2020年1月12~13日、急に思い立って車中泊の旅に出かけました。行き先は京都の山奥、美山というところにあるかやぶきの里。かやぶきの里といっても写真で見る限り、白川郷ほどに個々の家は大きくないし村も広くないけど、風情があってほっこりした気分が味わえそうなので、前から行きたいと思っていました。実は白川郷にも行ったことがなくていつかは行きたいと思っていたので、それよりも先に美山にという気持ちがありました。大きいのを見た後に小さいのを見るとガッカリするかもしれないと思って。
いつも通りのペースで朝10時に自宅を出発。例によって高速は使わない方針でナビは一般道優先で設定。何も疑わずにナビにしたがって運転していると、京都市内を通りぬけるルートになっていて渋滞に巻き込まれました。前日にGoogleで検索したときに想定していたルートでは外環(国道170号線)から亀岡に抜ける道と思っていたので、途中で気がついたものの後の祭り。
それにしても、ナビに頼るようになってからはドライブの楽しみがひとつ減ったように感じます。昔なら知らない土地に行くときは事前に道路地図を見て全体ルートを頭に入れて、それでも迷ったら道端に車を停めて確認して、そして何とか目的地に到着する、というのが常でした。迷いながらとしても自分の決めた道を行って目的地に到達する満足感みたいなものが味わえました。運転中は常に東西南北のどちらを向いているかをわかりながらハンドルを握っていました。それがナビに頼るようになってからは全体が頭に入らず、画面に表示される部分しかわからないので、あとどれくらいとか、どっちを向いているとか、数字や文字で表示されるものの感覚的にわからないので時々不安になるし、信号で停止するたびに拡大や縮小を繰り返す始末です。まるでナビに操られている感じさえします。奥さんもそれを感じているようで、道路地図を買おうかと言ってます。
それはさておき、京都市内を抜けてからの周山街道(国道162号線)は追走車も対向車もほとんどなく、北山杉を眺めながらまるで森林浴をしながら走っているような感覚で非常に快適なドライブでした。目的地に着いたのが14時頃だったと思います。駐車場には観光バスが1台と20台くらいの乗用車が停まっていて観光客もそこそこいますが、どうやら見学を終えて帰る雰囲気の人が多い。こちらは今から車を停めてワンコと一緒に見学です。
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白川郷と同じように放水銃が備えられていて年に2回の放水訓練があるそうです。
村のいちばん奥にある小さな神社。稲荷神社です。
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実際に使われていたお宅が火事で焼失したあと、残っていた記録をもとに平成12年に復元して資料館になっています。
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20年経ってかやぶき屋根の苔がいい感じ。
小さな村の中を何も考えずにワンコを連れてウロウロするので、気がつけば同じところをグルグルしていました。でも飽きない。楽しいです。中国や韓国からの観光客が結構いたのには驚きました。
茅葺をやめて瓦葺きにしているお宅もあります。でも屋根の形はそのまま。
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村の一番高いところにお寺があります。普明寺という禅寺です。こんな小さな村にあるお寺が曹洞宗のお寺とは少し驚き。
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村のいちばん奥まったところにポツンと一軒家。
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お腹がすいてきたのでこのお店でピザをいただきました。ワンコがいるので外のテーブルで。
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マルゲリータ1200円、美山牛乳のアイスオーレ420円、しそジュース320円、締めて1,940円。オーレがおいしい。美山牛乳もそうだけどコーヒーの味がおいしいと思ったら、豆を挽いてサイホンで入れていました。ワンコの落ち着きがなかったので写真を撮り忘れました。
丘の上に立つ神社。鎌倉神社といいます。大きな石を積み上げた階段は少し危険です。
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でも、村全体を見渡せるので気持ちがいい。
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小さな川をわたった村のはずれにある知井八幡神社。写真の奥の階段を上がったところです。
こちらは立派な神社です。境内はまだお正月の雰囲気が少し残っていました。
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それにしても、こんな小さな村にお寺がひとつに神社が3つもあるなんて。
村のはずれを流れる小さな川。誰もいないのでリードをはずしてあげました。
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このとき、近くのお宅から出てきたお母さんが野焼きを始めました。「どちらからですか」と声をかけてくれる気さくなお母さんでした。
昔ながらの郵便ポストはおなじみの撮影スポットのようです。
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村の入口にあるお地蔵さん。
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その後ろには大きなすすき。これ、すすき?
菜の花畑だけど、白菜から出た菜の花です。
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駐車場の横を流れる川は由良川です。
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けっこう流れが速いので落ちると危ない。念のためワンコに注意です。この川が由良川というのはあとでわかったことですが、翌日にも登場します。
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2時間くらいウロウロしました。少し太陽が傾いただけで山の向こうに沈んでしまいます。陰ってくると急に気温が下がって寒くなってきました。時刻は16時過ぎ。そろそろ退散かな。
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今年の冬は暖かいので雪が全くなかった。これを書きながらライブカメラを見てみても雪が全くありません。かやぶきの里では1月下旬から雪灯篭、2月には雪まつりというイベントがあります。楽しみにしている皆さんにとっては大変残念なことと思いますが、雪がないことで訪れることができる人もたくさんいます。痛し痒しというところでしょうか。
この機会に少し調べてみました(と言ってもWikipediaが中心ですが)。
村の住所は京都府南丹市美山町北。中世には丹波国桑田郡弓削荘に属していました。桑田郡と聞いてビックリ。いま継体天皇を勉強しているところですが、第25代武烈天皇には跡継ぎがいなかったのでその崩御にあたって、傍系から天皇を迎え入れようと考えた大伴金村ら側近たちがまず招聘しようとしたのが倭彦王なる人物。彼は第14代仲哀天皇の五世孫で丹波国桑田郡に住んでいたといいます。彼は迎えに来た一団に攻め込まれると勘違いして逃亡したほどのダメ男なのですが、まがりなりにも王と呼ばれた人物。その倭彦王がいたのがこのあたりとは驚き。結局、倭彦王がダメ男だったことで次点であった継体天皇が即位できたという日本書紀のお話です。
ここは林業を主産業とする山村集落ですが、集落の中を通る街道は鯖街道の一つとされ、多くの旅人が京都と若狭を行き来していたそうです。鯖街道といえば琵琶湖の西の街道のことだと思っていましたが、その鯖街道がいくつもあることを初めて知りました。そしてこの道はそれらの中でも最も西側のルートであることから「西の鯖街道」と呼ばれるそうです。さらに、この北地区は近世には篠山藩に属していたそうな。篠山といえば私の父親の出身地。篠山の中心地である丹波篠山市は兵庫県、そこから直線距離にして数十キロ、兵庫県どころか京都の奥も奥、若狭に近いこの場所が篠山藩とはこれまた驚き。でも少し親近感を覚えます。
1993年(平成5年)に周囲の水田と山林を含む北地区の集落全体が国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されたことから、当地区で「かやぶきの里保存会」が組織され、歴史的景観の保全と住民の生活を両立すべく様々な検討が重ねられました。その結果、住民が出資して「有限会社かやぶきの里」を設立し、建造物の維持管理および観光施設としての運営を組織的におこなうようになった、とあります。有限会社が運営しているというのは現地で知ったのですが、まさか住民の共同出資とは思わなかった。どこかの営利企業が村から委託を受けてビジネスとしてやっていると思っていました。
この集落にある50戸ほどのうちの約7割、交流館、民俗資料館、民宿なども含めた38戸が茅葺き屋根だそうです。村には屋根を葺くための茅を育て、刈り取って乾燥、保管する茅場というのを管理しているそうですが、一戸分の屋根を葺く茅の量はその茅場一年分では足りないとのこと。ということは屋根の葺き替えは村全体で数十年単位あるいは百年単位で計画的にやらなければなりません。住民の結束、秩序、相互扶助などによって成り立っていると言えます。
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帰りの車を運転しながら思いました。住民どうしの結束や協力によって集落全体の景観保存が成り立っているということは、逆に言えばここに住民が住んでいるからこそできるのであり、意味がある。人が住まない集落を保存することに意味はない。何十年も前から日本中の小さな山村に過疎化の波は来ていて、この村も例外ではないはず。景観を保存する以上に大事なことは、住民が住み続ける村にすることだ。
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さあ、暗い山道を走るのはいやなので、日が暮れてしまう前に本日の宿泊地「道の駅スプリングひよし」へ向かい、30分ほどで到着です。ここは温泉もあり、駐車場も広いので車中泊には持って来いの道の駅。3連休の中日でもあるし、そこそこ車がいると思ったのですがそれほどでもない。でも、2台のキャンピングカーがいい場所をキープしていました。
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この橋を渡ったところが温泉です。身体が冷えていたのでゆっくりと温まりました。
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次の日はこの上にある日吉ダムからスタートです。続きは後編にて。
いつも通りのペースで朝10時に自宅を出発。例によって高速は使わない方針でナビは一般道優先で設定。何も疑わずにナビにしたがって運転していると、京都市内を通りぬけるルートになっていて渋滞に巻き込まれました。前日にGoogleで検索したときに想定していたルートでは外環(国道170号線)から亀岡に抜ける道と思っていたので、途中で気がついたものの後の祭り。
それにしても、ナビに頼るようになってからはドライブの楽しみがひとつ減ったように感じます。昔なら知らない土地に行くときは事前に道路地図を見て全体ルートを頭に入れて、それでも迷ったら道端に車を停めて確認して、そして何とか目的地に到着する、というのが常でした。迷いながらとしても自分の決めた道を行って目的地に到達する満足感みたいなものが味わえました。運転中は常に東西南北のどちらを向いているかをわかりながらハンドルを握っていました。それがナビに頼るようになってからは全体が頭に入らず、画面に表示される部分しかわからないので、あとどれくらいとか、どっちを向いているとか、数字や文字で表示されるものの感覚的にわからないので時々不安になるし、信号で停止するたびに拡大や縮小を繰り返す始末です。まるでナビに操られている感じさえします。奥さんもそれを感じているようで、道路地図を買おうかと言ってます。
それはさておき、京都市内を抜けてからの周山街道(国道162号線)は追走車も対向車もほとんどなく、北山杉を眺めながらまるで森林浴をしながら走っているような感覚で非常に快適なドライブでした。目的地に着いたのが14時頃だったと思います。駐車場には観光バスが1台と20台くらいの乗用車が停まっていて観光客もそこそこいますが、どうやら見学を終えて帰る雰囲気の人が多い。こちらは今から車を停めてワンコと一緒に見学です。
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白川郷と同じように放水銃が備えられていて年に2回の放水訓練があるそうです。
村のいちばん奥にある小さな神社。稲荷神社です。
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実際に使われていたお宅が火事で焼失したあと、残っていた記録をもとに平成12年に復元して資料館になっています。
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20年経ってかやぶき屋根の苔がいい感じ。
小さな村の中を何も考えずにワンコを連れてウロウロするので、気がつけば同じところをグルグルしていました。でも飽きない。楽しいです。中国や韓国からの観光客が結構いたのには驚きました。
茅葺をやめて瓦葺きにしているお宅もあります。でも屋根の形はそのまま。
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村の一番高いところにお寺があります。普明寺という禅寺です。こんな小さな村にあるお寺が曹洞宗のお寺とは少し驚き。
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村のいちばん奥まったところにポツンと一軒家。
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お腹がすいてきたのでこのお店でピザをいただきました。ワンコがいるので外のテーブルで。
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マルゲリータ1200円、美山牛乳のアイスオーレ420円、しそジュース320円、締めて1,940円。オーレがおいしい。美山牛乳もそうだけどコーヒーの味がおいしいと思ったら、豆を挽いてサイホンで入れていました。ワンコの落ち着きがなかったので写真を撮り忘れました。
丘の上に立つ神社。鎌倉神社といいます。大きな石を積み上げた階段は少し危険です。
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でも、村全体を見渡せるので気持ちがいい。
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小さな川をわたった村のはずれにある知井八幡神社。写真の奥の階段を上がったところです。
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こちらは立派な神社です。境内はまだお正月の雰囲気が少し残っていました。
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それにしても、こんな小さな村にお寺がひとつに神社が3つもあるなんて。
村のはずれを流れる小さな川。誰もいないのでリードをはずしてあげました。
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このとき、近くのお宅から出てきたお母さんが野焼きを始めました。「どちらからですか」と声をかけてくれる気さくなお母さんでした。
昔ながらの郵便ポストはおなじみの撮影スポットのようです。
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村の入口にあるお地蔵さん。
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その後ろには大きなすすき。これ、すすき?
菜の花畑だけど、白菜から出た菜の花です。
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駐車場の横を流れる川は由良川です。
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2時間くらいウロウロしました。少し太陽が傾いただけで山の向こうに沈んでしまいます。陰ってくると急に気温が下がって寒くなってきました。時刻は16時過ぎ。そろそろ退散かな。
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今年の冬は暖かいので雪が全くなかった。これを書きながらライブカメラを見てみても雪が全くありません。かやぶきの里では1月下旬から雪灯篭、2月には雪まつりというイベントがあります。楽しみにしている皆さんにとっては大変残念なことと思いますが、雪がないことで訪れることができる人もたくさんいます。痛し痒しというところでしょうか。
この機会に少し調べてみました(と言ってもWikipediaが中心ですが)。
村の住所は京都府南丹市美山町北。中世には丹波国桑田郡弓削荘に属していました。桑田郡と聞いてビックリ。いま継体天皇を勉強しているところですが、第25代武烈天皇には跡継ぎがいなかったのでその崩御にあたって、傍系から天皇を迎え入れようと考えた大伴金村ら側近たちがまず招聘しようとしたのが倭彦王なる人物。彼は第14代仲哀天皇の五世孫で丹波国桑田郡に住んでいたといいます。彼は迎えに来た一団に攻め込まれると勘違いして逃亡したほどのダメ男なのですが、まがりなりにも王と呼ばれた人物。その倭彦王がいたのがこのあたりとは驚き。結局、倭彦王がダメ男だったことで次点であった継体天皇が即位できたという日本書紀のお話です。
ここは林業を主産業とする山村集落ですが、集落の中を通る街道は鯖街道の一つとされ、多くの旅人が京都と若狭を行き来していたそうです。鯖街道といえば琵琶湖の西の街道のことだと思っていましたが、その鯖街道がいくつもあることを初めて知りました。そしてこの道はそれらの中でも最も西側のルートであることから「西の鯖街道」と呼ばれるそうです。さらに、この北地区は近世には篠山藩に属していたそうな。篠山といえば私の父親の出身地。篠山の中心地である丹波篠山市は兵庫県、そこから直線距離にして数十キロ、兵庫県どころか京都の奥も奥、若狭に近いこの場所が篠山藩とはこれまた驚き。でも少し親近感を覚えます。
1993年(平成5年)に周囲の水田と山林を含む北地区の集落全体が国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されたことから、当地区で「かやぶきの里保存会」が組織され、歴史的景観の保全と住民の生活を両立すべく様々な検討が重ねられました。その結果、住民が出資して「有限会社かやぶきの里」を設立し、建造物の維持管理および観光施設としての運営を組織的におこなうようになった、とあります。有限会社が運営しているというのは現地で知ったのですが、まさか住民の共同出資とは思わなかった。どこかの営利企業が村から委託を受けてビジネスとしてやっていると思っていました。
この集落にある50戸ほどのうちの約7割、交流館、民俗資料館、民宿なども含めた38戸が茅葺き屋根だそうです。村には屋根を葺くための茅を育て、刈り取って乾燥、保管する茅場というのを管理しているそうですが、一戸分の屋根を葺く茅の量はその茅場一年分では足りないとのこと。ということは屋根の葺き替えは村全体で数十年単位あるいは百年単位で計画的にやらなければなりません。住民の結束、秩序、相互扶助などによって成り立っていると言えます。
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帰りの車を運転しながら思いました。住民どうしの結束や協力によって集落全体の景観保存が成り立っているということは、逆に言えばここに住民が住んでいるからこそできるのであり、意味がある。人が住まない集落を保存することに意味はない。何十年も前から日本中の小さな山村に過疎化の波は来ていて、この村も例外ではないはず。景観を保存する以上に大事なことは、住民が住み続ける村にすることだ。
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さあ、暗い山道を走るのはいやなので、日が暮れてしまう前に本日の宿泊地「道の駅スプリングひよし」へ向かい、30分ほどで到着です。ここは温泉もあり、駐車場も広いので車中泊には持って来いの道の駅。3連休の中日でもあるし、そこそこ車がいると思ったのですがそれほどでもない。でも、2台のキャンピングカーがいい場所をキープしていました。
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この橋を渡ったところが温泉です。身体が冷えていたのでゆっくりと温まりました。
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次の日はこの上にある日吉ダムからスタートです。続きは後編にて。
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