『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  135

2019-10-09 10:07:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、出航準備の完了確認を終える、作業の責任担当をした三人を呼び寄せる。
 『おう、ごくろうであったな。念押しの必要はないな』
 『はい、ありません』
 『よしっ!統領と俺は、先に行って待っている。俺の宿舎だぞ!オキテス頼みだ、ドックスを連れてきてほしい』
 『はい、解りました』
 アエネアスとイリオネスは、歩を自分の宿舎に向けて浜を去っていく。
 三人は念のための最終チエックをする、一同に明朝の件を伝える、後事を作業遂行のチーフを務めた者らに指示をして軍船の浜をあとにする。
 オキテスだけが建造の場にドックスを呼びに行く、ドックスに事情を伝えて同道させる、二人は歩きながら話を交わす、考えられるこれからのこと、数々の思い出話、語ることが多すぎる、ドックスが気にかけている事情について、オキテスのアドバイスを聞く。
 『解りました。状況を見て、その手を打ちます。ありがとうございます』
 二人は、少々遅れたがイリオネスの宿舎の戸口に立つ、声をかけて中に入る、イリオネスが二人をむかえてくれる。
 『オキテス、待っていたぞ。おう、ドックス、来てくれたか、ありがとう。これから、航海の話をする、聞いていてくれればいい、それを終えて、統領がドックス、お前に最後の引継ぎをする。受け取ってくれ』
 『解りました。クレタに戻られるのはいつ頃ですかな?』
 『それを聞かれると、自信を持って答えられない、早ければ1年後、だいたい3年、いや、4年後までにはクレタに戻りたいと考えている。よろしく頼む』
 『大いなる目標の達成と航海の無事を心を込めて祈ります』
 『おう、ありがとう!ドックス!その言葉をかけてくれたのが、ドックス、お前が第一番目だ!感謝!感謝だ!』
 その言葉をアエネアスにつなぐ、アエネアスがドックスに手をさしのべる、その手をシッカリと力を込めて握るドックス。
 ドックスの目には、涙が浮かんでいる、ジイ~ッとアエネアスの目を見る、アエネアスの目も潤む、アエネアスがドックスの肩を抱く、力を込めて引き寄せる。
 この光景を目にする周りの者らの胸が震える、場が動く、アエネアスに代わってイリオネスがドックスの肩を抱く、オキテスがかわる、パリヌルスが目をぬぐいながらドックスの肩を抱く、オロンテスが胸を震わせて目を合わせる、ドックスの肩を力イッパイに抱く、アレテスが一同にならってドックスの肩を抱く。
 彼らは感傷の極みの一時を終えた。