地球にあしあと

地球の色々なところに足跡をつけてきました。

カミーノにあしあと 21

2010年10月15日 | Weblog
【21日目】7/16(金) Calzadilla de los Hermanillos → Mansilla de las Mulas
清潔なベッドが非常に心地よいので、いつまでも寝ていたいぐらいだけど、6:00頃に起きだして準備する。
昨日、パッキングせずに散らかし放題で寝たので、そのツケは今朝払う、と

アルベルゲのテラスにてバナナ、ホットミルク、それから手持ちのカラメルっぽいお菓子で簡単に朝食。
朝食を済ませ、昨夜取りこみ忘れた洗濯物を取り込んで部屋に戻ると、何やら外からパカパカと蹄の音が…。

急いで窓からアルベルゲの前の道を見下ろしてみると、白い馬に乗った男性が通り過ぎて行った。
巡礼者だろうか、それともこの村の人だろうか。
カウボーイみたいでかっこいいな。
スィナはその場にいなかったので見ていない。


7:15にアルベルゲを出発。
今日は風が強く、寒い。
そして今日はメセタのハードなパートその2。
20.4kmに渡り、村もなく、バルもなく、水飲み場もない平坦な荒野が続く。
そう、今日は少なくとも24.5kmは歩き切らないと、泊まるところはない。


スィナは快調に飛ばしていく。
私は今日はあまり調子が良くなく、体が重く、肩が痛いので、スィナからはかなり遅れ気味に歩いて行く。
もうやっぱり別々に歩いた方がいいのではないかと悩む。

エリザベスはじめ、ほとんどの巡礼者はもう一方のルートを歩いているらしく、ほとんど巡礼者に会わない。






ひたすらメセタを歩いていると、道の真ん中に何やら大きくて黒いものが落ちていた。
近づいて見てみると、それは大きな寝袋だった

この大きさからして、徒歩巡礼者が持っているような寝袋ではない。
とすれば、サイクリストが落としたか?
道は平たんとは言え、土の道で石がごろごろしていたり、表面がでこぼこなので、自転車で通るとかなり揺れると思う。

さて、寝袋を落としたのは気の毒だけど、さすがにこんなに大きくて重い物は運べない。
しかも私はまだ体調が回復してないので、自動的に「これは本人が取りに戻ってくるだろうから、道の脇によけといてあげよう」と判断する。

が、スィナはしばらく考え込んでいる。
ま、まさかあんた…

そして、スィナが言った。
「私、これ持って行くわ」と。

ええっ
もっと小さい落し物ならまだしも、こんな大きくて重い物を徒歩で担いで行くの無理でしょ。
しかも次のアルベルゲやバルと言っても20km先だよ!
今日は途中に何もないんだよ!
そしてこれはきっとサイクリストの物だから、本人が気づいてなければ30kmも60kmも先に行ってしまっている可能性だってある。


しかし、案の定スィナが考えていたことは、「昨日はナターシャが私のサングラスを拾って持ってきてくれたから」、お返しということらしい。
う~ん、確かにそうなんだけど、いかんせんサイズが…。

「まあ、とにかく持てるとこまで持ってみるわ」と、スィナはその巨大な寝袋を持って歩き出した。

え?えええ~


この場合、私の方が若いんだから持ってあげるべきだと思う。
だけど私はまだ病み上がりで体力ないし、ただでさえ自分の荷物を背負うのに精いっぱいなのにこんな余分な重量の物は持てない。
そもそもきちんと固定しておかなかった方が悪いし…。
と、罪悪感と言い訳で悶々としながらしばらく歩いた。


すると向こうから、白い馬に乗った人がやってきた。
あれ?今朝アルベルゲの前で見た人だ。

なんと、例の巨大な寝袋は彼が落としたものだった。
なるほど、馬に揺られていると落ちても気づかないな。

寝袋を拾ってくれて大層感謝していた。
私、引き続き複雑な心境。
でもちゃんと神様はうまい具合に取り計らってくれるもんだなあ、と感心。

彼の名はハビエル。
そして相棒の馬はグリンゴ。
「写真を撮らせて」というと、「ちょっと待って」と言ってサングラスをかけたハビエル







なんでもハビエルはグリンゴに乗ってRoncesvallesを出発してカミーノを歩き、Santiago到着後はそのままMadrid、Barcelonaを経て、海を渡ってアメリカまで行く予定らしい。
とんでもなく長い道のりだ。

なぜそのようなことをするかというと、動物愛護キャンペーンの一環らしい。
旅を通じて「せめて月に一度は肉を食べない日を作ろう」と呼び掛け、署名を集めている。
集まった署名は最終的にはオバマ大統領まで持っていくらしい。
ハビエルはほとんど英語が話せないので、スペイン語の説明では詳しいことまで良く分からないけど、せっかくなので私たちも署名する。
「日本人の署名は初めてだ!」と喜んでもらえた。

ハビエルは当然ベジタリアンで、かなり痩せている。
そしてお金を持たずに巡礼しているらしい。
う~ん、メキシコ人のダニエルと重なる部分があるが、スィナはすっかりハビエルには感心している。
ダニエルはダメでハビエルはいいのか?
動物愛護だから?

個人的な意見を言わせてもらうと、「こんな長距離にわたって過酷な旅をさせられているグリンゴがかわいそう!」だ。
まあ、グリンゴは飼い主のハビエルにすっかり懐いているので、私たちとハビエルが立ち話をしていると、後ろからハビエルの背中を顔でゴシゴシこすったりして甘える姿がかわいかった


ハビエル&グリンゴに別れを告げ歩き出すと、後ろから自転車に乗ったサンティアゴがやってきた。
昨日同じアルベルゲに泊まっていたスペイン人の若者だ。

スィナが仕入れた情報によると、彼は以前ガンを患い、奇跡的に回復し、巡礼をしているそうだ。
サンティアゴとハビエルが道の真ん中で長い事話しこんでいた。

こうやってのんびり巡礼するパターンもアリだ。





長い長い距離を歩き、ようやくReliegosという村へたどり着いた
ここには公営のアルベルゲがあるので、ここに泊まる巡礼者も多い。
私たちはひとまずバルで休憩して対策を考えることにした。

いつものようにコーラとボカディーヨ。
バルの前にあるちょっとした公園のような場所の芝生の上に、テーブルといすが置いてありテラス席となっている。
韓国人の若者男女や、これまで何度か見かけているパタゴニア在住のフランス人の高齢男性(足を痛めて引きずるように歩いている)など、色んな巡礼者が集っている。

しばらく休憩していると、昨夜ディナーを一緒したオランダ人のカーラが到着。
おや?昨日会った時はシャロン・ストーンみたいに奇麗だと思ったけど、巡礼者ルックで現れたカーラはずいぶん印象が違うぞ。
失礼ながら、誰だか分りませんでした

続いてイタリア人のジーナが到着。
ジーナはここでがっつり巡礼者用メニューのランチを食べている。




さらにマケドニア人のメリ。
彼女もランチを注文したけど、しばらくして全く手をつけないまま去ってしまった。
お店の人には「急に気分が悪くなって食べられなくなった」と説明してたけど、大丈夫かな?

ところでいつも会う人会う人に巡礼中に出会った人のことを話しまくるスィナが、何故だから誰にもハビエルとグリンゴの話をしない。
なぜだろう?
スィナはいつも不思議だ。


さて、私たちはここからさらに7kmほど歩いて次の場所へと向かった。
次の町、Mansilla de las Mulasは、人口1,800人ぐらいで、12世紀の城壁に囲まれた町。
地図には公営アルベルゲしか載っていなかったが、町に入るとすぐに私営アルベルゲが出てきたのでそこへ入る。
1階にバル、そして芝生の庭にテラスがあって雰囲気はいい。

16:00にチェックイン。
8ユーロ。

1階のバルにはおいしそうな生ハムがぶら下がっている





2階に上がると大きな部屋が2つあり、2段ベッドが並んでいる。
人はほとんどいない。
みんな公営アルベルゲの方に行ったのかな?
ここに泊まった顔見知りは、ギーティ、カーラ、ジーナ、メリだった。

ちなみにジーナはシャワーの後、ドライヤーで髪を乾かしていた。
やっぱり!


洗濯を終え、テラスで紅茶を飲む。
まだ胃の調子が完全ではないので、なるべくコーヒーより紅茶にしている。
夕食に差し支えるといけないので、スィナとクロワッサンを半分こして食べた。


夕食前に恒例の町散策。
たしかに中世の街並みが奇麗な町。
思ったより大きな町で、色々なお店がある。
スィナが「マニキュアを買いたい」と言いだした。
足のペディキュアがはげてしまってるのをずっと気にしていたのだ。

私はこういうハードかつアウトドアな巡礼なので、最初っからマニキュアとか塗ってきてないし、化粧道具は持ってきてない。
でも口紅やマスカラを持ってきているスィナはマニキュアの誘惑に勝てないようだ。

実は巡礼開始前に自分でパッキングした際に、マニキュアをはじめ余計なものをたくさん詰め込んでいて、全部長男のお嫁さんに出されたそうだ。
「これは何?いらないわね」って感じでどんどん荷物を減らされ、結果的にリュックが軽くなって助かっている。

それでも毎日炎天下、長距離を歩いているので、リュックは1グラムでも軽いほうがいい。
スィナは一番小さいマニキュアを必死に探す。
私は呆れることしきり。
それに対してスィナは「モラルの問題だから」と繰り返すけど、「モラル」って言葉の意味使い間違ってないか?
「モラル」というより「身だしなみ」でしょ?

赤いマニキュアを購入し、ルンルン気分でアルベルゲに戻り、テラスで早速足の指に塗るスィナ。
うっ、ちょっとうらやましい…。
でも散々反対した手前、死んでも「私にも貸して」とは言えない


ゴシップ好きのスィナが「ねえ、カーラって何歳だと思う?彼女、聞いても教えてくれないのよ。『年齢は関係ない』とか言って」と話を振ってきた。
まったくもってカーラの言うとおりである。
人の年齢をかぎまわるのに興味はない。

興味ないって言ってんのに「彼女、○年間結婚してたっていう話で、仕事が○年だから、まあ大体50歳から55歳の間ね」としつこく話しかけてくる。
年齢は教えてもらえなかったけど、これまでの人生を根掘り葉掘り聞き出して推測したらしい。
だから興味ないってば!

「なんでそんな人の年齢ばっかり知りたがるのさ」と軽蔑のまなざしを向けても、「当然知りたいじゃない」と開き直っている。

さらには「マケドニア人のメリは、ドイツ人との離婚経験がある」ことまで教えてくれた

というわけで、メリはドイツ語が話せるので、テラスでディナーした後もずっとスィナがメリとドイツ語で話し、いつまで経っても話が終わらないので、まだ時間は早いけど「私、もう寝るわ。おやすみ」と先に部屋に戻った。
ほんとにこの人気遣いないわ。
なんのために私と一緒にいるんだろうかね?


明日はいよいよLéon。
なんか、Léonまで来ると「ああ、巡礼もとうとうここまで来たか」と、感慨深い気持ちになる。
Santiagoまであと300km超。
(みんなが持っているガイドブック毎に若干記載されている距離が違うので、まあ大体300~350kmじゃないかと推定する。)

早く清潔な生活に戻りたいなと思う反面、Santiagoに到着するのが少し寂しい気もする。
帰国後の不安もあるし。

カミーノで何かが見つかるわけでもなく、自分が大きく変わるわけでもない。
でも日々何か学びや気づきがあり、知らず知らず自分は進化・変化していってるのだろうと思う。


そういえば、未だに携帯が圏外になってるなあ。。。






本日の歩行距離:約24.5km
本日の歩数:34,921歩