
雨はふるふる 城ヶ島の磯に
利休鼠の 雨がふる
雨は真珠か 夜明けの霧か
それともわたしの 忍び泣き
”利休鼠の雨”とはピシャピシャと音をたてて地面をはじく様子のことと思っていたが、
それはとんだ間違いであった。
「利休鼠」とは、江戸時代に流行した黒ずんだ緑色のことで、
利休好みの地味で控えめな色、それが名前の由来のようである。
大正二年、北原白秋は 城ヶ島の雨 を作詞した。
九十五年前の城ヶ島はさぞかし寂れた漁村であったと思う。
もちろん城ヶ島大橋などないし、渡し舟が唯一の足になっていたのかもしれない。
そこには傷心の白秋を癒してくれる風景があったのである。
メロディは哀調を帯びながらも後半は明るく転調してゆく、”・・唄は船頭さんの心意気”
その転調の意外性がいつまでも歌われる所以であろうか。

「記念館に入ってるよ!」
貝拾いに夢中になっているときは何をいっても無駄なので、
あきらめて先にゆくことにする。
あれれ、白秋記念館の前で偉そうに白い猫がねそべっているぞ。
白秋~白猫~白春、白つながりで、わたしも白春と改め白秋の弟子になろうかと考えた。
だけど、白猫の弟弟子はちょっとご免かな・・
