堀辰夫が「雪の上の足跡」で立原道造の思い出として語った そのときの詩・・
<雪の底>をキーワードにして検索すると容易に見つけることができた。
ひとり林に・・
山のみねの いただきの ぎざぎざの上
あるのは 青く淡い色 あれは空
空のかげに かがやく日 空のおくに
ながれる雲……私はおもふ 空のあちこちを
夏の日に咲いてゐた 百合の花も ゆふすげも
薊の花も かたい 雪の底 に かくれてゐる
みどりの草も いまはなく 梢の影が
葵色の こまかい線を 編んでゐる
ふと過ぎる……あれは頬白 あれは鶸(ひは)!
透いた林のあちらには 山のみねのぎざぎざが
ながめてゐる 私を 私たちを 村を――
すべてに 休みがある ふかい息をつきながら
耳からとほく 風と風とが ささやきかはしてゐる
――ああ この真白い野に 蝶を飛ばせよ!……
ただ、わたしの持っている立原道造詩集の”ひとり林に・・・”には是とは違う詩が載っていた。