入浴拒否の多い入居者さん。
最初に声かけしたのは新人さん。
直球どストレートに「お風呂行きましょう」と話しかけ、
「行きたくないからいいわ」と断られる。
時間を置いて、もう一度声かけするも結果は同じ。午前中の入浴は諦める。
午後になり、今度の担当は中堅の介護士さん。
午前中の様子を聞いて「難しいかもね」といいながら、明るくハイテンションで声かけ。
「◯◯さんコンニチワ! 久しぶりだね、元気だった?」
「あれ、久しぶり。ありがとう、元気だった?」とハイタッチ。
・・・いや、毎日のように会ってますけどね。
「一緒にお風呂に行かない?」
「う〜ん」
「連れて行ってあげるから、一緒に行きましょう?」
「・・・じゃあ、お願いするわ」
「うれしい。じゃあ車椅子動かすね」
と会話しながら浴室へ・・・
これね、介護技術のひとつなんだけれど、ハイテンションで演技しなくちゃいけない介護士さんの大変さをまずわかって欲しい。
新人さんも断られて(どうしよう)って困っているだろうけど、雰囲気作りを考えず、ある意味、入居者さんの気持ちを考えずにこちらの要望だけを伝えているから、声かけとしてはサボっているんだよね。
もちろん中堅介護士さんのやり方がいつもうまくいくとは限らないし、同じパターンが他の人に通用するわけでもないんだけれど、考えて演技してコミュニケーションにボディタッチも交えて工夫してる。
この雰囲気、空間を維持するために中堅介護士さんがどれだけ気を使っているか。
そこを新人さんにはわかって欲しい。
相手の入居者さんは認知症がすすみ、以前のように周りの状況が理解できず、記憶も維持できない。それを不安に思い行動すること自体に恐怖を感じている。そんな想像力が働くと、その不安を軽くしてあげることのできる声かけができるようになる。
実際に入居者さんがどう感じているかはわからないし、想像が外れることも多いんだけれど、考え方としてはこんな感じ。
ベテラン介護士さんになると、「この人なら安心」という関係性をつくっているので、割と「お風呂行きましょう」でもすんなりうまくいくこともある。
「お薬ぬりますね。こちらへどうぞ」とか「足の調子はいかがですか?少し見せて下さいね」と浴室に案内する人もいる。
「温泉に入りましょう」「いいところに案内しますよ」なんて人も。
介護に正解はないので、人それぞれのやり方があっていいんだけれど、相手の気持ちを考える想像力は大切。
ちなみにこの入居者さんは、強引に連れて行こうとすると、車椅子の車輪回しをつかんで足を踏ん張り、テコでも動かないぞって感じで抵抗する方。
真夏でも「風邪を引くから入らない」という入居者さんもいるし、「家で入るから入らない」という何年も施設で暮らしている入居者さんもいるし、「今日はやめておくわ」という入居者さんとか、入浴拒否のパターンは千差万別。かなり演技力と想像力が試されます。へたな演出家より手強いです(苦笑)
そうなんですよね。
心を載せる。新人さんも今は仕事を覚えることにいっぱいいっぱいで、業務を「こなして」いるだけって感じで、雰囲気作りとか微妙な表情の変化を読み取るとか、そこまでいっていないんですよね。
真面目は真面目なんですよ。
そういう相手の心理にまで心遣いができるプロに育って欲しいところです。
病院でも同じ感じですね。
声掛け、
人間関係、
雰囲気作り、
微妙な表情の変化を見逃さない。
そして、
心を載せる、でしょうか。