『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  149

2019-10-24 06:05:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜頭の問いかけにイリオネスが身構える。
 『浜の一隅でパンを焼きたいのです。これから先も旅を続けるわけですので、三日分くらいのパンを焼きたい。焼き上げには夕刻までかかると思います。燃料には林の枯れ枝を拾います。その燃料代ということで受け取ってください』
 『そうですか、そう言うことで受け取ります。どうぞ使ってください』
 イリオネスがパンを焼く許可を得たことを一同に伝える、オロンテスがパンを焼く場を作る、他の者たちが枯れ枝集めに林に入って行く、枯れ枝を集めてかまどに火が入る、パン焼き作業が始まる、浜頭の配下の者らが見つめる、その手際よさに見とれる。
 浜頭が飛んでくる、イリオネスに声をかける。
 『あの~、軍団長殿、あのもらった礼金ですが、過分です。燃料の薪は、私らが都合します。配下の者らにすぐ運ばせます』
 配下の者らが薪を運んでくる、パン焼き作業の場に積みあげる。
 『存分に使ってください。不足すれば言ってください。直ちに準備します』
 その言葉を残して薪をおいていく。
 オロンテスにとってありがたかった。乾燥したいい薪である、パン焼き作業がはかどる、オロンテスは予定量よりも多くのパンを焼きあげる。
 パン焼き作業を終えたオロンテスがイリオネスに作業の終了を報告する。
 『軍団長、薪をもらったことによって、向こう四日分くらいのパンを焼きました。ついでに今夕の副菜にと考え、塩干魚をも焼きました』
 『ホウ、そうか、うまくいったか。重畳!』
 『スペッシャルパンも少々焼きました。浜頭と配下の連中に渡してやってもいい分を焼いてあります』
 『ホウ、そうか。彼ら口にして、どう言うかな?まあ~心づくしの礼心で渡す』
 浜頭方から燃料用の薪をもらったことでオロンテスの仕事がはかどり、予想外の結果を得ることができたことを喜ぶ。
 アエネアスが焼きあがったスペッシャルパンを持って浜頭のところに行く。
 『おう、浜頭!薪をありがとう。旨いパンが焼けた。食べてみてくれ。どうだ?』
 焼きあがったばかりの熱いパンを感動を隠さずにパンを受け取る浜頭、待ったなしで口に運ぶ。
 『これはうまい!統領、うまいパンですな!こんなうまいパンを口にする、感謝感激です』
 『おう、パンをほめてくれるのか、ありがとう。ところで浜頭、教えてもらいたいことがある。明朝、ここを出てオデッセウスのイタケに向かうのだが、航路について定かではない。イタケまでの航程はどれほどだろうか?』
 『統領、イタケへは、日中の航海で二日がかりですな。このピユロスから、沿岸に沿って北へですな。私の知っている範囲で航海図を書いてあげます。木板と木炭を準備します』
 浜頭が配下の者に言いつけて木板と木炭を準備する、アエネアスに浜頭の親切度がヒシヒシと伝わる。
 『浜頭、世話をかけます』
 『いえいえ、私のほうこそ薪代を過分にもらって、返すことができる、ありがたいと感じています。これくらいのことはさせてください』
 統領と浜頭のイタケへの航海についての話し合いが終わる、浜頭がちょっと待ってくれと言う、アエネアスが待つ、浜頭が航海図と停泊しやすいサギントス島の海岸図とその浜の浜頭あての紹介状を木板に書いてくれる。
 『浜頭、ありがとう!親切をありがたく頂戴する。明朝は、礼を言うことができないかもだ。今、ここで心から浜頭に礼を言います。親切にしてもらった、ありがとう』
 アエネアスが手をさしのべる、手のほこりを払って、アエネアスの手を握る浜頭、二人は目を合わせる、ジイ~ット見つめ合った。