増した城西署捜査一係は「黒岩軍団」と呼ばれるようになります。
そう、いよいよ渡哲也が「団長」化して絶対的な存在となり、やたらパトカーが横転炎上し、全てが暴力と銃撃だけで解決しちゃう『西部警察』の世界が構築されて行くのでした。
それはそれで楽しいのだけど、あんまりドンパチ中心で人間ドラマが希薄になると、観てる我々も気持ちが入らなくなっちゃう。気持ちが入らないと、せっかくの派手なアクションにカタルシスが生まれない。
勝手なこと言いますが、いくら躍動感があっても人間ドラマが無さ過ぎると又、面白くないんですよね。両方がバランス良く盛り込まれてこそアクションが活かされる。
その点で、私は一連の石原プロ作品の中でも、この『大都会 PART II』が一番バランスの取れた傑作じゃないかと思ってます。
前作『闘いの日々』のシビアな人間ドラマを残しつつ、『PART III』『西部警察』へと繋がって行くハードアクションも見られ、更に優作さんを中心にしたユーモアまで加味されて、1本1本が楽しく見応えある中編の「映画」なんですよね。
事件の内容も他の刑事物に比べてドライと言うか、刑事も犯人も決して感傷的にならない所が、また良かったりするんです。これと言った動機の無い衝動殺人犯とかテロリストが相手なんで、最後に射殺しても全然ウェットにならない。
それが『PART III』になるとやり過ぎてマンガみたいになっちゃうんだけど、『PART II』にはまだ辛うじて現実感が残ってる。適度にエロもあるw
第3話で喫茶店に立てこもった犯人が人質の若いウェイトレスに銃を向けて「服を脱げ! そこで踊れ!」って命令するシーンがあって、当時中学生だった私には「物凄くエロいもん見た」っていう強烈な印象が残り、商品化されたら真っ先にその回を観ようと思ってましたw
で、実際に観直したら、そのウェイトレスはブラジャー姿しか見せてないんですよね。だけど演じてるのがポルノ出身の伊佐山ひろ子さんなもんで、醸し出すフェロモンが半端なく(地味な役柄だから余計に)エロくて、私の記憶を増長させてたみたいです。
そんな話はどーでも良いのですがw、とにかくこの『大都会 PART II』は超オススメです。レンタル化もされてますから、後の『西部警察』等とはまた違ったハードボイルドな魅力を、是非ご堪能あれ。
ありましたな?
俺たちの勲章を上回る、優作の傑作と思います。
人間の証明も、この大都会の優作とダブって見ました
あの風吹じゅんの回の、ラストシーで車内でレイバン
越しに泣いてる優作は、ほんとカッコ良かった!!
途端に?ラジオニュースで訃報が流れました。夜中に大声でウソだろう!!と叫んだ事をつい、この前のように
思い出します。お通夜、本葬にも出向きました。善福寺の自宅前にも、なんども足を運び、しばらく眺めたことを思い出します。ただただ、惜しいの一念でした。
優作さんや裕次郎さんの訃報もショックでしたが、自分が一番ショックだったのは沖雅也さんの訃報でした。自殺、しかも飛び降りっていうのが、あまりに衝撃的で……
パトカーが走り回り、何だ?って思ってたらあの惨劇に。錠、市松のファンにはショックでした。
part2はまさに一回一回映画のようですね!
非現実さも俳優さんの動き、汗でリアルに感じさせますね