『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  263

2014-05-02 06:42:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスがパリヌルスの傍らに立った。
 『パリヌルス、帰ったぞ。その後、状況はどのようだ?』
 『おっ、オキテス、ご苦労であった。心配に及ぶことは起きていない。調査隊の連中も無事らしい。安心しろ』
 『安堵していいということか』
 『ということだ。おまえの思惑のチェックだがうまくいったか』
 『その件か、うまくいった。しかし、実行してうまくいくか、いかないかは別の問題だ。オロンテスに頼んで木札で干し魚を買ってきた。詳しい事情はあとからにしよう』
 『何っ、干し魚を買ってきたのか、それは好都合だ。こちらでも干し魚を作る手配をしている。明日の夕めしに口にすることができる』
 『それはよかった。いいジャストタイミングというところだな。品比べ、味比べもできる。それを物差しにして価値判断のてがかりにもなる。我々が生産する価値総量も計れる』
 『価値総量か、素の物差しで価値判断できるということか』
 『そうだ、えらい進歩だ、パリヌルス。ほかの者にこれを説いても、理解するか、しないかは別の問題だが。お前と俺の間では理解し合えると思っている』
 『判った。お前の考えは貴重な考えだ、俺は尊重する』
 『パリヌルス、ありがとう。理解してくれて』
 『まあ~、ご苦労であった。このロジックについては二人の検討課題だな』
 『そうしよう。ところで、樹木調査隊の連中が帰ってきているといっていたな』
 『それには、いろいろとまではいかないが、何か事があったらしい。君らが浜に着くちょっと前に、帰って来たという連絡を受け取った』
 『全員無事なのか?』
 『無事らしい、そこまでだ。俺も皆の顔をまだ見ていない』
 二人のところへオロンテスが寄って来た。
 『おう、オロンテス、ご苦労。今日の首尾はどうであった?』
 『重畳であった、喜べ。そこでだ、今日のこれからの事だ。この時間だ、皆で夕めしと思案したのだが、客人もあることだ。両人の意見を聞きたい』
 『オキテス、どうだ?』
 『俺は諸手を上げて賛成だ』
 『よしっ!やろう。オロンテス』
 『判った。準備支度を指示せにゃならん。いつもの浜焼きスタイルでいくぞ!』
 『それでいい。オロンテス、アレテスの方だが、今日、彼らは漁に出ている。魚が獲れたかを確かめる』
 パリヌルスはそのように言ってギアスを呼んだ。
 『ギアス、今日もご苦労であった。ところでだ、島へ行ってきてくれないか。用件はだな、今日の漁の結果を知りたい。それで、その獲れた魚をもって全員こちらへ来るように伝えてくれ、皆で夕めしを食べるとな』
 『判りました。漁の結果にかかわらずですね』とギアスは念を押した。
 『そうだ。準備する食材の関係があるから結果を聞きたいだけだ』
 『判りました』
 ギアスは舟艇で島へと急いだ。