61番:通訳ガイド奮戦記
【ロイヤル&スパー・ホテル】
ここは、京都、河原町三条。
その昔、ここにロイヤルホテルがありました。
そして、京都駅の西側、堀川塩小路には、
グランドホテルがあったのであります。
以上、京都昔話を終わります。
坊や、よい子だ、ねんねしな~
あ、ちゃいますやん。
これから、話が始まりますねんがな。
さて、そのロイヤルホテルは、どうなったか?
京都グランドホテルがなくなって、
ここにロイヤルホテルは、
リーガ・ロイヤルホテルとなって、
蘇生したのであります。
リーガは、ロイヤルホテルのグループ名です。
閉鎖された大阪グランドホテルを含め、
リーガを冠する一連のホテルが発足しました。
そして、もともとのロイヤルホテルは、
リーガロイヤルホテルが誕生したときに、
もとのロイヤルホテルと区別するため、
ロイヤル&スパーホテルとなりました。
同じ建物ですから、
規模は、ロイヤルホテルと同級の
ビッグなホテルであります。
ヾ(@°▽°@)ノ
前置きはこのぐらいにして、きょうのお仕事。
ヾ(@°▽°@)ノ
きょうは、朝10時スタートの、
ウォーキング・ツアーであります。
ウォーキング・ツアーというのは、
オール歩き、というわけではありません。
公共交通機関を利用しつつ、格安に、
効率よく、周遊観光を展開すること。
その旅程の組み立ては、通常は、
エージェントが担当するのでありますが、
ゴタ零細企業では、当ゴタ事務所が、
コースを提示して、お客様の承諾を
得ます。
ここが、法律の微妙なところで、
この企画に、1円でも、手数料を入れると、
旅行業法違反になります。
無免許営業になるのであります。
なので、ガイド料金以外は、
一切受取りません。(チップを除く)
と、触れ込みをしておきます。
ヾ(@°▽°@)ノ
【午前10時】
さっきから、真ん前に座っていた外国人が
きょうの、お客様でした。
(何だ。それなら、もっと、早く、
お声かけをしておけばよかった。)
ヨーダンさんと、クリスチナさんとが、
握手の手を差し伸べます。
山田、しっかり握って、ごあいさつ。
山田 : How do you do ?
I'm Yamada, your tour guide today.
どうも。ガイドのゴタです。
ヨーダ
ンさん : Good morning. My name is Yohdan.
And this is my wife, Christina.
おはようございますヨーダンといいます。
こちらが家内のクリスチナです。
クリス
チナさん: Hello.Yamada san I 'm Christina.
ハーイ。クリスチナよ。
あと、お名前忘れたあせあせ(飛び散る汗)
とりあえず、
トンビさん、クルリさん、輪描さん、カミラさん、
と名付けます。
さて、河原町三条のホテル・・・
厳密に言うと、河原町姉小路のホテル・・・
そのホテルを裏側に出ます。
そこは、木屋町通り。見事な桜模様です。
春爛漫の木屋町を北に歩きます。
すぐ左に、一の舟入の跡。
高瀬川は、角倉了以の開拓で、できた運河。
伏見港から届いた、酒、塩、米などをここで降ろし、
北山杉、その他(たぶん西陣織も)
の商品をここから全国発送した重要拠点です。
そのためか、どうかは、
調べていませんが、ふと、前を見ると、
日本銀行もあり、銀行協会もあった。
ヾ(@^▽^@)ノ
二条通りに出て、さらに徒歩で進みます。
体力のある午前中は、歩き、
昼食後は、乗物を利用するというゴタ式発想です。
徒歩は、乗物での案内にのときと違って、
細かい。お店の前を通るたび、
みなさん、ウインドウをのぞき見なさいます。
クリスチナさん: Look ! Yamada san,
what are these ?
見て見て、あれ。何でしょ?
見ると、どうやら、
ロイヤルコペンハーゲンの小皿を陳列しています。
ふたつの店の真ん中のウインドウなので、
左の店のものか、右の店はわかりません。
まず、右の料理屋さんに聞いてみた。
「すみません。ウインドウのお皿は、
お宅のお店のものですか?」
「え?お皿?知らないなあ。」
「そうですか?てっきり、
このお皿で、
お食事がいただけるのかと思って。」
「いやあ、うちの店は、こちらのほら、
このお皿で、出しております。
また寄って下さいな。」
右ではなかった。すると、左の店か。
「すみません。そこに飾っているお皿、
お宅のお皿なんですかぁ?」
「ああ、あの青い色した小皿ね?
お隣のよ。うちじゃないわ。」
「え? お隣も、違うと言っていましたけど。」
「そんなこと言われても、どうすればいいの?」
どっちのものでもないのなら、
もらって行くぞ。と思ったが、一応、料理屋さんの皿と
いうことにして、説明。
とにかく、こっちは、説明するのが仕事。
【琵琶湖疎水】
疎水のところまで、たどり着きました。
桜が七分咲き。
お客様 : Do you have museums around here ?
美術館ってあるの?
そういうものがあっても、
不思議ではない雰囲気です。
そして確かに、それはあるのです。
山田 : Yeah, we have ones,
that one is a Kyoto municipal museum,
and this one,
it's a national modern museum.
うーん、そうだね。いくつかあって、
あれが、京都市美術館で、
こっちが国立近代
美術館です。
クル
リさん : Do they exhibit Japanese arts ?
展示は日本の美術作品になるんですか?
山田 : Oh, They collect every arts
all around the world.
I saw Piccaso's works,
Renoir's and Mone's
いや、世界中の美術品がきますよ。
ピカソもルノワールも、それにモネとか。
トイン
ビさん : And what is this building ?
あ、これは何の建物ですか?
山田 : It's an industrial memorial hall.
伝統産業会館です。
( 入ったことがありません。
これ以上、聞かないで。お願いしますぅ。)
神宮道に来ました。右手には、大鳥居。
このとき、お客様のひとりが、
お客様の
ひとり : Could you explain briefly
the difference
between a temple and a shrine ?
お寺と神社って、どう違うんですか?
(そら、神社は、神様のいるところで、
お寺は仏様のいるところですがな。)
人も、マンションを買って住む人と、
親の家を継いで住む人がいるように、
神仏も、都合により、
住む場所は、様々なのであります。
山田 : If you find a torii gate,
it's a shinto shrine.
If you find a Buddha
image in the altar,
it's a Buddhist temple.
鳥居があったら、神社ですわ。
仏像があったら、お寺。
ヾ(@^▽^@)ノ
平安神宮に入りました。
教科書では、ここで、
白虎楼と蒼龍楼の説明をするとこと。
山田のお客様は、ここで、
「この広々とした空き地は、何に使うのか?」
とご質問。
( そんなん、始めて聞かれましたわ。
そんなん聞くのん、お宅だけでっせ。)
ガイドは、お答えするのが仕事。
山田 : This spacious ground is
kept open to keep dignity.
Remember this was once
a cite emperors took
government business.
この広々とした空間は、
威厳をもたせるためのものです。
天皇がここで政務を執ったのです。
ヾ(@°▽°@)ノ
平安京の大極殿は、
平安神宮から西へ約3キロ行ったところ。
現在の御所より
1.5キロ西にあった。
京都の町の中心も、時代が下るとともに、
東へ、東へと、移っていきました。
東へ移動した理由は、いろいろ言われていますが、
有力な説として、町の西半分は
湿地帯だったことが言われている。
【永観堂はパス】
哲学の道を歩く理想のコースとしては、
疎水づたいに、南禅寺前から、永観堂、永観堂
から、若王子神社と進むのでありますが、
本日は、6時間コースなので、
あまり、理想を追っかけていると、
きびしい現実に打ちひしがれる。
平安神宮の通りは、冷泉通りと申します。
この東西の通りを東、すなわち、山が見える
方向に歩きます。
天王町、
ここは、京都を
東西に貫く主要幹線道の、東の先端。
ここに、鶴屋旅館という老舗があります。
皇室がお泊まりになる宿として有名で、
壁に、皇太子殿下、秋篠宮さま、紀子さま、・・・
歴代天皇・・・さらに、外国からの
各王室の写真が飾られています・・・・
正確にいえば、飾られているそうです。
(一泊最低でも、20000円の宿泊費は、
わてには、出せませんがな。行ったこと
おまへん。)
けど、みなさんに、おすすめするのは、
ここは、宿泊しなくても、
夕食だけでもいいのですよ。
え?いくらかって?ああ、そうでした。
最低20000円からでした。
まあ、一回ぐらい、話のタネに行けば~?
天王町から鹿ヶ谷に出ます。
これを北に少し歩いて、
いよいよ、哲学の小道に出ます。
哲学の小道は、桜並木。
哲学の小道は春うらら。
哲学の小道は、緑深い疎水沿い。
その昔、京大が三高と呼ばれたころ、
朴歯の高下駄を履いた学生が闊歩し、
思索に耽ったという。
京大の先生方もまた、
教鞭を執る合間に、ここを歩き、
ここを愛し、ここに生きた。
ああ、我らの哲学の小径。
(=⌒▽⌒=)
クリス
チナさん: I wonder what these
plants are called ?
これ、何の木でっしゃろ?
ああ、聞いたことがあります。あれは、雪・・
何とかという木です。
山田 : (雪の下?)
It's called "yukinoshita".
雪の下ですわ。
確かめるため、
花に詳しそうな感じの通行人に聞いてみた。
通行人 : ああ、これね。ユキヤナギよ。
え?雪の下っだて?あなた、
雪の下っていうのは、ほんとに雪の下に芽生える
草花よ。
この町で、自然に生育するところ
ってないんじゃないの。
比叡山にでもいかなくちゃ。
山田 : さよか・・・
ただ、ユキヤナギはわかったが、
英語でどういうんや。
結局、
「snow weeping willow 」
と言ってみたが、通じなかった。
帰って調べてみたら、
「spirea スパイリーア」
山田の説明はすっぱいりあ
失敗りゃ 失敗じゃ バンザーイ
(;^_^A
しばらく行くと、案内札。法然院と書かれています。
山田 : Shall we go ?
(Shall we dance ? と言いそうになった。)
(ダンスします?・・・じゃねえや。)
行きまひょか?
ヾ(@°▽°@)ノ
行って見た。だがあいにく、
きょうは、何か、催しがあるようで、
一般の入場は
受付がありません。
音楽会なので、音楽鑑賞するならOKという。
音楽ったって、あんた、
1時間30分かかるんだってよ。
そんな、無茶ゆうたらあきまへんがな。
響きはん。往生しますわ。
せめて、散華が見られないものかと、廻り込んだが、
行き止まりになっていた。
きょうはあかん。
「きょうは、アミダ様が
お出かけで、留守なんよ。」
と、いうことで、銀閣寺へ移動。
【銀閣寺】
山門を入って、受付までは、
銀閣寺垣と呼ばれる敷石道を通ります。
クリス
チナさん : What trees are these ?
これ、何の木どっしゃろ?
山田 : Camellia.
椿・・・かも
(それ以上聞かないで!)
祈るゴタの背後で、お声。
カミラ
さん : Oh it's my name. Sweet flowers.
あらー、私の名前だわ。
お庭の中。おおきなプリンのような積み石を見て、
クリス
チナさん : What is this for ?
これ、何するもんやろ?
山田 : To take moon light in.
月の光を反射して建物に当てますねん。
ヾ(@°▽°@)ノ
そんなんで、光は反射しまへんで。
それが証拠に、ライトアップ用のライトがあちこちに
設置されてますがな。
庭は、さすがに、苔が多い。
義政は、西芳寺(苔寺)にあこがれ、
足繁くかよったと言われています。
こんな中、我らがクリスチナさま、
馬酔木(あせび)を見て、
クリス
チナさん : What do you call this ?
これ何の花?
山田 :( もちろん、馬酔木。 だが、その英語は忘れた。)
It's a-se-bi tree
でたらめガイドの山田。そのうちクビだぜ。
調べて今頃、わかっても、仕方がないが、
Japanese Andromeda
アンドロメダだって、まあ、なまいきな名前。
【昼食は、ファミレス「さと」】
バスに乗るには、
白川通りまで歩いて出なければなりません。
山田、得意の横着により、タクシーをおすすめ。
2台に分乗して、平野神社向かいの和食レストラン
「さと」へ。
2000円也。
平野神社の桜は満開です。日本人観光客なら、
「ねえ、金閣寺は止めて、ここの桜を見ませんか?」
と誘うところ。
外国人には、一生に一度の日本。
やはり、金閣寺にご案内
しなくっちゃ。
【金閣寺】
ファミレス、「さと」 から、歩くかどうか、迷ったが、
結局タクシーで金閣寺に向かいました。
金閣寺、本堂、陸舟の松、
鯉魚石、安民沢、夕佳亭、石不動・・・
何度も来ていると、説明する順番は、
すでにインプットされています。
まず、鏡湖地で、お写真。ここは、定番。
山田 : How about photographing against
the backdrop of the golden pavilion ?
お写真取ればいかがでしょう?
金閣寺もバックに入れて・・。
ときどき、複数のカメラが渡されます。(;^_^A
そして、ときどき、写し方のwからんカメラもあります。
山田 : How do I push the button ?
ボタン押されへんで、これ。
お客様: Just touch the mark on the display.
right upper.
右上にボタンの印あるやろ。
山田 : Oh looks like I found it.
OK, ready ? three two one zero カシャ
ああ、これか。 オッケー、
ワン、トゥースリー・・・カシャ
(カシャゆわへんけどな)
【本堂】
山田 : In Zen sect of Buddhism, meditation
is practiced in the main
hall cross legged
and facing to the south.
So no pond can be seen on
the south side of
the main hall like this.
This is the Kinkakuji
temple's main hall.
禅寺やさかい、禅修行しまんねんで。
この本堂で。座禅組んでしまんねんで。
ほてから、座禅するときは、南向きゆうて、
決まってまんねん。
しやよって、
本堂の南の庭は、枯山水でんねん。
ヨーダ
ンさん : Why ?
なんで?
山田 : For why do you say ? Oh, yes.
If there is a pond
in the garden south of the hall,
it sometimes makes itself
an obstacle against
the meditation practiced by monks.
The water wavers to disperse
the concentration trainers try to make
なんでて? ああ、そうか。
池なあ。池が本堂の南にあったら、禅修行の
妨げになりますのや。
ゆらゆら水が揺れまして、
気を散らしますのや。
【龍安寺】
金閣寺から龍安寺へは、バス移動がまあ、
一般的ですが、お時間の都合上、
タクシーにしました。
ワンメーターで、行けますで。640円也。
毎回、山田の入場券のことを
心配して下さったお客様も、
もうこのころには、
ヨーダ
ンさん : You have yours right ?
おたくのは、要りませんのやな?
山田 : Right, thank you.
さよでっせ。
枝垂れ桜が見事です。
クリス
チナさん: How long can you enjoy
the cherry blossom ?
桜どれくらいの期間、
咲いてますのやろ。
山田 : Only a week or two.
一、二週間ですわ。
龍安寺の庭。みなさん、
ベランダに座り、瞑想です。
さあ、この石を見て、
入場料金500円とは、高いやないか!
などと思いが浮かんでは、
まだまだ、瞑想が出来ていない。
深い禅定に入るためには、
無我の境地に入らなくてはならない。
非想想念処・・・
だったか何か忘れたが、
ブッダが指導を受けた先生に、
ウッダカナータプッタという人がいた。
この人の禅定の境地とは、
想いはない。
想いがない、という想いもない。
という何だかよくわからん深い禅定
の境地を習得させることであった。
さあ、この石を前にして、
禅定三昧を修して下さい。
と、そっと時計を見る。
(おお、もうそろそろ、6時間がくる。
これで、きょうは終わりだな。バンザーイ)
と、想う境地は、まるで、
禅定から遠いことは、確かである。
帰りは、ホテルまで、タクシーで、直行。
なんとか、6時間コースが終了しました。
山田の案内料金は6時間コース、
18000円となっております。
【ホテル帰着】
みなさま: Thank you. We enjoyed.
ありがとね。楽しかったよ。
謝礼金、20000円が支払われました。
2000円のおつりを出そうとしたら、
ヨーダ
ンさん : No, keep it.
We enjoyed today's tour.
Thank you.
(*^ー^)ノ
「釣りは取っておきなさい」、だって。
あらうれし。
かくして、
ノルウェイのお客様のガイドは
何とか、終了いたしました。
山田のええかげんなガイドに満足いただけて、
恐縮でございます。
おしまい。
山田 錦