hinajiro なんちゃって Critic

本や映画について好きなように書いています。映画についてはネタばれ大いにありですのでご注意。本は洋書が中心です。

映画「さまよう刃」

2010年10月10日 | 映画
 これは原作を読んでいないと全く楽しめない、楽しむ、って言葉はおかしいですね、響いてこない、でいいかな、そういう作品だと思いました。
 しかもアマゾンの出版社からの小説の方の作品紹介文が、

 蹂躙され殺された娘の復讐のため、父は犯人の一人を殺害し逃亡する。「遺族による復讐殺人」としてマスコミも大きく取り上げる。遺族に裁く権利はあるのか? 社会、マスコミそして警察まで巻き込んだ人々の心を揺さぶる復讐行の結末は!?

って変じゃないですか?「警察まで巻き込んだ」の「まで」って言葉、違いませんか?
 それに、復讐をした遺族を「どう裁くか」という問題を投げかけるのは理解できるけれど、復讐「殺人」の権利の是非って・・・

 全体の感想としては、竹野内のキャラクターがちょっと不自然で違和感が。というのも、新人刑事ならあのような発言をしたり、そういったジレンマに悩まされるのは分かるのだけれど、彼の年代だともうその職に就いて10年は経っているのでは?何度も同様の事件を扱ってきてそういう段階を超えているのでは?
 誰もがみな「Hurt Locker」になるわけにはいかないのかなー・・・・それとも社会人の精神面の低年齢化とか職業意識の低さを示唆しているのか?なんて歪んだ視線で見てしまうのだけれど、きっと純粋で正義感が強いということなんでしょうね。
 原作では新卒の刑事あたりなのかな?その方が私にはしっくりくるのですが。

 シローさんが言った「彼にはもう未来なんてないんだよ」が一番重たくて印象的でした。たった一人の大切な人を失った気持ちを一番表現していると思いました。

 台詞と台詞の間にたっぷり間を入れれば、重々しい雰囲気が出る、という安易な演出が残念です。そこら辺をもっと短くして、少年法に対する世論やマスコミの反応なんかを入れて掘り下げてあった方が私の好みでした。
 私個人的には少年法についてよりも、今の日本で陪審員制度を入れた方に疑問を感じるのだけれど、こういった事件に関しては陪審員制度の良さが生かされるだろうと考えます。

 同じようなセッティングなら「Time to kill」、現在の司法制度に対する疑問を問いかけられ、やるせない気持ちになったのは「それでも僕はやってない」(最悪の後味の悪さですけど)。この二つの作品の方が私にはずっしりきました。

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