ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#388

2020-09-16 00:00:58 | 刑事ドラマ'80年代










 
さて、いよいよ'80年代に突入です。世の中の価値観もテレビドラマの内容も大きく変わっていきます。

忘れもしない1979年の秋、私は中学校の修学旅行で観光バスの若い女性ガイドさんが「理想の男性は明石家さんまさんです」と言われたのを聞いて本当に衝撃を受けましたw

その瞬間まで私は、日本女性はみんな高倉健さんみたいに寡黙で実直な男に惚れるもんだとばかり思ってたんですw いやマジでホントに。

あるいは母が毎朝観てたNHKの朝ドラで、女性キャラが「真面目な男なんてつまんないだけよ」って言ってるのを聞いた時。「えっ、そ、そうなの!?」ってw、たとえ健さんにはなれなくとも真面目で寡黙な男になってモテようとしてた私は、アイデンティティーがガラガラと崩れていく音を確かに聞いたもんです。

そんな当時の私はあまりに世間知らずだったのかも知れないけど、'79年末から'80年初頭にかけての『太陽にほえろ!』にも、ちょっとこれに似た世間とのズレがあったように思います。

この第388話では、久々にコメディータッチでアクション満載の『太陽~』が観られるんだけど、それはたぶん正月第1弾のエピソードだからで、残念ながら次週以降はまた陰気な話が続いていきます。

今回の話も、明るくてアクティブなのは大歓迎だし、初めてナーコ(友 直子)や吉野巡査(横谷雄二)にスポットが当てられたのも嬉しいんだけど、その出来映えは「なんだかなあ……」と言わざるを得ないものでした。


☆第388話『ゴリラ』(1980.1.4.OA/脚本=長野 洋/監督=木下 亮)

冒頭、繁華街でチンピラによる拳銃乱射事件が起こり、藤堂チームが陽動作戦で制圧しようとするんだけど、そこで唐突に吉野巡査が単独で突っ込み、あやうく撃たれそうになったところをゴリさん(竜 雷太)に救われ、記念すべき'80年代1発目のゴリパンチを食らう羽目になります。

いくら猪突猛進型のキャラとはいえ、一係の刑事たちを差し置いて交番巡査が1人で突っ込むのはあまりに荒唐無稽だし、命を救われて「なんで自分が殴られなきゃいけないんですか!」なんて言ってる吉野がアホ過ぎるし、横谷雄二さんの演技がまた、下手を通り越して「雑」なんですよねw

横谷さんが沖雅也さんに「ゴリラ」呼ばわりされた探偵コメディー『俺たちは天使だ!』のユル~い世界観だと、その雑さもギャグの1つとして楽しめるんだけど、いくら正月編とはいえ当時のシリアスな『太陽~』世界には到底馴染みません。

で、その事件をきっかけに藤堂チームは拳銃密輸ルートの解明に乗り出すんだけど、事あるごとに敵に先手を打たれ、どうやら捜査情報が洩れてる可能性が浮上し、このところ頻繁に一係室を出入りしてた吉野巡査に疑惑の眼が向けられちゃう。

勿論それは誤解で、吉野はナーコにデートの申し込みをしたくてモジモジしてただけなんだけど、なにしろナーコ=友直子さんの演技力もまだ素人レベルで、雑な横谷さんの演技とあってはならない相乗効果を生んじゃうワケですw(後に共演してしまうマイコン=石原良純さん&デビューしたての沢口靖子さんの組み合わせよりはマシなんだけどw)

それはともかくとして、捜査情報の漏洩は拳銃取引を仲介するスナックのママ(工藤明子)が仕掛けた盗聴機の仕業と判り、藤堂チームはそれを逆手に取ってニセ情報で敵を誘きだし、クライマックスはちょっと長めの銃撃戦と、カラテ使いの外人vsゴリさんの格闘アクションが展開されることになります。

それは願ってもない事だった筈なのに、銃撃戦の描写はなんだか大味だし、格闘シーンに至っては延々とスローモーションを見せられてスピード感も迫力もあったもんじゃない。

格闘をスローでじっくり見せるのはジーパン(松田優作)時代から始まった『太陽~』の伝統芸ではあるんだけど、例えば仲間を酷い目に遭わせた憎い敵を討つ、みたいにエモーショナルな場面なら効果的かも知れないけど、急に出て来た謎の外人が相手じゃ何の感情も湧かず、ただ単に冗長で退屈なだけ。当たってないのが見え見えになっちゃうし何のメリットもない。

しかも、ロッキー(木之元 亮)&スニーカー(山下真司)&吉野巡査が束になっても敵わなかったヤツを、たった1人で素手で倒しちゃうゴリさんが、相変わらずひたすらカッコよくて美味しいですなあ!ってだけの話で終わっちゃってる。

結局、冒頭でチームワークを無視してゴリパンチを食らった吉野巡査は、最後も敵の人質にされてゴリさんに救われるだけで、なんの成長も描かれてない。

本当に「なんだかなあ」でしょう?w 横谷雄二さんの演技以上にドラマそのものが雑になっちゃった。

冒頭、せっかくナーコが晴れ着姿を披露してくれて、その画像を載せたかったのに、引きの画ばかりで使いものになるショットが1つも無い! これもガサツで「なんだかなあ」です。

そういった細かいことも、番組のノリが良ければたぶん気にならないんですよね。横谷さんの雑すぎる芝居が『俺たちは天使だ!』の中じゃ気にならないのと一緒で。

やっぱり、画面を弾ませるバネになる人が必要なんです。かつてはゴリさんがその役目を担ってたのに、竜さん大好きプロデューサーの岡田さんがエコヒイキして格好良いことばかりやらせるもんだから、いつの間にやらゴリさんも勘違いしちゃったw いやホントに、ロッキー登場あたりからのゴリさんはすっかり二枚目気取りで、私は幻滅しちゃいました。

その代わりに1人でバネの役を引き受けてくれたボン(宮内 淳)がいなくなったお陰で、ちょっとコミカルにやろうがアクションを入れようが番組が弾まなくなっちゃった。そりゃバネが無いんだから当然のことです。横谷雄二さんが一瞬でもバネになってくれるかと思いきや、イビツ過ぎて使いものにならなかったw

この正月第1弾の久々に明るいエピソードは、図らずも当時の『太陽にほえろ!』が抱える最大の問題を浮き彫りにしたように思います。バネが必要なんです、絶対に。

その必要不可欠なバネがやっと加わってくれるまで、我々はまだ半年も待たねばなりません。ホントに、よく打ち切りにならずに済んだもんです。
 


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2 コメント

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Unknown (harrison2018)
2020-09-19 12:24:28
ちいさん、コメントありがとうございます。

私も(性別は男ですが)初めてファンになった俳優さんが宮内淳さんで、ファンレターも出したことがあります。レコードも全部持ってますよ。

なんでそんなに好きだったのか今となってはよく分からないんだけどw、ボンを演じてた頃の宮内さんは本当に輝いてたと思います。ハンソク先生やマーロウ探偵も悪くはないんだけど、やっぱりボンがダントツですね。

また『あさひが丘~』もレビューして行きますので、これからもよろしくお願いします!
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Unknown (ちい)
2020-09-19 11:43:21
初めてコメントさせて頂きます。
私が幼稚園の時に両親が毎週太陽にほえろを見ていたので、私も一緒に見ておりましたが、ボン刑事が加人して来た時に、幼稚園児ながらに一目惚れしてしまい、それ以来スッカリ宮内淳さんのファンになりました。
宮内さんは私が初めて好きになった大人の俳優さんでした。

今回宮内淳の訃報を聞き、改めて太陽にほえろを見たくなり、こちらのサイト様を見つけました。
あさひが丘の大統領等本当に懐かしい話ばかりです。
毎日少しずつ読ませて、頂いております。
これからも頑張って下さいね。
毎日楽しみが出来て嬉しいです。
長々と失礼致しました。
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