


〈アウターゾーン〉
2月のある寒い夜。
英さん。は、仙台の駅地下のベンチに座ってメールチェックなどをしていた。
そしたら、わりと身なりのいい老紳士?が私の隣に座ってきた。
やっと歩いて来た感じで、肩で息をしていた。
足も不自由そうだった。
しばらくしたら、私に話かけてきた。
老「あのー、ちょっとお願いがあるのですが。」
英「どうしました?」
老「実はそこの階段で転びましてね。」
英「そりゃ大変だ。怪我でもしましたか。」
老「いや、大したことありませんが、その時、財布を落としてしまったようなのです。」
英「そりゃ災難でしたね。」
老「すぐ戻って、周りの人も一緒に探してくれたのですが、どうしても見つかりません。」
英「警察には?」
老「届けても現金だから、多分出ないでしょう。それでお願いが。」
・・・と言ってポケットから小さな袋を取り出す。
老「実は私、東京の宝石商で、今日はそこのホテルで展示会をやりました。」
英「はあ?」
老「新幹線で帰るにも、ホテルに泊まるにも、お金がありません。それでこの売れ残った宝石を、いくらかでも買っていただきたいのですが。」
英「(そう来たか)お気の毒ですが、私はほとんど現金を持ち歩かないのですよ。」
老「失礼ですがいくらお持ちですか。」
英「小銭で千円位でしょうか。」
老「(驚いた様子だが、気を落ち着けて)千円でもいいですから、どれか1つ買ってくれませんか。」
・・・と言って袋の中身を出そうとする。
英「(まあまあと押し止めて)展示会をやるような宝石を投げ売りするものではありませんよ。」
老「だめでしょうか。」
英「それよりも、警察に行ってみましょう。仙台の人はみんな優しくて正直だから、きっと財布は届いてますよ。」
老「(困った顔で声出ず)」
英「怪我をなさっているようですから、一緒に行ってあげましょう。さあ。」
・・・と言って手を差し出して立ち上がる英さん。
老「いえ、そこまでしていただかなくても・・・すみませんでした。」
英「では、お気をつけて。」
と言って去る英さん。
老紳士とミドル紳士の美しい会話であった。
4枚目の赤い花が似合うような、きちんとした身なりの老紳士であった。
とうびんと。
しかし、あとで思ったら、あの人は・・・ひょっとして神様・・・?
千円で宝石を買ってあげたら「金の斧」がもらえたかもしれない。
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