細かくなった(と思われる)コットンの繊維を水に入れ,そこにネリを加えて撹拌。とにかく十分に。しかし,太めの繊維束が残りました。これはコットン繊維の性質が関係しており,今のところわたしの手では改善方法が見つかりません。
それでも漉けばその繊維束が均一に散らばるので,そんなに問題はないのかもしれないと思い,漉くことに。
市販のコットン紙は厚みがあって,腰がしっかりしているもののふわっとした感触をしています。温かみがある,といった印象です。印刷すると,印字部分が表面に食い込んでそれなりに凹凸が現れます。それを思うと,紙料を多めに流し込んである程度厚みのある紙にするのがよさそうです。
その紙質を求めて,わたしは次のようにして漉くことにしました。
① 両面から圧を加えてしっかり水切りをする。➡ふわっと感を抑制し,腰を強くするためにドウサ液を塗る。➡アイロンで一気に乾かす。
② これまでどおり,ステンレス網にのせて自然乾燥をする(途中,ドウサ液を塗る)。
①②を比べることで,良質な紙をつくる手がかりが得られるかもしれません。①のアイロン法では乾きムラが出やすいので,乾燥による影響を最小限に抑えるために葉書サイズの紙を漉くことにしました。要するに紙サイズの如何にかかわりなく効果を見定められたらよいのですから。
①の工程のあらましを書きとどめます。
■ 溜め漉きをする
■ 木枠を外して圧を加えて水切りをする
■ 新聞紙で水気をとる
■ ドウサ液を塗る
■ アイロンで乾かす
乾かし終わったばかりのコットン紙。
■ できた紙を本に挟んで平らにする
平らになった紙を透かしてみると,コットン繊維の粗密が目立ちません。加えて乾きムラもなし! 8割方うまくいったのでは? 長い道のりでした。やっと,やっと! やれやれ。ほっ!
なお,②の自然乾燥でつくった紙もまた実用性から見ると,なんとか耐えられるものとなりました。コットンの場合は,水切りを自然任せにするより,水切り工程でできるだけ圧を加えて水気を減らしておくのがより望ましいとわかりました。
今回の試みではっきりしてきたのは「離解・打解・叩解工程では,ネリを加えてからミキサーで撹拌すると繊維の塊り(ダマ)が減る」「繊維の塊りがほどほどに残っていたとしても,それらが均一に散らばる結果,紙質がそんなに落ちることはない」という点です。遠回りしてきた分,大きな発見に思えます。
ところで,プロの職人さんに会ったときこうお尋ねしたいです。「大量のコットン繊維をどうやって離解するのですか」「紙料をつくったとき,繊維はほんとうに一本一本がばらけているのですか」「腰の強いコットン紙を漉くコツはなんですか」「……」。問題意識を持ち続けようと思います。