『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  138

2013-11-04 08:32:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らはそのような時代の中でクレタ島の西部地区で北に小島を控えた地点を建国の地とした。それが正答であったか、どうかは歴史が証明するところである。
 イリオネスは、統領の側近としての位置にあり、一族を統括し、軍事面の才を発揮して戦闘集団としての軍団を統べていた。彼は透徹した目で一族に起きる事象、また、起きるであろう事象を考える、見ることにより全てを宰領した。彼は、経理の才もあり、財政面の総括をも担当していた。彼が手腕を揮うにあたり、パリヌルス、オキテス、オロンテスらの果たす役割も大きくかかわり、充分と思える成果をあげたといっていい、失敗事象を最小限に抑えることに腐心できた。このヨーロッパの青銅器時代、いわゆる古代において、たぐいまれなる才力の持ち主たちに恵まれていた集団と言っていい。集団を運営していくには為政者一人の才や力に頼らず、人智、集団の持てる力で運営にあたった。為政者は自分の欲する成果に力の及ばないと察すると奇跡として、その成果を望んだ。彼らは、それを自分の運力と判断した節がある。彼らは、事の成り行き、成果は。運のなせる業ではなく、人智力が技を為すという想いであった。人間が個である場合、運力は必要不可欠の要素であるかもしれないが、集団は、集団の長の運力ではなく、その集団を支える人間力によって集団が目的を達成していくようになる。アヱネアスは、そのことを充分に理解して、己を支えてくれる、自分の統べる集団、者たちを大切にすることを当然であると心得ていた。
 
 太陽がが西空を染める。今日一日、彼らは山野に海に作業に努めた。作業終了の時を迎えていた。各部署では作業の終了が告げられ、今日一日の労がねぎらわれていた。オキテスとオロンテスは小山のごとく集積された薪の山を満足げに見つめてうなづきあっていた。
 『オロンテス、これでどうだ』
 『いやあ~、大変でしたな。これで十分です、これだけあれば当分は燃料に事欠くことはありません。ありがとうございました』
 『オロンテス、礼には及ばん。俺たちは、当然やるべきをやったまでだ』
 彼ら二人と、作業に従事した者たちも満足げに薪の山を見上げていた。
 パリヌルスは、細かく作業の指示をして、浜に杭を打ち込んだり、揚陸している各船の整備、揚陸状態の整理をして作業を終えた。彼も作業終了を告げ一同の労をねぎらって、これからの役務の指示を終えた。
 彼は多忙でもある。このあとギアスの舟艇でアレテスのいる小島へと向かった。