『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  130

2019-10-04 14:20:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 操船訓練が終わる、アエネアスとイリオネスとパリヌルスが話し合う。
 パリヌルスは、地中海なる海の海洋状況を考えての航走と操船と航法を考えて二人と話し合う。
 『そうです。この操船訓練は、乗り組んでいる漕ぎかたらより、操船の指示をする者のための訓練でもあるのです』
 『それで、いつもの試乗と比べて遠い沖での航走だったのか。お前の意図を理解した。ただただ、ひたすら西へ向かって進む地図なるものの無い航海だ。パリヌルス、お前が頼りなのだ』
 『心を尽くすことを約束します。今日は操船訓練に同行、ありがとうございました』
 二人は軍船の浜をあとにする。
 パリヌルスは、二人を見送り、操船訓練の一同と昼を共にする。
 『船が大きいことで漕ぎかたに苦労をさせる、それを含めての操船訓練だ。俺が知っていなければならないことが多々あった。君らに感謝だ。ありがとう!礼を言う』
 一同の労をねぎらう。
 会所では、遅い昼を終えて、イリオネスがアエネアスを誘う、今日のポリス関係の話し合いにの同席である。
 二人はイリオネスの宿舎へと行く、程なく、一同をむかえて話し合う頃合いとなる。
 彼らが集まってくる、一同と顔を合わせる二人、イリオネスは、一同に木板と木炭を配る、話を聞くだけではなく、書き留めておくことの大切さを話を始める前に説いて聞かせる。
 『一同!解ったな。書き止めておく、それはとても大事なことなのだ。もし書けない、そうであるときは、書ける者に習うことだ。いいな』と言い終える。
 イリオネスは軍団長として、愛を込めた目を一同と合わせる、話始める。
 集団のありかた、トロイ民族のクレタにおけるポリス、この集団が成り立っていくために重要なことはと前置きして食と住の問題から発して、衣について説き、それについて何が必要なのかを説き聞かせる。
 その仕組みを実例をもって説明する。
 彼らはイリオネスの話を真剣にきく。
 パン工房のこと、漁業部のこと、船舶の建造事業のこと、詳しく説明し、それらの維持と発展が大切なことを説き聞かせる。
 イリオネスの説明の旨さもあるが、一同は聞きわけが良い、理解度もよい、事は上々の結果であった。
 話し合い、説明会の終わるころには、宵のとばりが浜を包み始めていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  129

2019-10-04 10:35:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 軍船の浜では総員がそろっている、パリヌルス隊長の来るのを遅しと待っている。
 『お~い、隊長が見えたぞ!朝めしの支度ができたか?』
 『おう、出来ている』
 パリヌルスが一同のところに着く、一同が隊列を整えてパリヌルスを迎える。
 『隊長!こちらです!支度して待っていました』
 『おう、そうか』
 一同と目を合わせる。
 『おはよう、いい朝だ!』
 『おはようございます、いい朝です。朝食の支度は出来ています』
 『おう、そうだな。よしっ!食べるぞ!』
 全員揃っての食事が始まる、パリヌルスがが声をかける、
 『おう、タクス!食べ終わったら、すぐに出るか?』
 『はい、それが、いいですね!』
 『そうか、使用するのは2隻だ。総員は何人だ?』
 『はい、174名です。1隻あたり、87名となります』
 『判った。操舵担当を決めているな!』
 『1番船は私がやります。2番船は、ポラスです』
 『めしを終えたら一同を船上へだ』
 『判りました。隊長、沖の風向きが今のところ不明です』
 『そのようなこと、出たとこ勝負だ!判ったな!』
 一同の食事が終わる、タクスが指示する、一同が軍船に乗り込む、櫂座に就く。
 アエネアスとイリオネスが来る、アエネアスが1番船に乗る、イリオネスが2番船に乗る。
 船上に指示がとぶ、『漕ぎかた櫂をとれ!漕ぎかたはじめっ!』2隻の軍船が波を割る、小島の東を目指す、東端を過ぎる、小島を離れて20スタジオン(約4キロ)沖に出る、西からいい風が来ている。
 進行方向を東に転じる、全帆を張る、帆張り航走するも漕ぎを続ける、半刻を過ぎて漕ぎをやめる、半刻を帆走で進む、パリヌルスが舵座のタクスにサインを送る、帆を下ろして進行方向を反転させる。
 タクスが大声をあげる、『漕ぎかたはじめ!』漕ぎかたが懸命に漕ぐ、しぶきが舞う、船上の一同を濡らす、風、波に抗して懸命に漕ぐ、帆走1刻の距離の航走に1刻半の時を要する。
 小島の東端に来る、浜へと方向を転じる、今日の操船訓練を終える、彼ら一同、汗と浴びたしぶきでグッショリ濡れていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  128

2019-10-04 06:59:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 新暦18日の朝が明ける。
 イリオネスが朝行事の浜に緊張の面持ちで立っている、昨日の夕食会で顔を合わせたメンバーが彼のもとに集まってくる、朝の挨拶を交わす。
 イリオネスが固い表情で彼らと顔を合わせる、そして伝える。
 『おう、一同!今日と明日、今日は頃合いが午後の半ばからだが、君らに伝えたようにポリスの建設をどのように手を尽くして進めていくかを説明する。場所は昨日同様、俺の宿舎でやる。明日は、朝からやる、財務及び業務の引継ぎの件についても行う。以上だ。いいな』
 彼ら一同、奥歯をかみしめてうなずく、場を解く、各自がそれぞれの持ち場へと散る。
 『パリヌルス、ソリタンはお前の配下にいるな、クリテスを通じて、ソリタンに出席するように手配してくれ。クリてスを通じてだぞ。解ったな』
 『解りました。ところで軍団長、今日と明日、二日間ですが、頃合いにして朝から昼過ぎまで、軍船の操船訓練を行います』
 『了解!統領と俺、参加の必要があるかな?』
 イリオネスが問いかける、考える、こたえる。
 『今日の参加はオーケーだ、明日はノーだ。以上だ』
 『解りました。よろしく願います。朝食後直ちに出ます。朝食をすまされたら、軍船の浜へ来てください。待っています』と打ち合わせてパリヌルスは軍船の浜へ歩を向ける。
 朝行事を一緒に終えたオロンテスがスダヌス浜頭がアエネアスとイリオネスの前に立つ、セレストスがキドニアへの出航を告げに来る、スダヌス浜頭が二人に挨拶を終える、セレストスとともに出航に浜へ向けて歩みだす、アエネアスとイリオネスが去りゆくスダヌス浜頭の背中を見送る、これからのち二度と会うことがない、胸に寂寥の情をみなぎらせて見送る、会う別れるは人の世の常である、胸に寂しさがこみあげてくる、涙が目にあふれる、二人の気が潤む、アエネアスが人差し指の背で目の下を拭う、イリオネスは心中に住む鬼を呼び寄せる、耐えられず腕で目をぬぐう。
 二人は波打ち際に立つ、昇る陽の光を右の頬に受け、朝の凪いだ海の彼方に目を凝らす、望見する、想いを馳せる。
 二人は己の心意気を確かめる、不退の決意、心の映え、体にみなぎってくるフオース、波を割って海洋を行く、艱難をしのぎ、さすらい行く、海に大河が注ぐほとりに開ける緑の大地が瞼裏に浮かぶ。
 『統領、行きましょう』の声にうながされ、二人は会所に向けて歩き始める。
 『なあ~、イリオネス、いろいろあったな』
 アエネアスが回顧の情を告げる。
 『出航までの三日余り、まだ、いろいろあります。今日、午前中、軍船の操船訓練に参加します』
 『ほう、そうか。それはいいな!』