屯田物語

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秋・月の出

2019年12月24日 | 春を呼ぶ朝


大村正次著「春を呼ぶ朝」―故郷の電車―
  
 
 夜の
 しなやかな翅すり合せ
 チリチリ チロロ
 研ぎすまし 鳴く虫がゐる。

 その思ひをこめた韻律が
 宵闇の心を鴆め
 無精な僕を
 頁の中の秋の歌を
 そつと庭までしのばせる。

  月の出

 秋は
 しのびよる冷やかな石の陰
 見よそこには
 真黒頭のゑんまこほろぎが
 長い鬚をふりふり
 つぶらな眼を光らして
 青い月の出を待つてゐる。