『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  156

2013-11-28 07:59:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは、焚き火を囲み、魚を焼き、舌鼓を打った。人間の営みの秩序がはぐくまれつつある古代の食事風景であった。
 陽が西の海に身を沈めつつある。
 『おう、アレテス、旨かった。俺たちは帰る、あとのことよろしく頼む。ギアス、行こう』
 アレテスがギアスに声をかけた。
 『おう、ギアス、毎日、ありがとな。お前に深く感謝している。明日もよろしく頼むな』
 かける言葉にアレテスに情感があふれていた。
 風向きは、変わってきている、南からではなく強めの西風に変わりつつあった。宵の色が彼らを包み込もうとしていた。
 浜に帰り着く、浜を見渡した。夜の張り番の者たちが焚き火を囲んでいる。パリヌルスは、彼らに声をかけた。
 『おう、ご苦労。作業は終わっているな』
 『はい、この通り終えています』
 『おう、よくできている。オキテスたちは?』彼は彼らに問いかけた。
 『少し前に、ここを引き上げました』
 『何か伝言を聞いているか』
 『いえ、それは聞いていませんが』
 『そうか、よし。あとはよろしく頼む。何かあった時は連絡だ。俺の宿舎はここだ』砂地に線を引いて説明した。
 『おう、ギアス。お前はどうする?』
 『隊長、ご心配なく。私たちは艇を浜にあげて対処して、係りを残し引きあげます』
 『判った。俺の考えを必要としたら、宿舎のほうへ連絡してくれ』
 『判りました』
 彼はひとりで宿舎への道をたどった。肌に当たる風は強さを増してきている。彼は何とはなしに歩を運ぶ、ただ一人で歩いていた。
 身を包んでいる闇の中にやわらかい人の気配を感じた。歩を止めて気配を探った。危険は感じない『これは何だ?』彼は何かを思い出して『かもしれない』と考えた。
 思いついたことは『もしや女では』であった。そのようなやわらかい気配であったのである。