『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  256

2014-04-22 08:13:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『では、アレテス、そういうことだ。用件は終わったな。俺たちは引きあげる。ではでは、よろしく、頼む』
 パリヌルスは、ギアスを呼んで、二言、三言言って小島を離れた。
 舟艇の上のパリヌルスは、沈みゆく夕陽を見ながらくつろいだ。
 『ギアス、お前、大変だろうが、これからの毎日キドニアとの往復が続く、きばってくれ』
 『え~え、判っております』
 『これからの事だが、我々が魚を扱っていくとすれば、どのように扱っていくかが課題なのだ。考えて答えの出るところと考えても答えの出ないところがある。まずは体制だ。仕事を進める組の編成を考えるかな。次が、その組が担当する仕事の内容だ。売りさばくにはの研究だ。今日は長い一日であった。ギアス、お前はどうであった』
 『私も何となく、息を抜かずに過ごした一日でした』
 舟艇は浜に返ってきた。パリヌルスは、浜を見て廻った。ところどころで言葉を交わす、彼らをねぎらう、一日を終える時であった。
 パリヌルスは、夕陽のかもしだす、茜に染まる浜、海の風景を心ゆくまで眺めた。

 朝が来る、ニューキドニアの浜は、定番になりつつある風景であった。オロンテスを中心にしたメンバー、ギアスを中心にしたメンバーが、それぞれの役務をかいがいしくやっている。オキテスが姿を見せた。今日はオロンテスの組にクリテスが加わっている。荷を積み終えて、一同が舟艇に乗り込む、櫂が海づらを泡立てる、舟艇が波を割り始める、白く航跡を残して艇が浜を離れていく、西からの風が舟艇を押した。
 セレストスは、祈るような風情で海の上をキドニアに向けて進む舟艇を見送った。
 パリヌルスは、朝のこの風景を目にして安堵していた。彼の心の中には『ここに明日につながる今日がある』という想いが胸に沸々としていた。
 しかし、心配事がないわけではない、樹木調査隊の者たちの事であった。昨日が帰着予定である。それなのにまだ帰ってきていない。気にかけた。
 そのころ、地元豪族ガリダの手の若者がニューキドニアの集落を目指して馬を走らせていた。