地球にあしあと

地球の色々なところに足跡をつけてきました。

カミーノにあしあと 23

2010年10月18日 | Weblog
【23日目】7/18(日) León → Villadangos del Páramo
朝、アルベルゲ内にある公衆電話から自宅への電話を試みるも、なぜか電話がかからない。
国際電話のかけ方は合っているはずなのに。
何度か試したけどダメで、最終的には公衆電話が私の貴重な1ユーロを食ってしまった。
スペイン、嫌い…。

釈然としないまま、8:00にアルベルゲを出発。
外に出ても黄色い矢印などが見つからず、Leónからの出方が分からない。
私は、「町の中心部のカテドラルかアルベルゲまで出ようよ。そしたら矢印あるから」と提案したが、スィナは「もう町の中心部は見たし、通りたくない」と言う。

見たとか見てないとかの問題じゃないんだよ。
一番効率よくカミーノを歩くには、確実に矢印が見つかる場所を通ればいいじゃない。

スィナは地図も見ないくせに、通常ルートを拒否し、道行く人に尋ねるがルートがイマイチ分からない。
朝っぱらから険悪ムードで歩く。

私がさらに、「分かった、川沿いを上がって行こう!」と提案して川沿いに歩くも、スィナは相変わらず自分で地図など確認しないくせに懐疑的らしく、「ちょっと上にあがって人に聞いてくるわ」と土手から上にあがってしまった。

だ・か・ら~、私が持ってる地図にはちゃんとカミーノに出るルートが書いてあるから、川沿いに行けばそのうちカミーノにぶつかるんだよ!
カミーノはパラドールの前を通ってるから、絶対見落としたりしないし。
地図にある通り、川の左側にはバスターミナルや駅の標識も出てるし、方角的に間違ってないんだから。

スィナのことは無視して私はひたすら黙々と土手を歩く。
朝からイライラが募って、本当に気分が悪い。

ずいぶん歩いてそろそろ土手から上にあがろうという頃、振り返るとスィナはずいぶん遠くから歩いてくる。
不機嫌に彼女の到着を待ち、お互い言葉少なに歩く。


カミーノに至る1つ手前の橋を韓国人と思われる青年が通りがかる。
自転車で台車のようなものを引っ張っている。

案の定、彼は私を韓国人と判断したらしく、韓国語で何か呼びかけてきた。
私が英語で「私、韓国人じゃないです」と返事したけど、英語でのそういう回答は予想してなかったらしい彼はそれが聞きとれず、何度も「え?」と聞き返し、私は何度も「私は韓国人ではありません!」と繰り返した。

ようやく事情を察してくれ、「ああ、日本人か。ところでカミーノはどっち?」と聞かれたので、「方角的には左方面だよ」と教えてあげたのに、なぜか彼はそのまま右方面に去って行った…。
近くで見ていたスィナが「でたらめ教えたの?」って、そんなわけないやん

後で他の巡礼者も口々に言ってたが、Leónの出方が本当に分かりづらい。
ほとんどの人がウロウロ迷ってなかなかLeónから出られなかったそうだ。


さて、さらに川沿いを北上するとようやくパラドールに到達!



Leónのパラドールは、元々サン・マルコス修道院だったらしい。
ガイドブックによると、12世紀までは巡礼者宿であり、以降はサンティアゴ騎士団の本部となっていたらしい。
外観がすばらしい。

と、パラドールの近くに佇む人を見てびっくり。
ハビエルじゃない!

思いがけない再会を喜び抱き合う。
しかもハビエルは私の名前をちゃんと覚えていた。
日本人で最初に署名した甲斐があったわ。

「グリンゴはどこ?」と聞くと、「川辺で草を食べてるよ」とのこと。
ハビエルはグリンゴとここで野宿したらしい。

さすがにグリンゴがいる場所まではかなり下って行かなければいけないので、会いに行くのは諦め、橋の上から「グリンゴ~!」と呼び掛けたけど、聞こえたかな?
グリンゴ、草を食べるのに夢中。


ハビエルとグリンゴに会ったおかげで私とスィナの険悪ムードも和らぎ、その後は順調に歩く。
Leónのすそ野は広く、歩けど歩けど国道や商業地帯。

6~7km歩いてたどり着いたLa Virgen del Caminoという町のホテルのバルで最初の休憩。
携帯を見ると相変わらず圏外。
ふと思いついて一旦電源を切り、再度入れてみたけど、やっぱり圏外。

しょうがないなあ、と思っている矢先に突然携帯がブルブルと震えだした。
あ、つながった!

開いてみると5通もメールが。
全部、フィンランドにいる友人のパイヴィからのものだった。
SMSなので文字数が限られており、1通のメールが5通に分割されていたのだ。

スペインから出したポストカードが早くも届いたらしい。
さすが、ヨーロッパだから近いね。
「巡礼の話を聞きたいから、帰国後に電話で話したい。いつ帰るの?」って、私あと20日以上日本には帰りませんが…。

何故か未だに母からの返信はない。
どうなってるんですか、お母さん?
せっかく携帯がつながったので、母と姉に久しぶりにメールしておいた。


店を出ると、道路を挟んだ向こう側から手を振る2人がいる。
あ、マリア&ピーター親子だ。
ひっさしぶり~。
私たちと同じぐらいのペースで歩いてるね。
また会おう!


ここ、La Virgen del Caminoはカミーノが二手に分かれる分岐点になっている。
私は自分の地図に載っているお勧めルート、左手に進み未舗装の道を通ってVillar de Mazarifeに至る約12kmのルートを進もうと思っていたが、珍しく自分のガイドブックを見たスィナが、Villadangos del Páramoに至る別ルートを行きたいという。

なんでも、Villadangos del Páramoのアルベルゲが良さそうなので、そっちに泊まりたいらしい。
(実際行ってみると「ガイドブックの評価って嘘が多いわね、ふん!」という結果になったのだが…。

私は大きなこだわりはないので、そっちルートでもOK。
ただ、こっちのルートは国道沿いで距離もちょっと長い。
なるべくなら車の通らないルートで行きたいけど、ま、今日はいいか。


黙々と歩いていると、日本にいる姉からメールが入った。
次男が難しい年頃で色々と問題を抱えていて、その解決のために私も今回カミーノに彼を連れてきたかったのだが、本人が拒否したので連れてこなかった。

姉からの報告では状況は依然おもわしくない。
というか、さらに悪い方向へ向かっている。

私もかなりショックだ。
この日、初めて泣きながらカミーノを歩いた。
スィナとは離れて歩いていたし、サングラスをかけていたから見られてないとは思うけど。


しばらく進んだ後、道路沿いに1台の車が止まっているのが見えた。
運転席のドアが開いており、女性がドアにもたれかかるようにしている。
助手席にはもう1人女性がいるが、なにやら不穏な空気が漂っている。

あまり見ないようにしてその車の横を通り過ぎようとしたその時、運転席側で外に出て立っていた女性が突然倒れた!
助手席の女性が泣き叫びながら飛び出し、運転席側に回る。
私たちも慌てて駆け寄る。

どうやら倒れたのはお母さんで、助手席にいたのは娘らしい。
何の事情があったのか知らないが、2人ともかなり落ち込んだ様子でいたが、母親が倒れて娘がパニックに。

リュックやストックを放り出し、倒れているお母さんに声をかけると、意識はあったようで目を開いた。
2人がかりでお母さんを抱き起して運転席に座らせる。
スィナがペットボトルの水を勧めるが、「大丈夫」と言って飲まない。
ほんとに大丈夫かな~?

泣いてパニックっている娘が携帯電話を取り出したので、スィナが「1、1、2にかけなさい」とゆっくり諭すように言う。(112はスペインの救急の番号)
私たちはスペイン語がほとんどできないので、どう慰めていいかもわからず、とりあえずお母さんの服についた砂埃を払ってあげ、背中を撫でてあげると”Gracias.”とは答えていた。

反対側車線を通りがかった車の男性が異変に気づいてUターンしてきてくれたので、後はその男性に任せて私たちは再びカミーノへと戻った。
はぁ~、まさかの緊急事態に遭遇で、自分の悩みも吹っ飛んだわ。
それにしても、もうちょっとスペイン語できるようになっとかないと、人命救助できないわ。


目的のVilladangos del Páramoまで、ひたすら国道沿いを歩く。
暑い…。
アルベルゲまであともう1歩というところで、木陰にベンチがあったので休む。
リュックの重さよりも、歩行距離よりも、灼熱の太陽がつらい。

ベンチで休んでいると、スペイン人の親子らしき2人が現れた。
2人とも英語ができないので深い話はできないが、年配のお母さんと中年の息子という、ちょっと珍しい組み合わせ。

息子は無口だけど、お母さんは良くしゃべる。
今日が巡礼初日でLeónからスタートしたものの、暑さにかなり参ってるらしい。


スペイン人親子に別れを告げ、そこから数十メートル先のアルベルゲへたどり着いたのが14:00。
いつも一番暑い時間帯に歩いてるわ、私たち。

アルベルゲは公営で、思いっきり国道に面しているけど、一応建物の前に芝生がありくつろげるスペースがある。
オスピタレロはとびきり親切かつフレンドリーで、到着した私たちに「2人で分けて食べなさい」とキットカットをくれた。
私、あんまりチョコレートとか好きじゃないんだけど、ありがたく頂く。






大部屋に並ぶ2段ベッドと1段ベッド。
1段ベッドは1つを残し全部埋まっていたので、スィナとは隣同士の2段ベッドの上の段にする。
また、梯子がないタイプだよ…。

荷物を置き、シャワーを浴びに部屋を出ると、キッチンでマリア&ピーター親子が料理をしていた。
彼らの情報によると、昨日Léonのサンタ・マリア修道院アルベルゲに6人も日本人がいたらしい。
6人全員がひとつのグループではないが、大阪から来たおじさんやおばさんたちが超面白かったとのこと。
あーあ、せっかく関西人と出会うチャンスを逃したな。

シャワーを浴び、部屋に戻ると久しぶりにアメリカ人のジムを見かけた。
そして、ずいぶん遅れて先ほどベンチで会ったスペイン人の母・息子が。

もうこの時間帯はオスピタレロがお昼の休憩に入っており、夕方まで戻らないので、到着した人は各自空いているベッドを確保して、後でオスピタレロに申し出ることになっている。

先ほどのスペイン人のお母さん、「上の段のベッドしか空いていないけど、自分は年だから上の段は無理だ」と、私に訴えかける。
そうは言っても私も上の段だから代わってあげられないし、下の段の巡礼者たちは皆昼寝中。(寝たふりの人もいたと思うが。)
「とりあえず、夕方にオスピタレロが戻って来てから相談すればいいですよ」と渾身のスペイン語で慰める。
もう、それ以上高度な会話無理ですから、私。


洗濯を済ませ、スィナと連れだって教会と夕食場所を探しに行く。
小さな村なので、ひと回りで全て把握。
教会は相変わらず閉まっているし、お店も日曜日だから閉まっている。
バルも夕食は当然20:00以降しか食べられない。

早めに歩き終えてしまうと、夕食までの時間がなかなかつらい。
そこそこ見どころがある町ならいいけど、小さな村では特にやることがない。
スィナは「私はアルベルゲには夕方5時か6時ぐらいに到着するタイミングが好き。そしたらシャワーと洗濯後、すぐにディナーが食べられるもの」と言う。
う~ん、タイミング的にはそうなんだけど、あんまり遅い時間に到着すると、ベッドの空きがないってこともあるだろよ?
遅くとも4時には着いとこうよ。


やることもなく、仕方なくベッドでごろりと横になる。
しばらくするとオスピタレロが戻って来たらしく、例のお母さんも別の部屋のベッドをあてがわれたようで、問題解決。

夕方になるとオスピタレロが1人1人のベッドを回り、話しかけ、異常がないかどうか聞いてくれる。
どうやら彼はもうすぐ家に帰るようだ。

その前に夕飯を確保せねばなるまい。
20:00までは待てないので、夕飯はアルベルゲで食べることにする。
受付にメニューが置いてあったのでオスピタレロにパスタを注文する。
ワインも注文できるようだ。
それを見ていたマリアが「ここの食事は高いから、スーパーで食材を買ってきて自分で作った方がずっと安くつくよ」と教えてくれた。
「う~ん、でもスィナが巡礼中は料理したくないって言ってるから…」と答えたけど、「そこの坂を上がって行ったところにスーパーがあったから」と親切に勧めてくれた。
が、念のため、オスピタレロに「スーパーはどこですか?」と聞いてみても、「今日は日曜日だから閉まってるよ」と言う回答。
そして、なぜかまたチョコレートをひとかけくれた。


私たちが夕飯に注文したパスタは、なんと冷凍食品だった。
アルベルゲ内の電子レンジでチンして食べるらしい。
普段はきちんとしたディナーを食べたがるスィナも、今日は諦めた様子。
ワインが飲めることが決断を後押ししたと思われる。

ワインのラベルにも巡礼者っぽいイラストが。
そしてスィナが他の人に取られないように、ちゃっかり”Sina & Yuko”と名前を書いていた。




冷凍パスタを電子レンジに入れる前に、フォークで穴をあけるスィナ。




お皿などの準備をしていると、スィナが「ねえ、マリアがチャーハンを作っていて、『少し食べないか?』って言ってくれてるんだけど、悪いから…」と言う。
う~ん、スィナの遠慮の基準が良く分からない。
あんたいつもかなり無遠慮やん。

私がキッチンに行ってみるとマリアがまさにチャーハンを調理中だった。
そして「こんなにたくさん作ってるから、いらない?」と聞いてくれたので、私は素直に「ちょっと味見する程度の量でいいから欲しい!」と答えた。

他の巡礼者たちも、冷凍パスタその他手持ちの食材で食卓を囲む。
久しぶりに合流したエリザベスや、スペイン人の青年、オランダ人のヨークなど交え、賑やかに。




スペイン人の青年は、英語が結構上手だったので、スィナとエリザベスが「ねえ、あなたスペイン人には珍しく英語上手ね!」って、失礼やんか。。。
青年曰く、イギリスに留学したりして英語は勉強したらしい。
そして今回、友達と2人でカミーノを歩き始めたが、途中でケンカ別れして1人で歩いているとのこと。
「カミーノはやはり1人で歩くのが一番」という彼の言葉に、う~ん、羨ましい…。
私もできることなら、別々に…。

マリアのチャーハンはとてもおいしく、みんなから大好評。
やっぱスペイン生活が長くなると、違うものがおいしいね。
それにこのチャーハン、おふくろの味だよ、まさに。

テーブルの奥からマリアと他の巡礼者の会話が聞こえてきた。
巡「それで、カナダ在住だけど元々どこ出身なの?」
マ「韓国よ」
巡「たまには里帰りとかしてるの?」
マ「年に1回ぐらいは。大韓航空が安いから」

な~んだ、普通の韓国人じゃん。
脱北者じゃないかとか、変に気を使って損したよ。
(ま、もちろん本当のところは分からないけど。)


食後、スィナが他の巡礼者とおしゃべりに興じていたので、1人でぶらりともう一度村の散策に出る。
念のためチェックしてみたスーパー(というか、食料品店)は、やはり閉まっている。
せめて明日のためのフルーツぐらい買っておきたかったなあ。
仕方なく、ぐるっと村内を回り、明日の出口を確認してアルベルゲへ戻る。
夜でもまだ外は明るいので、家の前のベンチなどにたむろしておしゃべりしている地元のおじいちゃん、おばあちゃんに挨拶して通り過ぎる。
ぶらぶらしてると、久しぶりにひとり旅気分を味わえた。


夜は特にすることもなく、多くの巡礼者がアルベルゲ前のテラスや芝生でくつろいでいる。
私も椅子にすわり、マリアやピーターと話をする。
ピーターは足の親指が化膿していて、消毒液を塗り、絆創膏を取り換えている。
痛々しい…。

ふいにピーターが、「ねえ、スペインでデジカメ買った方がいいかな?」と聞いてくる。
ん?どういう意味?

どうやらデジカメが壊れてしまったようで、これまで通ってきた村では修理する場所が見つからなかったとのこと。
そうだね、大きな町へ行かないと修理とか無理だね。
「Astorgaなら修理できるんじゃない?でも修理に数日かかるかもしれないし、あまり高くなければ新品を買った方がいいかも」と答えておいた。


話をしていると、目の前で何やらヒーリングが始まった。
レイキ(霊気)を施すおっさんがいるらしい。
イタリア人のジーナがヒーリングを受け、その後も多くの巡礼者が順番を待っている。

マリアも「肩が凝るので…」と言って、レイキを受けることにした。
ピーターに「今カメラ壊れてるから私が代わりに撮ってあげる。後でメールアドレス教えてくれたら送るね」と言うと喜んでくれた。









スィナが「そういえばまだあなたにマッサージしてあげてなかったわね。今やる?」と言ってくれたので、お言葉に甘えて。

スィナはマッサージの講習を受けたことがあるらしい。
そもそも夫が「肩が凝る」と言うので、マッサージしてあげようと思って習いに行ったのに、いざ講習を終えてやってあげようとすると、「人に触られるの嫌」と拒否られたそうな。
でもスポーツをやってた息子らの筋肉痛をほぐしてあげたり、それなりに役立ったそうなので、無駄にはなってないらしい。

テーブルにうつぶせになり、首から肩にかけてタイガーバームをたっぷり塗られ、マッサージを受けた。
気持ちいい~。
上手だよ、スィナ


今日は険悪なムードでスタートし、その後色々あったけど、最後はマリアのチャーハンも食べられたし、スィナのマッサージも受けられたし、振り返ってみれば良い1日でした。







本日の歩行距離:約22.6km
本日の歩数:分からず