『ところでパリヌルス隊長、お聞きします。パンの売れ具合はどうでしたか?』
『おう、パンの売れゆきか、まずは上々であった。明日に納品する注文も受けた、30個だが。首尾は重畳といったところだ』
『それは、よろしかったですね』
『パンを売っているところがない、一人舞台だからな。また、家で焼いているようなパンでは、あのようなところで売れはしない。テカリオンの指摘が的を得たといったわけだ』
『それは何ともうれしい限りですね。オロンテス隊長も大喜びでしょう』
『そうだ。彼は大喜びだ』
アレテスは、パンの売れ行きの結果を聞いて、他人ごとではないといった様子で喜んだ。
パリヌルスは、集団の者たちが喜びを共有することが集団の明日への一歩を確実にしていくのではなかろうかと感じた。かれは、近いうちに今回の事柄を全員に知らしむるべきであると思った。
『アレテス、これから俺の言うことは、とてつもなく大切な事柄である、といってどうしろ、こうしろということではない。いいか。聞いて胸の内にしまっておけばそれでいい。大きく言えば時代が変わる、しかし、今日や明日ではない。しかし、そうはるかな未来でもない、近々ではあろうと思うが、そう近いうちでもない。物のやり取り、取引のカタチに変化の兆しが出始めている。集散所でやっている取引は物々交換ではないのだ。パンを売る、パンを相手に手渡す、集散所が決めた木札を受け取る、それで対手との取引が完了だ。その受け取った木札を集散所の係りの者に渡して、金もしくは銀に交換してもらうのだ。深い事由については説明を控えるが、物と物の交換ではないのだ。俺の話を聞いて判るかな。何はともあれ、オロンテスの作ったパン1個は、木札1枚と交換するのだ。そいうことだ』
『エエツ!それはどういうことですか?隊長、物と物との交換ではないのですか。まったく、すぐに理解しろと言われても、私にはとんとわかりませんが』
『物と物との交換では不合理なところがある。こちらが入用としないものと交換してくれと言われても当惑する限りだ。その不合理性をなくする新しい取引のカタチだと思えばそれでいい。俺の説明できるところはそこまでだ。また、我々が対処するのもそこまでだ。今の我々の立場で受け入れられるのもそこまでだ』
アレテスは、パリヌルスの話を聞いて深く考えようとしていた。
『おう、パンの売れゆきか、まずは上々であった。明日に納品する注文も受けた、30個だが。首尾は重畳といったところだ』
『それは、よろしかったですね』
『パンを売っているところがない、一人舞台だからな。また、家で焼いているようなパンでは、あのようなところで売れはしない。テカリオンの指摘が的を得たといったわけだ』
『それは何ともうれしい限りですね。オロンテス隊長も大喜びでしょう』
『そうだ。彼は大喜びだ』
アレテスは、パンの売れ行きの結果を聞いて、他人ごとではないといった様子で喜んだ。
パリヌルスは、集団の者たちが喜びを共有することが集団の明日への一歩を確実にしていくのではなかろうかと感じた。かれは、近いうちに今回の事柄を全員に知らしむるべきであると思った。
『アレテス、これから俺の言うことは、とてつもなく大切な事柄である、といってどうしろ、こうしろということではない。いいか。聞いて胸の内にしまっておけばそれでいい。大きく言えば時代が変わる、しかし、今日や明日ではない。しかし、そうはるかな未来でもない、近々ではあろうと思うが、そう近いうちでもない。物のやり取り、取引のカタチに変化の兆しが出始めている。集散所でやっている取引は物々交換ではないのだ。パンを売る、パンを相手に手渡す、集散所が決めた木札を受け取る、それで対手との取引が完了だ。その受け取った木札を集散所の係りの者に渡して、金もしくは銀に交換してもらうのだ。深い事由については説明を控えるが、物と物の交換ではないのだ。俺の話を聞いて判るかな。何はともあれ、オロンテスの作ったパン1個は、木札1枚と交換するのだ。そいうことだ』
『エエツ!それはどういうことですか?隊長、物と物との交換ではないのですか。まったく、すぐに理解しろと言われても、私にはとんとわかりませんが』
『物と物との交換では不合理なところがある。こちらが入用としないものと交換してくれと言われても当惑する限りだ。その不合理性をなくする新しい取引のカタチだと思えばそれでいい。俺の説明できるところはそこまでだ。また、我々が対処するのもそこまでだ。今の我々の立場で受け入れられるのもそこまでだ』
アレテスは、パリヌルスの話を聞いて深く考えようとしていた。