『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  284

2014-05-31 07:44:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼は闇を見つめながら、うとうととして深い眠りに落ちていった。事の山場を越えて、安心立命にスタンスする自分に気づくことなく深く眠った。
 
 彼は目覚めた、朝である、何となくのさわやかさを感じている。心頭をよぎった思いは『事の成功は、我が掌中にあり』であった。彼は飛び起きた。隣に寝ているピッタスを揺り起した。
 『おい!ピッタス、起きろ!朝行事に行く、話もある』
 二人は浜へと降りていく、いつもとは違う歩速で歩を進めた。二人は海に身を浸した、北の海では感じられない温かな海である、パリヌルスはピッタスに声をかけた。
 『おい、ピッタス、お前の剣の腕は確かだ。お前、俺の言うとおりに朝行事の折に唱えるのだ。『俺は危険をしりぞける!』今日から5日間の修行だ。いいな』
 『判りました。やります。この俺の身に危険が忍び寄っていると、隊長、言われるのですか』
 『いや、そうではない。自分の身の安心の境地は、日々の己の思いで達せられるということだ。判るか、そのようなものだ』
 『隊長も何かを毎日ですか?』
 『俺も己の心に弱いところを持っている。俺の唱えるるのは『順調うまくいく』だ』
 『そうですか、納得しました』
 『ところでピッタス。お前は近いうちに調査隊の一員として、軍団長に従っていくことになっている。さっきの唱えは自分自身を守り、調査隊全員の身の安全を護る役務を全うするためだ』
 『判りました』
 二人は朝行事を終えて宿舎へと足を運ぶ、アヱネアスが息子のユールスとともに道を下ってくる、イリオネスの姿も見えた。互いに朝の声掛けをした。
 『おはようございます』
 『おう、おはよう。早いな、パリッ!』
 『え~え、少しばかり』
 イリオネスが声をかけて来た。
 『パリヌルス、今日だが、少し時間があるか?』
 『え~え、時間はどのようにもなりますが』
 『ちょっと打ち合わせたい。俺の宿舎へ来てくれ』
 『オキテスはどうします?』
 『連れてきてくれ』
 『判りました』
 短い会話を交わして、思い思いの方向へと歩を運んだ。