アメリカの絵本作家、モーリス・セダックの原作を映画化した作品。
スパイク・ジョーンズ監督の
『かいじゅうたちのいるところ』
を観ました。
監督にスパイク・ジョーンズが抜擢されたのは、原作者モーリスのたっての希望だそうです。
かいじゅうたちの着ぐるみとは思えない細かな感情表現!
それが可能な見事な造形に注目です!!
原作の絵本は読んだことはありませんが、なんだか胸が締め付けられるような、危ない橋を渡るような、綱渡りのような緊張感が全編にただよいます。
母親とケンカをしてしまい、家を飛び出した少年がボートで海に出て、不思議なかいじゅうたちの暮らす島にたどりついてかいじゅうたちの王様になる…
そんなファンタジーのような不思議な物語なのですが、何? この不安は?
少年にとっては、家が、家族がまだまだ全世界。
お話を作り、いたずらをしたり遊んだり、笑ったり喜んだり、好きなことだけしていたい。
お姉ちゃんやお母さんに注目して欲しいし、自分のことを見ていて欲しい。
だけど、お姉ちゃんやお母さんには学校や仕事という家族とは別の世界もあって、いつまでも少年と遊んではいられない…
家族を愛しているのはみんな一緒。
何とか家族を自分の世界に引き込もうとする少年の行動は、時にわがままに、時に自分勝手なものに映ります。
手に負えない。
いいかげんにしなさい!
…僕だけが悪者なの?
みんなと遊びたいだけなのに?
こういう時期を自分も経験したはずなのに、どうやって現実と折り合いをつけたのかすっかり忘れてしまいました。
綱渡りを見るような不安は、少年の夢の世界がいつか崩れると知っているから?
「かいじゅうたちのいるところ」
…それは少年の心の中なのかも知れません。
ちょっと乱暴で、木を倒したり家を壊したり、穴を開けたり泥だんごをぶつけあう”かいじゅう”たち。
走ったり転んだり、楽しいことをしていると夢中になってしまう”かいじゅう”たちが、スーパーで走り回る子どものようで危なっかしく見えてしまう。
そのうち転んで泣き出すのがわかっているから…
自分もかつては走り回っていたくせに。
どうしてあの頃の気持ちを忘れてしまったんだろう?
「食べちゃいたいほど好き」
王様は自分達を助けてくれる。
みんなをまとめて仲良くさせてくれる。
そう信じている”かいじゅう”の一人キャロルは、母親(王様)を見る少年自身の姿。
自分の期待に応えてくれないから、
僕をわかってくれないから、
王様(母親)なんて大嫌い!
もう、食べちゃうゾ!!
…本当は好きなのに、大好きなのに、傷つけ、壊すことしかできない”かいじゅう”
「食べちゃいたいほど好き」
♪君にもわかるかな…すべてが愛…愛がすべて…
とエンディングで曲が流れます。
すごくせつなくて、すごくなつかしい。
大人の自分はそんな感想を持ちました。
家族って仲良くしていたと思ったら、ちょっとしたことでモメたり、傷つけあったり、そうかと思うとすごく心配したり、いろいろありますね。
それでも一緒にいないと仲直りもできない。
ラスト、家に帰った少年と母親のシーンが良かったです♪
エンディングで流れる曲もオススメです☆