もう涙がこぼれそうで困りました。
佐々涼子さんのノンフィクション『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』(早川書房)
宮城県石巻市にある日本製紙石巻工場の再生を描いたドキュメンタリー本なんですが、震災当時の様子や、その後のご苦労を読むと、もう目頭が熱くなってしまって、電車の中で読んでいたりしたもんですから、涙をこらえるのに必死でした。
家族を亡くされた方とか、特にお子さんが犠牲になった話は辛すぎます。
食べ物も物資も不足する中、生きる事さえままならないのに、工場の再建のために立ち上がる人々。
石巻工場が死んだら、日本の出版は終る・・・
そのくらい、日本にとって石巻工場は重要な工場なんです。
私でも知っている、大人気のコミック『ONE PIECE(ワンピース)』や『NARUTO(ナルト)』、文庫本でいえば『永遠の0』や『天地明察』、単行本では池井戸潤さんの『ロスジェネの逆襲』なども、この石巻工場の8号抄紙機(しょうしき)と呼ばれる機械の製品で作られています。
困難の中、再建に取り組む企業の人々もことも心にかかるのですが、それにも増して心に刺さるのが、震災の中、バットやゴルフクラブでコンビニや自販機を襲ったり、被災した家に盗みに入る人々。
そういう話は聞いていましたし、ある意味人間の暗い部分として承知しているつもりでしたが、あらためて読むのは辛かった。
殺気立つのも無理はない異常事態。そんな時、最後は人間性が出てしまうのでしょうね。これも残酷です。
工場に流れ込んだ車や家の残骸、汚泥を片付ける、気の遠くなるような作業。
電気設備もモーターも海水につかり、使い物にならない。
でも、多くの人々が、この石巻工場の紙を、その紙で作られた本や雑誌を待っている。
コミックにはコミック用の紙が、文庫本には各社出版社ごとにこだわった種類の紙が使われているなんて、あまり意識したことありませんでした。
コミック用の紙は、子供が指を切らないような配慮までされていたんですね~
実話だけに迫力があって、グイグイ読みすすめてしまいました。
この石巻工場の早い再建が実現していなかったら、もしかしたら日本の出版業界は今と全然変わっていたかも知れないですね。
紙の本が読めることに感謝です。