ユニットケア研修を受けて来ました。
いやぁビックリ。
お花畑とまでは言いませんが、あまりに現実を無視した理想論に「そもそも研修を運営する法人にいくら税金使っているの?」とあらぬことを考えてしまいました。
ユニットケアというのは従来型と呼ばれるこれまでの老人ホームのスタイルと異なり、利用者の個性、習慣を重視して、自宅に近い環境でサポートを行うことを目的とした介護施設。
基本は個室、これまでの集団ケアと違い個別ケア、人数も10名くらいでひとつのユニットとして、顔なじみの介護員が一人一人の生活リズムを尊重した暮らしを支援します。
私もユニットケアには憧れがあって、研修ではそれをどう実現するのか、具体的なノウハウ、福祉用具や家具や家電の機能にその利用法、利用者の経済的負担に対する補助、経費や人件費に対する対策、行政の支援状況、成功事例などが知りたかったのですが、いきなり映像を見せられ、老人の一人語りというていで、従来型老人ホームの否定から始まりました。
決まった時間に起こされる。
朝はあたたかいコーヒーが飲みたい。
お風呂に昼間入るのは恥ずかしい。
体が不自由だけれど寝間着も着たいし朝はお化粧もしたい。
リハビリ体操やお遊戯もいいけれど、散歩がしたいしたまには喫茶店にも出かけたい。
・・・いかにも健常者がお年寄りの心を想像して作ったようなセリフ。
個性を大切にするんじゃないの?
生活習慣なんて人それぞれだよ?
なに、このオシャレなお年寄りイメージ?
糖尿病なのに甘いものを飲みたがるおばあちゃんもいます。
お風呂になんて入ったら風邪を引くと嫌がる人もいます。
着替えどころか、何枚も何枚も服を重ね着して、脱ぐのを頑なに嫌がるおばあちゃんもいます。
今が昼なのか夜なのかわからない人。ご飯を食べてもすぐに忘れてしまう人。
便座の水で手を洗う人。ぬいぐるみに自分の食事を食べさせようとする人。家に帰るために扉という扉、窓を開けようとする人。
そういう人たちの人権と個性を尊重しながら、私たちにはどんな支援ができるの?
そういう人たちにユニットケアはどんなメリットがあるの?
ユニットケアは従来型よりもたいてい利用料が高いです。経済的に困窮しているお年寄りにどんな救済方法が用意されているの?
だけれど、研修で講師がみせてくれた映像には・・・
入浴中、家庭用の小さな湯船に入るお年寄りと、楽しそうに話している介護員の姿(もちろん介護員は服を着ている)
いや、お風呂で服を着た相手とおしゃべりをたのしむ習慣なんてそうそうないよ!?
・・・ちょっといいすぎました。そういうことじゃないんでしょうね。伝えたいことはわかります。利用者さんの笑顔が欲しいんですよね。
性善説というか、中には介護員をバカにして喜ぶ人や、女性を差別している男性利用者、相手が痛がるのをいい気味だって笑う高齢者だっていますからね。
岐阜県の介護施設では包丁を持った利用者から包丁を取り上げ、投げ飛ばした介護員が「虐待」と認定された事件もありました。
いや、私はユニットケアには賛成です。
利用料が高くなって利用できない高齢者が多いとか、介護する人手が確保できない、人件費がかかる、施設の運営にとって負担、などなど政府のユニットケア推進は失敗だったんじゃないかとの声もきこえますが、そのひとの暮らしの延長での支援という考え、個性や人権に配慮した支援というのは必要だと思っています。
でもそのためには人とお金をもっとかけないと!
海外では、施設内に認知症の人の暮らす町を作ってしまった、なんて取り組みもあります。
普通にお店があり、郵便局があり、映画館がある。
研修では「利用者のテーブルでは手の届くところに5つ以上の物を置きなさい」とか「同性介助を行いなさい」とか「業務スケジュールはなくしなさい」とか具体的な指導もありました。居室にもっと物を置くように。壁や通路に飾りを。個人を尊重した掲示の方法を。
どれも人とお金がかかります。
「利用者さんは毎月の部屋代、食事代を払っています。施設は利用者さん目線で、決して従業員目線で行ってはいけません」
いままでの介護の方法ではダメです。これからはこうして下さい。理由はこれこれこいうことです。どうやって実行するかは自分で考えて下さい?
これは担当講師さんの問題?
他にもまだまだおかしな点はたくさんあったのですが、結局この研修を受けても、何もかわらないだろうということだけはわかりました。
自分たちで試して、調べて、勉強するしかなさそうです。
こういう無駄な研修に流れる予算をもう少し現場の介護員の給料に反映させられないのかな?
私なんて、今の施設で一生働いても、とうていユニットケアを受けるだけの年金も貯金も足りないですからね。
江戸時代の農民のように、年貢で収める米を作っているのに、自分たちでは米は食べられないのと同じです。
レーポート提出するのがユウウツだなぁ。