これまでコットン紙づくりで,ずいぶん苦労を重ねた気がします。コットン繊維のように頼りなげな細いセルロース繊維から,ほんとうにたやすく紙が漉けるか,まずそこの気持ちを解消するのが関門です。
ところで,コットン紙はヨーロッパの伝統的な紙でもあり,インドでは手づくりをしているということで,ともによく知られています。前者は高度な製紙技術によっており,後者はとても原初的な技法で漉かれています。
インドのコットン紙づくり技術は,わたしの紙づくりに大いに役立ちました。ただ写真をとおしてだけなのですが,じつによく理解できたのです。なにしろ布の端切れや古着を裁断し,繊維をどろどろにして紙の材料にするのですから。それもとても大雑把で,ドカーンとしたつくり方なのです。
はじめに書いた関門の話に戻りますが,先入観を取っ払って取り組むことが大切だとわかりました。コットン繊維はもともと塊りのようになっているので,一本一本の繊維を水の中で均一に分散させようとは考える必要なし,です。塊りそのものが均一に散らばっていたらよし,と思っておきます。そうすることで,気楽に漉けます。
コットン紙づくりの依頼者Mさんから,追加分のコットン繊維をたくさんいただきました。この繊維には油質成分が含まれているとはいえ,紙には不必要なリグニンのような成分はない(あってもごくわずか)と考えておいてよいでしょう。割り切ってそう考えれば,このまま紙料(パルプ)として使えます。煮る時間が省けるので,とても楽! なお,下写真はいただいたコットンのうちの和綿です。和綿は繊維が短いため扱いやすく,紙漉きに向いています。
さっそくつくってみました。ミキサーで叩解します。もちろん程々に離解工程も重なっています。
繊維を水に入れて粘剤を加えます。手でかき回します。すると小さなダマがきれいに分散した状態になります。
これを漉き枠に流し込んで漉きます。そしてアイロンを使って乾かします。これで完成です。ばっちりうまくいきました。
時間が意外とかかるのは水切りと乾燥工程です。天日で気長にすることを思うと,ぜいたくないい方になりますが,全工程からみればそこを根気よくするのが大事だと感じます。