地球にあしあと

地球の色々なところに足跡をつけてきました。

カミーノにあしあと 20

2010年10月06日 | Weblog
【20日目】7/15(木) Terradillos de Templarios → Calzadilla de los Hermanillos
本日は5:30に起床。
暑いので早めにスタートして早めに歩き終わりたいもんだ。

マリアとピーターはさっさと起きて洗面所に行ったので、今がチャンスと思いスィナに「ねえ、あんた昨夜横になるなりイビキかいてたよ」と告げた。
すると驚いた様子も悪びれた様子もなく、「夫にもよく言われるけど、自分では分からないもん」と答えた。

え?普段から言われてるんやん、夫にも。
それなのにあの発言の数々?

さらには「私がイビキかいてたら、何か物を投げつけてよ」と。
なんでやねん。


しばらくしてピーターが部屋に戻ってきた。
すると、スィナがよりによってピーターに「ねえ、私昨夜イビキかいてた?」と確認する。
聞かれたピーターも内心困ったと思うが、さらりと ”I don’t think so.” と答えた。
エライ!
さすがカナダの男の子、女性に対する気遣いっちゅうもんを知ってるね

13歳のいたいけな子供に気を遣わせておきながら、さらにしつこくスィナが “You don’t think so or you don’t know?” とたたみかける。
んもう、しつこい!
もうその辺でやめとけよ!

それでもピーターは、「昨夜はぐっすり眠ってたから分からない」と答え、決してスィナのイビキを聞いたとは言わなかった。
本当に良くできたお子さんだ

そこでやめておけばいいのに、さらにスィナは「じゃあマリアにも聞いてみるわ」とのたまった。
あんたほんっとにちっとも反省してないね

もう、本当にいたたまれなくなり、その場を離れて洗面所へ向かう。
すると後からスィナが来て、歯を磨きながら、「さっきマリアにも聞いてみたけど、彼女もイビキのことは知らないって言ってたわ。逆にピーターがお母さんのイビキを非難してたわ(笑)」と。

お・ま・え・と・い・う・や・つ・は~~~
私の堪忍袋の緒も切れるで。

「彼ら、気を使ってるんだと思う?」と聞いてきたので、「当たり前やん」と冷たく突き放しておいた。
あんた56歳、ピーター13歳。
立場を考えろ。


まだ薄暗い中、アルベルゲの庭にある自動販売機でコーヒーを買い、クッキーとバナナの朝食を済ませ、6:45にスタート。
マリア&ピーターはすでに出発済み。

今日はずっと平坦な道を進み、León県に入る。





いつもより早めに出発したので、朝焼けが奇麗だった。

朝食を摂ってから出発したにも関わらず、最初に出てきたバルでまた朝食休憩。
いつもはコーヒーとボカディーヨだけど、バルのカウンターにクロワッサンがあったのでたまにはクロワッサンをと思い注文すると、なぜかスィナが大げさに驚く。

え?別にいいやん、クロワッサン食べたって。
大げさに驚いておきながら、自分もまねしてクロワッサンを注文してた。
なんなんだ一体、この人は


ところで昨日からスィナにとうとう「共同財布」なるものを導入されてしまった。
常に一緒にいるので、アルベルゲの宿泊代金や夕食代を支払う時も一緒、食べ物を購入しても基本的に2人で分けている。
小銭がなかったりしてどちらかが立て替え払いをすることもある。
最初の数日はスィナが几帳面にいちいち支出をメモっていて、細かいお金まで支払ってきた。
別におおざっぱでいいのに、几帳面な人だな~と思っていたら、すぐにメモしなくなり、「どっちがどっちにいくら借りがあるのか分からない!」とパニクリ出した。
だからきっちり割り勘しなくてもいいってば…

以前、カミーノを歩きながらスィナが「うちは3人姉妹で1つ口座を持っていて、そこにみんなでお金を入れておくと、しっかり者の姉が管理してくれて、父親の誕生日プレゼントを買う時とか、何か共同で買い物が必要な時はそこからお金を出して買ってくれるの。とっても便利よ」と言っていた。

ちょっと嫌な予感がしたのでその時は特にコメントせず、「ふ~ん、そうなんだ」と返しておいたけど、ついにこの時が来たか…。
「うちの姉妹がやってるように、共同のお財布を作ってそこからアルベルゲなんかの支払いをしましょうよ」と提案されてしまった。

う~ん、確かに便利っちゃあ便利だけど…。

仕方なく、手持ちのジップロックを仮の共同財布とし、そこへ20ユーロずつ入れた。
今朝のクロワッサンとコーヒー代金はそこから支出。

このシステムの嫌なところは、別れたくなった時に清算しないといけないことと、常に財布を持っている方が支払いと管理をさせられること。
最初のうちは「私、トイレ行ってくるから払っといて」とスィナに財布を渡し、そのままスィナにしばらく持たせる=支払いさせる手段を取ったりもしてたけど、

が、だんだんスィナの方も「あなたが持っといて」と財布を押しつけるようになり、結構な割合で私が財布の管理をする羽目となった。
してやられたぜ、おばちゃんに

しかし、毎日の行程も任せ、支払いも任せ、あなた人についていくだけのカミーノになってますけど?
確か「私のカミーノ」とか「インディペンデント」とか言ってませんでしたっけ?


さて、バルで朝食を摂っていると、昨日のオランダ人のナターシャと義母が到着した。
ナターシャは足のマメに苦しんでいた。
義母に薄いソックスを履けと言われてそうしてみたが、やっぱり汗でぐっしょりになって靴ずれするので、分厚いソックスに履きかえるということだ。
そらそうだろ。
長距離なんでトレッキング用のしっかりしたソックスの方がいいと思うよ。
義母のアドバイスが良く分からん。

しばらくナターシャらとおしゃべりし、バルを後にする。
が、次の大きな町Sahagúnに到着する少し手前になってスィナが「バルにサングラスを忘れてきた!」と。

実はスィナは本当に注意力散漫で、休憩場所やアルベルゲに必ずと言っていいほど物を忘れる。
毎回私がチェックして、「スィナ、ストック忘れてるよ!」「スィナ、帽子忘れてるよ!」と教えてあげている。
もう、財布の件といい、行程確認の件といい、忘れ物チェックの件といい、なんかオカンを旅行に連れてきたみたいになってるんですけど、私
私のカミーノって一体…?
いやいや、深く考えるまい。
これも天からのお導き

サングラスは「きっとナターシャが気づいて持ってきてくれるに違いない」と希望的観測をし、しばらく休憩して待っていたけどナターシャは通らなかった。
別のルートもあるみたいなので、そっちを通ったかな?

スィナは遠くに誰かが見えるたびに「あれかな?ナターシャ」と期待するけど、その後すぐに「違うわね、あんなに細くないわね」と、親切を期待してるくせに悪口めいたことを言う


民家や工場の間を通り、線路を渡ってSahagúnの町へ入る。
入ってすぐにとある民家の周りに警察の黄色いテープが張られているのが見えた。
これって、殺人事件とかがあったってことじゃ…?

さすがに大きな町は治安悪そうだわ。
と言っても人口は3,000人ぐらいのもんらしいけど。

しばらく進むとアルベルゲがあり、巡礼者の人形が立っていた。





回り込んだところにある教会の前で、さくらんぼを食べているジーナを発見
今日はゆっくりとSahagúnの博物館ツアーなどをするそうだ。
手には町の地図を持っている。

私たちは教会だけ見て、そのまま次へ進むことにした。
カミーノに出かける前は、主要な町で美術館や博物館を見たり、連泊して観光とかするのかなと思っていたけど、実際に歩き始めてみると、Santiagoに向けて歩くことが最大の目的となっており、特に観光する気が起きなかった。
これが本当の巡礼だろうか。

町中のおしゃれなバルのテラスにナターシャがいた。
近づいていくと「ほら、サングラス置いてあったわよ」と。
よかったよね、スィナ。
こうやって巡礼者同士助け合って進んでいくのね。

バルにはオーストリアから来たエリザベスもおり、色々と情報交換。
またまたコーヒーを飲んだりお菓子を食べて時間を過ごす。

Sahagúnから4~5km進んだところでカミーノが二手に分かれるので、そこまでエリザベスと一緒に歩く。




エリザベスは学校の先生をしており、半年ほど前に突然夫が亡くなったので、追悼の意味を込めて巡礼している。
パートナーを亡くしたことが巡礼のきっかけになっている人は多い。

エリザベスと私で時々地図を確認しながら進む。
エリザベスは左に折れて国道沿いのルートを進むと言い、私とスィナは右手に折れて自然の道を進むことにする。

分かれ道部分は道がいくつか交差しており、分かりにくくなっていた。
でもなんとか矢印を見つけ、エリザベスが「じゃあ私はこっちに」と進み始めると、なぜかスィナがその後をついていく。

「お~い、スィナよ。あんたどっちへ行くの?」と聞くと、「え?こっちじゃなかったの?」と、全く理解していなかった。
エリザベスも「あなたあっちのルート行くって言ってたのに、ついてくるからおかしいわねと思ったのよ」と。

あれだけ私とエリザベスが地図を手にあーでもない、こーでもないと話をして、「左に向かう矢印が国道沿いね。じゃあ私はこっちの矢印をフォローすればいいのね」とか話していたのに、スィナはそばにいながら全く話を聞いてない
そして全く何も考えていない。
もう、ほんとに人任せの旅行に来たオカン状態…


エリザベスに別れを告げて右方向へ歩き出してから約9km、16:00にCalzadilla de los Hermanillosという村に到着。
公営のアルベルゲがあることが分かっていたので、そこを目指していたが、村に入ってすぐ右手に私営のB&B兼アルベルゲみたいなのが出てきた。

受付で聞いてみると、アルベルゲタイプの4人部屋で1人15ユーロの部屋か、もしくは2人用の個室で35ユーロというのがあるとのこと。
どっちでもいいかなと思ったけど、スィナが「なるべく経済的にしたい」というので、15ユーロの部屋にすることに。

ところがスィナが「35ユーロって1人頭の料金かな?それとも1部屋あたりかな?」と言いだした。
…。
普通ヨーロッパでは1部屋当たりの値段設定だろ。
あんたヨーロッパに住んでるだろ

すると「じゃあやっぱり個室にしない?1人たったの17.5ユーロだし、それに今日は歩き始めてちょうど20日目だからお祝いに贅沢しましょうよ」と言いだした。
私はまったくこだわりはないので、「いいよ」と答え35ユーロの個室に変更してもらった。


部屋はホテルタイプになっていて、タオルまである
一気にテンションがあがる2人。




いやあ、ずっとアルベルゲだったけど、久しぶりのホテルもいいねえ。
バスルームにシャンプーなどのアメニティはないけど、不特定多数で共用じゃなくて2人だけの個室なのでセレブ感がある(この程度のことで…。)

2段ベッドじゃないのも嬉しいし、シーツは奇麗だし、自分のタオル使わなくていいし、夢のような空間。
そして周りのことを気にしなくてもいいので、荷物は散らかし放題!

いつもは必要最低限のものをリュックから取り出し、翌日の出発のことも考えて常に半分パッキングしている状態だけど、今日は特別。
リュックから引っ張り出した服をクローゼットの棚にバーっと広げて置く。

バスルームで久しぶりにちゃんと鏡を見たら、首が変な風に日焼けしていた…
帽子被って手ぬぐいを首に巻いてても、隙間から変に日焼けするんだ。
明日からは暑くても髪の毛を下ろしてガードしよう。

そして痩せたのかどうか良く分からない。
明らかにズボンのウエスト部分はゆるくなってるけど、全体的に体型がガッチリしてきた…?


シャワーと洗濯を終え、表に出てみると、テラスで宿の人や地元の人たちがくつろいでいた。
キョロキョロしてると、「ツレはあっちだよ」と教えてくれた。
もうすっかりスィナと一緒だと認識されているらしい。

飲み物で栄えある第20日目を祝い、それから日課の散策へ。
公営アルベルゲや教会、お店などをチェックする。

ふと見ると、家と路上駐車してある車の間の歩道に1人おっちゃんが横たわっている。
暑いからってそんなとこで寝る
しつこいようだが、スペインは途上国っぽい。

スィナに「ほら見て、あそこ」と指さすと、なぜかスタスタとその寝ているオヤジの方へ向かって歩いて行く。
何をする気かと唖然として見ていたら、歩道に寝ているオヤジのすぐ横を”Hola~”と挨拶しながら通り過ぎた。

「なんでわざわざあそこ通ったの?」と聞くと、「知ってる巡礼者かと間違えた」とのこと。
普通、巡礼者はあんなとこに寝転がらんだろう

ついでだから公開しておくが、スィナは勘違いも甚だしい。
人違いもしょっちゅうで、全く関係ない人にフレンドリーに挨拶して、その後に「間違えたわ」ということは良くある話。
さらには、他の巡礼者に関する情報も勝手に頭の中で内容が置き換わっていることもしょっちゅうだ。
例えばスィナが誰かに「デンマークから来た親子がいてね…」とか話し出すと、「はは~ん、あの人たちのことだな」とすぐ分かるので、すかさず「あれは親子じゃなくて友人同士だよ」と訂正してあげると、「あら、そうだったわね」と言いつつまた次も同じことを言っている。
さらには「デンマーク人の年の離れたカップルがいてね…」と、さらに記憶が混乱したことを言い出すので、いちいち「だからあれ、友人同士だってば」と訂正してあげる。
他の話題も勝手に脚色されていたりするから甚だ恐ろしい。


さて、散策してるとノルウェー人のギーティに遭遇。
彼女は公営アルベルゲの方に泊まってるらしいが、なんと他に誰も宿泊者がおらずたったの1人だそうだ。
そ、それもちょっと怖いな

私たちは宿泊している宿でディナーするので、ギーティも誘って一緒に戻ってきた。
テラスにはオランダ人のカーラがおり、スィナが嬉しそうにオランダ語で話し出す。
カーラはちょっとシャロン・ストーンに似た冷たい感じの美女。
でも中身はかなりスピリチュアルな人らしい。
話し方も優雅な感じ。
何度かに分けてカミーノを歩いており、今回が最後。
Leónでゴールを迎えるそうだ。

同じオランダ語でもスィナの話すオランダ語とカーラの話すオランダ語はかなり違って聞こえる。
そのことを指摘すると、確かに出身地が違うので発音が違うらしく、結構感心された。
いや、耳に聞こえる音の違いは明らかですけど。

ギーティと私はまだ胃腸が本調子じゃないので、ほとんどディナーを食べられなかった。
ギーティは昨日大丈夫そうだったので普通に食べてみたら、今日はやっぱり調子が悪いとのこと。
なんでも同じ時期に5人の巡礼者がお腹を壊したらしく、原因は水じゃないかとも言われている。
今から思うに、ちょうど体に疲労が蓄積されてきた頃で、ちょっとしたことで体調を崩しやすくなる時期なんじゃないかな。

スィナが昨夜のディナーでの話をカーラにする。
そして「イタリア人の奥さんに自分のカミーノを歩いていないって言ったら、ちょっとその場の空気が固まったわよね~」と。
なんだ、自覚してたのか。

それを受けてギーティも「そうね。ちょっと微妙な空気になったわね」と答えた。
やっぱみんな思ってたんだ、それは


ギーティが持っているクレデンシャルはノルウェーで発行されたものなので、デザインが違う。
また、ノルウェーにもカミーノがあり、そのルートが書かれていて興味深い。
私もいつかノルウェーのカミーノにも挑戦してみたいと思う。


結局今日のアルベルゲ兼B&Bに泊まっているのは私たちとカーラ、そしてスペイン人のサンティアゴというめでたい名前の自転車青年だけらしかった。
そしてギーティは公営アルベルゲにたった1人。
スィナが「他人のイビキに悩まされなくていいわよね(笑)」と。

あんたまだしつこくイビキネタ出すか…



気がつけば私のカミーノ日記は「オランダ人のおばちゃん観察日記」になってるよ



この日は清潔なシーツに包まれ、ぐっすりと就寝





本日の歩行距離:約27km
本日の歩数:41,314歩