『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱   エピローグ

2019-10-26 06:19:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ピユロスの浜に朝が来る。星がきらめいている、薄明の頃合いである。
 一夜を過ごした船団の者らが起きだしてくる、他国の海に身を浸してでやる朝行事である。
 アエネアスがユールスとともに朝行事をする、船団の者らが海に身を浸し、朝の挨拶を交わしている。
 朝行事を終える、出航を控えて緊張が高まる、船長役担当の声が飛び交う、出航の準備にとりかかる。
 
 アエネアスが波打ち際に起つ、西の海に目をやる、身体を反転させる、背にしていた陸地のはるかに向けて思いをはせる。
 クレタに浜を出て今日が四日目の朝である、ギリシア本土の西南端部ピユロスの浜から東南の空をのぞむ、陽が顔を見せる空が明るんでいる。
 彼は、この頃合いのニューキドニアの浜の情景を沸々と思い浮かべる、浜のみんなが溌溂の朝を迎えているだろうか、朝行事をしているだろうか。
 アエネアスが瞼を閉じる、クレタを託した彼らが事に携わる姿を瞼の裏に描く。
 
 この頃合いのニューキドニアの浜の波打ち際にドックスが立っている、ドックスは、超多忙の三日間を過ごしやり、アエネアスら船団の者らのことを思いやる。
 ドックスが北西の空をうかがう、そして、つぶやく。
 『アエネアス統領、うまくやれそうです、使命を全うします。統領の目的成就を祈っています』
 ドックスは、今、彼らがいずこの浜で朝を迎えているかに思いをはせる。
 遠い北西の空に一朶の雷雲、雷光のきらめきを目にする。

 船団一同が朝食を終える、イリオネスの檄が飛ぶ。
 『ピユロスを出航する!』
 『おうっ!』
 喊声をあげる、乗船する、位置に就く、船を停船位置から後退させて、船列を整える。
 一番船上でパリヌルスが咆哮する、
 『出航!漕ぎかたはじめ!』漕ぎかたが海面を泡だてる、船首が海づらを割る、今日の目的地を目指して船団が進み始める。
 浜に居並ぶ、トーバル浜頭と配下の者らが北に向けて、凪いだ海を割って進みゆく船団を見送ってくれていた。

               海洋を進む 舳先に起つ 西のはるかを望む
               船は 北へと波頭を割る
               大いなる希望を抱いて 超えていく荒れる海
               背を押す日輪 船を押す風
               我は行く 君とともに 心の命ずるままに
               俺には率いる民がいる
               信じたこの道をただひたすらに 俺は行くひたすらに
               我が民とともに いつに日にか 必ず踏んで立つ大地 建国の地

                            完