『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  137

2019-10-11 06:36:57 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスがクレタを出航して2日間の航海についての詳しい説明を終える。
 『一同!俺の話をよく聞いてくれた。話はスダヌスが語ってくれたことをそのまま君らに伝えた。彼が描いてくれた航路の図と彼の説明に何となく食い違いがあるように感じられるところがある。そこは細心の注意を怠ることなく海を渡っていくよろしく頼む。特に一番船に乗って先導するパリヌルス、心してその役務を遂行してくれ』と言って、航路を描いた木板をパリヌルスに手渡す。
 『解りました。言われたことに充分に心的配慮を配り航海に努めます』
 アエネアスの航海要領の話が終わる。イリオネスが話を継ぐ。
 『ここまで話したことについて質問があるかな?』
 オロンテスが手を上げる。
 『おう、オロンテス、何だ?』
 『この航海に際して、軍船が改造されていると聞いた。どのように改造したのかを聞きたい』
 『おう、パリヌルス、オロンテスの質問に答えてくれ』
 『はい、解りました』パリヌルスが立ちあがる。
 『このたびの航海に使役する軍船は、トロイ時代に建造した軍船である。ゆえに一般的な軍船構造で建造されている。そのようなわけで走行安定性に少々の難があります。どのよう難かと言うと操船時において、船が横方向にスベル兆候があります。それを抑えるために、櫂舵構造をやめて我らが戦闘艇に採用している舵構造としたこと。そのうえで船体底部に施している衝角構造体の改良をしたというわけです。これによって海上の走行安定性が向上しています。試験走行で確認しています。また、これまでの一本帆柱構造を二本帆柱構造とすることにより、帆柱が従来の一本帆柱より低くなり、船体のブレを少なくし、展帆面積を広くして、帆張り航走を向上させています。なお、4枚帆にすることにより、風対応の合理性を図っています。以上が改造した諸点です。改造については、エーゲ海と地中海なる海は、海の大きさが違う、海が大きければ、その深さも違う、海が違えばその海が発現する海洋状況も違うであろうことを想像して改造してあります。そのような海に対応できる船体構造の強化、走行の安定性を考えて改造し、これ以上はないという次元で改造しました。以上です』
 『おう、オロンテス、パリヌルスの詳しい説明、納得したかな』
 『質問に対して、詳しく説明してくれました。よく理解しました』
 『ほかに質問は?』
 『ありません!』と返事が返ってくる。
 『次に君らに伝えておくことは、統領の父君であるアンキセス殿、そして、息子のユールス、二人に付き添いのアカテスの三人は四番船に乗船する。それから最終の荷積みの件だが、荷積みしたい荷がここにあるこれだ。この打ち合わせを終えたら持ち運び、四番船に積む。統領も俺もその作業を共にする、大切なものであるだけにな、判ったな。伝えなければならんことがいっぱいあるな、各船に乗り込む船長の役務担当については、明朝、出航の時に伝える』
 一同に話し終えてイリオネスはアエネアスに体を向ける。
 『統領、何かありますか?』
 『おう、あるある!つめのひと言を一同に言っておきたい』
 アエネアスが立ちあがる、姿勢を改める、一同と目を合わせる。
 『おう、諸君!明朝、このクレタから、建国の地の探索に旅立つ!我々の不屈のスピリッツで目標を達成する!いいな!』
 『オウ、オウツ!』
 一同の喊声がイリオネスの宿舎を震わせる、一同が力を込めて手を打つ、拍手をもって打ち合わせを終える。
 イリオネスが一同に声をかける。
 『おう、これで打ち合わせを終わる。明朝は星が天空にある間に軍船の浜に集合!朝の荷積みをする。以上だ!では、荷積みする荷を渡す、統領と俺とは、ドックスとの引継ぎの業務を終えて軍船の浜に行く、待っていてくれ。積み込み作業は一緒にやる』
 アエネアスがドックスに引き継ぐ資産を渡す、受け取るドックス。イリオネスがドックスに告げる。
 『ドックス、いいかな、この宿舎とだな、統領の宿舎を引き継ぐ受け取ってくれ』
 『はい、統領から受領した資産、引き継ぎを言い渡された2件の宿舎を受け取りました』
 『よろしく頼む』
 『解りました』
 イリオネスの宿舎における業務を終えたアエネアスとイリオネスは、軍船の浜へ積み込む荷を携えて向かう、待機していた一同と積み込み作業を終える。
 『統領、終業の頃合いまでに少々時間があります。どうされますか?』
 『巡回する!』アエネアスに連れ立ってイリオネスが巡回に同道する。建造の場の者らと顔を合わせる、リナウスの武闘訓練場に足を運ぶ、パン工房の者らとも顔を合わせる。
 浜に降りる、パリヌルスにハシケを漕がせて小島の連中とも顔を合わせる、明日の別れを告げる。
 浜に戻って今日の業務を終えた。