上善如水

ホークの観察日記

映画「バケモノの子」

2016-04-29 18:14:03 | 映画

アニメ映画『バケモノの子』(2015年)を観ました。

監督は『時をかける少女』、『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』などの作品で知られる細田守。

 

著者 :
バップ
発売日 : 2016-02-24

 

バケモノに育てられることになる主人公の人間、九太(きゅうた)の声を宮崎あおい(幼少期)、染谷将太(青年期)

九太と暮らすことになるバケモノ、熊徹(くまてつ)の声を役所広司。

他に現在(2016年4月29日)公開中の映画『ちはやふる 』(上の句、下の句の二部構成)で主演を演じる広瀬すずがヒロイン役。

個性的な脇役として大泉洋、リリー・フランキー、黒木華が声優として参加しています。

 

声優陣豪華〜

 

さすがにヒット作連発の細田作品ということでスポンサーサイトも気合いが入っていますね。

それがちょっと作品の質を落としてしまっているのが残念ですが、そこは大人の事情があるんでしょう。

個人的にはプロの声優さんをもっと使って欲しかったなぁ。

 

脚本的にも『おおかみこども』の時のように「世界への違和感」「自分の居場所」といった内面への葛藤が多く描写されていて、なかなか素直な感情が表に出てこないのでちょっと物足りない。

九太は感情表現難しいとしても、それに代わる狂言回し的キャラが必要だったのでは?

「デジモン」の時のような勇気と友情はどうしたの?

戦うのが男の子ばっかりで女の子を「応援するヒロイン」にしちゃったのも嫌。

もうね、ヒロインの女の子の転び方が本当に”女の子”なんですよ。しかも何度も転ぶ。必然性なんてないのに!

バケモノたちの住む異世界と人間たちの住む世界という魅力的な設定があまり活かせていなくて、ちょっとワクワク感も少なめ。

戦い方も『サマーウォーズ』の「花札」みたいな意外性が欲しかった。

 

いろいろ要望を書いていますが、卵かけご飯は美味しそうだったし、九太と熊徹の関係にはジーンときたし、子供のベッドのかたわらで寝ちゃう両親には感動しました。

なんやかんやで細田作品好きなんですよね。

下手に売れちゃって制約が多いのはわかりますが、もっと時間をかけてもっと自由に作って欲しい。

どうして日本はクリエイターはいるのにそれを応援するスポンサーが育たないんでしょうか?

輸出品の包み紙に日本では消耗品だった浮世絵を使って、逆に包み紙の浮世絵の方が海外では高く評価されたみたいに、昔から日本人って芸術に対する評価が低いんですよね。未だに人と違ったことをする者はのけものにする文化があるのかな? 出る杭は打たれる?

ある意味芸術家なんて「バケモノの子」ですからね。

人と違って当たり前。

人と違うから人間は面白い。

他人に合わせようと自分の心をけずってけずってやせ細ってしまうと心に闇が生じるのかも。

 

私がこの作品で一番好きなのはイノシシの次郎丸です!

だって一番平和そうだから(笑)

 

 


映画「パージ」「パージ:アナーキー」

2016-03-22 08:12:21 | 映画

「すべての犯罪が12時間だけ合法になる世界」を描いたホラー映画、「パージ」(2013年)とその続編「パージ:アナーキー」(2014年)を観ました。

 

著者 :
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
発売日 : 2015-11-26

 

著者 :
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
発売日 : 2015-11-26

 

主役は「パージ」がイーサン・ホーク。「パージ:アナーキー」はフランク・グリロ。監督は2作品共ジェームズ・デモナコ。

一作目はアメリカ、二作目はアメリカ、フランスの合作となっています。

 

舞台は深刻化する犯罪を抑制するため、一種のストレス発散として「パージ」と呼ばれる制度が導入されたアメリカ。

『殺人を含むすべての犯罪が合法となる』

1年に1晩だけ、19時から翌日の7時までの間、何をやっても犯罪として問われない。

パージの間は警察、消防、救急医療といったサービスも停止され、人々は普段抑圧されている欲望や怒り、恨みや嫉妬を解放することができる。

略奪も強盗も殺人さえもやりたい放題。

もちろんそれから身を守るため、銀行はお金を安全な場所に移動させたり、人々はセキュリテーにお金をかけるのです。

そんなセキュリテーシステムのトップセールスマン一家が最初の主人公。

豪邸に完璧なセキュリテーシステムを備え、パージが終るまで平和な夜を過ごすはずだった・・・

 

ここからネタバレ含みます。

設定は面白いです。

でも、つっこみどころ満載!

完璧なセキュリテーシステムが雨戸を鉄製にしたぐらいですぐ破られる!(笑)

自家発電さえなくて停電になったら真っ暗(笑)

そのセキュリテーシステムを息子が勝手に開けてしまう!(笑)

娘が家の中で行方不明になる!(どうみても二階建てでそこまで広い家じゃない!)

セールスマンの父親が家族を守るために急にランボーみたいに活躍しだす!(笑)

とにかく息子がバカですべての行動が家族を危険に追い込んでいく!(実は息子が一番の敵?)

 

ホラー映画でよく描かれるとことですが、なぜか一人で様子を見に行ったり、親や仲間に隠れて恋人とイチャつくカップルがいたり、悲鳴を上げて犯人に見つかったり、いわゆる死亡フラグがこの映画ではあまりに短絡的。

もう不自然なくらい主人公たちはどんどん自分たちを追いつめて行く。

追いつめられるんじゃなくて、自分たちで追いつめちゃうのがもうバカすぎる。

観ていてちょっとイライラしてしまうレベルでした。

 

人間の嫉妬の怖さとか、普段は内に秘めているドロドロとした感情が一気に表に出てくる精神的なホラーは怖いのですが、そこを描きたいがためにちょっと無理した筋運びになっているのが気がなる。

事前にパージの日程がわかっているくせに不用心すぎるよアメリカ人!

 

一作目が一つの家だけを舞台にしていたのに対して、二作目の「アナーキー」では街全体が舞台で、車での移動や地下鉄、逃走劇が描かれます。

こちらはお金もかかっていてアクションも派手。

主人公と行動を共にする偶然出会った4人もいたりして群像劇にもなっています。

こちらもホラーですが、日常の中に潜んでいる人間の怖さを描いた前作に比べ、パージという制度に隠された陰謀とか、富裕層と貧困層といった格差による差別とか、ちょっと怖さの質が変わってきていて、問題が大きくなった反面、ゾクゾクする怖さはあまり感じませんでいた。

 

『殺人を含むすべての犯罪が合法となる』

 

という設定がアメリカならありえるかも知れないと思わせるのが一番のホラーなのかも知れませんけどね。

 

パージ、パージ:アナーキーMIX予告


映画「レナードの朝」

2015-02-03 22:18:51 | 映画

2014年に亡くなったロビン・ウィリアムズ主演の映画、「レナードの朝」(1990年)を観ました。

研究畑出身なのに、精神科の病院に雇われて働くことになる医師役にロビン・ウィリアムズ。

30年間も意志の疎通ができず、体も石化したようにしか動かない、当時「眠り病」と呼ばれた嗜眠性脳炎の患者、レナード役にロバート・デ・ニーロ。

実話をもとに映画向けにフィクションも交えながら映像化した作品です。

 

著者 :
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
発売日 : 2010-11-24

 

もう古典の部類に入る名作ですが、病気に対する偏見と無理解がいかに個人の尊厳を傷つけてきたか、医療とは、そして人間とは何かを見る者に訴えてくる映画。

ハンセン病の例を出すまでもなく、現在でも認知症やうつ病、統合失調症などへの理解はまだまだ不充分なところがありますよね。

映画の中でも、投げたボールを患者たちが受け取れることを発見したロビン・ウィリアムズに対して、古株の医師たちは「ただの反射」で済ませようとします。

映画の中の描写は医学的に正しくないところもありますが、患者の一人が部屋のある地点までは歩いて行けるのに、急に立ち止まり動かなくなってしまう理由を「床の模様がここでなくなっている」からだとロビン・ウィリアムズが気づき、看護婦と二人で床に模様の続きを描くと、患者はその模様の続くところまで歩いていくというシーン。

これも患者にはちゃんと行動する理由があるのに、それを伝える手段がないため周りに理解されない悲劇。

認知症で徘徊をする人も、その人なりの理由がちゃんとあるっていいますしね。

ロビン・ウィリアムズの演技も素晴らしいのですが、この映画の見所は何と言ってもレナード役のロバート・デ・ニーロ。

前半のしゃべれない動けない状態を表現した演技もいいのですが、後半、回復のきざしを初めて見せる夜のテーブルのシーンは本当に何ともいえない空気を生み出していて圧巻でした。

患者の変化は、周りの医師や看護師たちの変化へと波及していきます。

 

「カメラを早く。全部撮れ。学べ! 学べ!」

 

自分の症状が再び悪化し、痙攣の発作に襲われたレナードが苦しみながら叫びます。

自分の姿を記録しろ。

そこからこの病を治す手がかりを学んでくれ。

学べ。俺の苦しんでいる姿から学べ!

 

人間の愚かさの大半は、無理解からきているのかも知れませんね。

 

そして迎える結末。

人間関係が苦手で、女性にも奥手だったロビン・ウィリアムズ(演じる医師)が、一緒に戦ってきた看護婦の女性に一言声をかけます。

それが前半のセリフとつながっていて、いい味を加えています。

とてもいい映画でした。

 

余談になりますが、日本の青年が13歳のときに書いた『自閉症の僕が跳びはねる理由』(2007年出版)という本が、英訳されて世界で次々と出版されている、ということを少し前になりますがNHKの番組で知りました。

それまで、自閉症の子どもを持つ親たちは、なぜ自分の子どもが奇声を発するのか、床に頭を打ちつけるのかわからず、コミュニケーションを諦めていたといいます。

それがこの本のおかげでその理由がわかり、自分の子どもをようやく理解できるようになった、と紹介されていました。

この青年は、言葉での会話が困難なため、母親が作成した文字盤や筆談でコミュニケーションをとっているそうです。

まだまだ人間は学ばなきゃいけませんね。

 

著者 : 東田直樹
エスコアール
発売日 : 2007-02-28

 


映画「ゼロ・グラビティ」

2014-06-28 00:22:07 | 映画
 ゲオで優待手続きをするついでに、映画 「ゼロ・グラビティ」(2013年)を借りてきました。

 スペースシャトル「エクスプローラー」でハッブル宇宙望遠鏡の修理をする、主役の女性技師をサンドラ・ブロック。
 指揮をとる経験豊富な宇宙飛行士役に、ジョージ・クルーニー。
 監督はアルフォンソ・キュアロン。

 宇宙を舞台にしたサバイバル(生き残り)映画です。


 まず、基本的に宇宙には空気がないため音が伝わりません。

 この映画ではその「無音」が効果的に使われていて、なかなかいい演出になっていました。

 息つく暇もない危機の連続なので、90分少々の時間がアッという間。

 飛び散る人工衛星。

 逃げ惑う宇宙飛行士。

 時間も無いけど、空気もない。しかも無重力(ゼロ・グラビティ)で一度動き出すと体が止まらない止まらない。

 それにしても、破片多すぎ(笑)

 しかも当たらない!!

 ISS(国際宇宙ステーション)にあったカンガルーのステッカーが気になる~

 中国の宇宙ステーション「天宮」に卓球のラケットがあったのは笑えた♪

 ジョージ・クルーニーがおいしい役をもっていっています。


 こういう単純に楽しめる作品楽しい!

 エンディングもお金がかかっていなさそうで(パッと見ね)よかったです。




 

  

 


ジブリ映画 『風立ちぬ』

2013-07-25 21:45:00 | 映画

風立ちぬ サウンドトラック[共通特典CD付き] 風立ちぬ サウンドトラック[共通特典CD付き]
価格:¥ 3,000(税込)
発売日:2013-07-16
 


 ジブリ映画『風立ちぬ』を観て来ました!

 監督宮崎駿。主演声優をエヴァンゲリオンなどの監督、アニメーターとしても有名な庵野秀明が務めています。

 
 風立ちぬ、いざ生きめやも


 太平洋戦争で日本軍の主力戦闘機となった零戦の開発者、堀越二郎の物語を縦軸に、同時代を生きた小説家で「風立ちぬ」「菜穂子」などの著書で知られる堀辰雄の小説を横軸に、欧米列強に並ぼうとしてもがく貧しくて混乱した時代の日本を生きる人間ドラマが描かれています。

 主人公たちがやたら煙草をかっこよく吸うのは、自身も喫煙家である宮崎駿監督の、最近の禁煙運動に対する抵抗かな?(苦笑)

 ともかく、宮崎作品をずっと見てきて、大作を数多く手がけ、一流のエンターテナーである宮崎駿が、あの年齢でまだこういう作品を作れることに驚愕しました!

 トトロやナウシカのようなお話を期待していた方、残念ですが今回はそのような作品ではありません。
 いってみれば、大人のジブリ。
 それを、あえて作っていることがスゴイ!!

 印象的な夢のシーン。
 
 「ポニョ」にすることも、「ハウル」にすることもできるのに、あえてアノ形にする!

 いやぁ、そうかアノ年齢で宮崎監督はこの場所へ着地するんだぁ、と思うと、何だかひどく感慨深いものがありました。

 いいものを見せてもらった!

 自分も負けていられないと、何だか元気をもらいました。