地球にあしあと

地球の色々なところに足跡をつけてきました。

カミーノにあしあと 19

2010年10月02日 | Weblog
【19日目】7/14(水) Carrión de los Condes → Terradillos de Templarios
アルベルゲのキッチンで手持ちのクッキーやフルーツ、ヨーグルトなどの朝食。
今日は早めの6:45に気持ちの良いスタートを切る。
ひまわり畑と朝焼けがとても奇麗だった




今日はCarrión de los CondesからCaldadilla de la Cuezaまでの17.5kmは、バルなど一切ないので前日に購入しておいた水と食料が頼りとなる。


暑さを覚悟していたメセタだが、風が強く寒い。
先日ドイツ人女性が言ってた「メセタは意外と涼しかった」と言うのは本当だった。

そしてこれまた覚悟していた「17.5kmにわたり何も出てこないので十分な水と食料を!」というガイドブックの注意書きは、出発してから5~6km先で突然現れた移動式カフェにより見事に裏切られた。

アルベルゲで朝ごはんを食べてきたので何も欲しくないが、スィナがカフェイン中毒でコーヒーを欲しがるので、早くも休憩していくことにした。
コーヒーの紙コップも押さえていないと飛ばされてしまうぐらい、強風だ。


休憩を終え、さらに先へと進む。
風が強すぎて、常に動いていないと寒いぐらいだ。
涼しい分、私は調子よく歩いていたが、スィナは昨夜ほとんど眠れなかったようで不調。




寒いので全く喉が渇かず、背中に背負った水が重くのしかかる。
巡礼者はみな、この今日の行程に戦々恐々としており、前日にこぞって食料や水を購入していたのに、きっとみんな拍子抜けだろう。


さらに先へ進むと、休憩所らしきものも建設中だった。
年々カミーノの環境は整えられていっており、昔と比べると格段に便利になっているのだろう。


周りは麦畑で大きな木陰はないので、ちょっとした茂みの陰で休憩。
昨日のアルベルゲで一緒だった韓国人親子も一緒に休憩する。
彼らはちゃんとレジャーシートまで持参してるからすごい。
「ここに座ってもいいよ」と言ってくれたけど、私とスィナは自分たちのリュックの上に腰かける。

カミーノを韓国人らしき若い女の子が颯爽と通り過ぎて行く。
すごいな、あのペースで歩いてたら7月25日の聖ヤコブの日にSantiagoに到着できるんじゃないか?

キリスト12使徒の1人である聖ヤコブの誕生日が7月25日。
この日が日曜日になる年は「聖年」と呼ばれ、今年がその聖年にあたる。
聖年の年にSantiagoに巡礼すると全ての罪が赦されるということもあり、いつも以上に多くの巡礼者で混雑し、多くのカトリック信者は7月25日のSantiago入りを目指す。
聖年は11、6、5、6年の周期で訪れ、今年の後は11年後ということもあり、今年はいつもに増して巡礼者が多い。


韓国人のマリア&ピーター親子と抜きつ抜かれつしつつ、いつ終わるともしれないメセタの大地をただひたすらに歩く。




この区間、まったくトイレもないが意外と大丈夫だった。
風が強いのでかいた汗はすぐに乾いてしまうのだろう。


延々と続く麦畑を歩き切り、ようやくCaldadilla de la Cuezaの村が見え始めた時は嬉しかった。
ひとまず教会を訪れてみたが、ドアは閉まっていた。
巡礼者の多くが不満をもらすことの一つに「なんでスペインの教会はいつもいつも閉まってるんだ?」ということである。
教会と言えばいつでも誰でも訪れてお祈りができるように開かれたイメージがあるけど。
カミーノ上で訪れる教会は小さな村や町がほとんどなので、都会の教会のように常に開いているわけではないのかな?
ちなみにスペインの教会は月曜日は確実に閉まっている。


教会も閉まってるし、アルベルゲのバルで休憩しよう!
この村のアルベルゲにはプールがあり、先に到着した巡礼者が水の中でくつろいでいた。
今日はちょっと水に入るには肌寒いかもしれないけど。
魅力的な環境ではあるが、私たちは今日はもう少し先まで行きたいので、村を後にする。


さらに歩いて15:40にTerradillos de Templariosへ到着。
名前から察する通り、テンプル騎士団と関係のある村らしい。
ここは人口100人程度の小さな村だがアルベルゲは私営が2軒ある。

まず最初に、国道沿いにえらく奇麗なアルベルゲが出てきた。
広大な敷地に立派な平屋建ての建物がある。
ちょっと様子を見に玄関先まで行ってみる。

奇麗で快適そうなんだけど、村の中心部はもっと先にあるのでは?と思っていると、通りがかったマリア&ピーター親子が「そこは村から少し外れてるからよくないよ」と教えてくれた。
まだ13歳なのに頼りになるわあ、ピーター。

ガイドブックを持ったピーターの誘導で、もう一つのアルベルゲを目指す。
しばらく行くと看板が出てきた。

ピーターが「Comidaって何?」と聞いてきた。
スペイン語はあまり知らないようだ。
私とスィナで「Comidaは食事のこと。ここで食事ができるっていう意味よ。ちなみにBebidaは飲み物。大抵Comida y Bebidaって書いてあるから、そこで飲食できるっていう意味よ。重要だから覚えといて!」と教える。
食べ物関係はこのおばさん2人組に任せなさい

2軒目のアルベルゲも庭があり、普通の家っぽい建物でなかなか良さそうな環境。
早速ここに決めて手続きをする。

村の中心部に来てみたものの、周りにこれと言った店もなく、夕食は自動的にアルベルゲで摂ることになる。
ディナーは8ユーロ。


マリア・ピーター親子と共に通された2階の部屋は4人部屋。
しかも2段ベッドではなく普通のベッドが4台置かれている。
普通に民家の寝室っぽい。


洗濯は庭にある井戸の井戸水を使用。
奥に並んで洗濯しているのが、マリア&ピーター親子。






井戸水は冷たいので、マリアはバスルームからお湯を汲んで来ていた。
そういえば韓国人はお湯で洗濯したがるよね。


洗濯後、日課となっている村の散策。
地元の人に道を聞き、丘の上にあるサンペドロ教会へ。

他の教会同様、この教会の塔の上にもコウノトリが巣を作っていた。




教会の近くまで行くと、クラリネットの音色が聞こえる。
あれ?これってどこかの家から聞こえてる?
それとも近くにジーナがいる?


教会の前にたどり着いてみると、そこにはジーナがいてクラリネットの練習をしていた。
その前ではキアラが日記を書いている。




穏やかな時間が流れている。



今日はキアラの友達がイタリアから来るということで、キアラはバスに乗って後からやってきた。
たまたまだけど、今日のアルベルゲにはイタリア人が多いようだ。


一旦アルベルゲに戻り、ディナーまでの時間を思い思いに過ごす。
詮索好きのスィナが「マリアから色々聞き出そうとしたけど、彼女あまり自分のことを話したがらないの。何かわけありなのかしら?」と言う。
さらには「ピーターはカナダで生まれたけど、他に娘が2人いて、その子たちはコリアで生まれたってことまでは聞き出せたけど」と。
そこまで聞き出したら十分じゃないか?

う~ん、確かにマリアはちょっと影がある感じ。
しかもあの年頃の男の子がお母さんと一緒に巡礼してるって、不自然というか珍しいというか。
そして2人はよく手をつないで歩いている。

最初に彼らを見かけた日、スィナと道端で休憩をしていたら、いつものごとくスィナが通りがかりの巡礼者に声をかけた。
見た目通り相手はドイツ人だった…。
そしてまたドイツ語で延々と世間話が始まり、私は隣に座ってイライラしていた。
その時そのドイツ人が「実は手をつないで歩いている日本人親子がいるんだよ」と言ってデジカメの画像を見せてくれた。
ただ、その写真は後ろ姿を撮ったものだったので、国籍は判別できなかった。

へえ、そんな日本人親子いるのかと思っているところへ、ちょうどその2人が通りがかった。

…。
明らかに日本人じゃねーよ

その時マリアはどちらかというとモンゴル人っぽく見え、韓国人とは分からなかったけど、少なくとも絶対日本人じゃないことは分かった。
それが後でカナダ在住の韓国人だと判明したんだけど。


さて、この2人、スィナがそんなことを言い出すので、「あんまり詮索しない方がいいよ。ひょっとして脱北者ってことだって考えられるんだから」と釘を刺しておいた。
カナダから来たんなら携帯電話の一つも持ってそうなものなのに、彼らは持っていなかったのもちょっと気になったし。
あと、ものすごく敬虔なクリスチャンらしくて、2人で真剣にお祈りしてるのも見たし。

ちなみにカミーノでは何人もの韓国人に会ったが、ある時スィナに「どこから来たの?」と聞かれ、「コリア」と答えた子が、なんとスィナからさらに「北?南?」と質問されていた。
思いがけない質問に一瞬絶句した後、「南です」と答えていたけど、そんな質問ありえん

後でスィナに「ねえ、こういうところに旅行に来てるのは北朝鮮人ってことはほぼあり得ないから、わざわざ聞かない方がいいよ」と言うと、「あら、そうなの?でも分からないじゃない」と悪びれもせず。
「いやいや、北朝鮮の人はそうそう自由に旅行なんてできないから、カミーノで会うコリアンはほぼ100%韓国人だよ」と伝えると、「でもワールドカップとかに北朝鮮も出てるじゃない」と。

そりゃそうだけど、それとこれとは事情が違うよ…
う~ん、やはりヨーロッパの人にとって東アジア事情は遠いことなんだろうかね。
アジアでそんな発言したら笑われるけど。

「とにかく、北か南かは聞かない!彼らは南から来てるから!分かった?!」と言い聞かせておいた。
全く、スィナの発言にはヒヤヒヤさせられるよ。
この後さらに爆弾発言連発とは思いもしなかった。



時間がきて、アルベルゲの食堂でディナー
私はまだ胃の調子が悪いので先に胃薬を飲んでおく。

同じ食卓を囲んだのは、イタリアから来た夫婦、もう1人イタリア人、そしてノルウェー人のギーティ。

イタリア人3人はあまり英語が得意でないこともあり、最初はさほど会話も進まずややぎこちない感じでディナーがスタートする。
だけど場を盛り上げたいし、いつもリーダーシップを取りたがっているスィナが次々と話題を持ち出したり、相手に質問したりする。

スィナは常々「私は巡礼するにあたり、家にすべて置いてきた。夫も仕事も家事も全部置いて」と語っているが、私から見れば全部は置いてきてないと思う。
彼女はブティックを経営している関係上、人を雇ったり指導したり、顧客の様子に気を配ったりしているはず。
それがそっくりそのまま巡礼路でも表れていて、誰かに対して説教口調になったり、面接のように根掘り葉掘り相手のことを聞きだしたり、あるいはお客さんを招いたパーティーの主催者のように、その場にいる全員に声をかけ、全てを把握しようとしている。

「カミーノのBest momentとWorst momentは何?」
これはしょっちゅうスィナがディナーテーブルで持ち出す話題で、正直言ってうざったい。
下手したら「毎日その日のBest momentとWorst momentを報告しあいましょうよ」とまで言ってくる

ほとんどの巡礼者はBest momentとして北スペインの素晴らしい景色や人との出会いを挙げる。
Worst momentとしてイタリア人夫妻が挙げたのは、「カミーノにゴミが多いこと」。

確かにそうだ。
巡礼者のマナーはお世辞にも良いとは言えず、ペットボトルやら絆創膏やらティッシュペーパーやら、ありとあらゆるゴミがカミーノ上に落ちている。
そして意外と犯人がスペイン人だったりもする。
アメリカ人のキムは、スペイン人巡礼者が何の躊躇もなくお菓子の袋をポイっと道に捨てるところを目撃している。
もちろんスペイン人以外にも犯人はたくさんいるだろうけど。


そうこう話をしているうちに、イタリア人の奥さんが「夫の歩くペースが早くてついて行くのが大変なのよ」と語った。
するとスィナがすかさず、「それはあなた自身のカミーノを歩いてないってことじゃない」と言い放った。

おい
何を失礼なことを言い出すんだ

案の定、一瞬その場の空気が固まる。

さらに得意げにスィナが続ける。
「私はひとりでカミーノを歩きたいわ。自分のペースで歩けるし」

おい
あんたほぼ最初からずーっと私と一緒に歩いてるやん!
お互いその日の調子の善し悪しが違うから、相手のペースに合わせたりしてるやん!
よくも抜けしゃあしゃあとそんなこと言えるもんだ…。

言われた方も負けじと「でも私たちは夫婦で共にこのカミーノを歩むことに決めてるから、それでいいの」と答えた。
そうだそうだ~、がんばれ~


食後、洗面所で歯を磨いているとスィナが「はぁ~、今日のディナーは最初話が盛り上がらなくてどうなることかと思ったわ。幸い後半はなんとか盛り上がったけどね」と。

おい
あんたKY発言して場を盛り下げとったがな


洗面所から出ると階段下のソファにマリア&ピーター親子がいた。
ピーターはお母さんの膝に座り、仲良くくつろいでいた。
う~ん、やっぱり13歳にしてはおぼこいな。
ますますワケアリっぽく見えてしまう。

アルベルゲの庭では、自由気ままに旅をするオランダ人の若者がギターを奏でていた。
スィナがジーナに「クラリネットとコラボしなさいよ」と言ったが、ジーナはやんわりと拒否した。
ほんとに余計なおせっかいばっかり言うな、スィナは。


スィナの爆弾発言は夜にも続いた。
夜寝る前になってスィナがいたずらっぽくピーターに「ねえ、私たちがすっごいイビキをかくって知ってた?」と言いだした。
おいおい、一体何を言い出すんや

ピーターが「え?知らないよ」と答えると、「今までいろんなアルベルゲで大イビキをかく人たちにはほんとに困らされたわ。私たちは今のところまだそういうことしてないけどね」と。

おいおい、スィナよ、あんたしょっちゅうイビキかいてるよ

他の巡礼者と話をする時、犬のオシッコ事件や恐ろしく厳しいアルベルゲの話題の他に、スィナがよく持ち出すのがイビキ話。
ウルフマンに始まり、「昨夜は誰かが一晩中イビキをかいていたから、全く眠れなかったわ」などという話題。
それを聞くたびに私は内心「あんたも時々イビキかいてんのに、ここでそんな話をして今晩自分がイビキかいたら恥かくよ」と思いつつ、さすがにその場で「あんたもかいてるよ」とは言えずにいた。
そして、いつかはスィナに教えてあげなきゃと思いつつ、なかなかタイミングがつかめずにいた。

そんなことも知らず、自分はイビキをかかないと思いこんで、ピーター相手にそんな話題を振るなんて。

そう言い終わった後、ベッドに横になったスィナは、昨夜眠れず疲れていたせいもあってか、ものの1分でイビキをかきはじめた
ピーターはまだ起きているので、絶対聞こえているはず。

もう、いたたまれない気持ちになった

普通に考えて、イビキをかいているかどうかは本人には分からないので、もしかしたら自分もかいている時があるのではないかと思い、そういう発言は控えめにするんじゃないだろうか?
じゃないとあんまり言い過ぎて自分がかいていたら大恥だ。
そういうこと、全然考えないのかな、スィナは?

なんか、私の責任でもないのに、いたたまれない気持ちで眠りにつく。
ごめんよ、ピーター…








本日の歩行距離:約27km
本日の歩数:41,429歩