『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  280

2014-05-26 07:29:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『軍団長、判りました。今、言われたことしっかりと肝に銘じて事に当たっていきます』
 パリヌルスら三人は大きくうなずいた。会議の場を解いた一同はそれぞれの持ち場に散っていこうとしていた。パリヌルスはオロンテスに声をかけた。
 『オロンテス、お前、忙しいのか。今日、これから小島で夕めしを一緒に食べないか。都合がつくのなら一緒に来い。魚の干物の試食をやろうと思っているオキテスも一緒だ。漁の話もアレテス、ギョリダに伝えねばならん』
 『判った、魚の干物の事だが、海水漬けはダメかもしれんぞ。まあ~、食べてみてのうえの事だ。一緒に行く、俺はセレストスに一言、言ってくる。浜で待っていてくれ』
 『判った』
 用件を終えたオロンテスをも伴って、三人は小島にわたった。アレテスとギョリダは三人の到着を待っていた。
 『隊長、干物が出来上がっています』
 『おっ!そうか、ありがとう。干物の試食会か、早速、始めるとしよう』
 アレテス、ギョリダ、そして三人は夕めしの場を囲んだ。
 魚は、身を開かれ目の部分に棒を突き刺し、吊るされて乾かしてあった。
 ギョリダが説明した。
 『こちらが一夜漬け一日干しです。そして、こちらが二夜漬け一日干しです。こちらは、私どもがまえにつくったものですが、一夜漬けで三、四日天日にさらして干した魚です。私が魚を焼きます』と言って魚を焚き火にかざした。
 魚の焼ける臭いが鼻を突いてくる。
 『おう、魚の焼ける臭いは、生を焼くよりチョッピリ香ばしいな。そうは思はないか』
 『言われれば、そんな気がするな』
 『そもそも、魚の干物を作る目的は何なのだ。このこと自体をはっきりと認識しないと目的に沿った、いい魚の干物ができやしない。パリヌルス、ちょっと感覚があまい』
 『オロンテス、お前の言うとおりだ。ただ、海水漬けにして干した魚の味とはどんな味で、食べれるかどうかを知ってから、この仕事の出発点にすることにしたのだ』
 『そうか、判った。食べてみた感じでは、魚の干物としては三、四日天日にさらした魚のほうが、この干物の中で旨いと感じられる』
 『オキテス、お前の感想はどうだ?』
 『俺は、オロンテスの感想に同感だ』
 『では、俺の想いをこれから簡単に説明する、一番に言えることは、俺たちが漁で獲る魚は、集散所の魚の売り場で売ろうとしても一日では売りさばけない。二番目が今日獲れた魚を5日7日10日後でも食べれるように、その間、腐らせないようにする。それにはどうするかだ。それが課題なのだ。そうするには、干物にする、塩漬けにする、エノス時代にオロンテスのやった生木を燃やして煙でいぶす、いつでもうまい魚を口にすることができるようにしたい。それが俺の想いだ。判ってくれ。そうでないとオキテスが開発した魚を獲る仕事を続けていくことができない』
 パリヌルスは、想いの丈を一気に話した。