『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  20

2011-12-02 08:20:49 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『判りました、統領。それにして大変なご決断をなさったのですね。私たちは、幸先のご無事と多幸をお祈りするばかりです。お手伝いすることがあれば、何なりと申し付けてください』
 『有難う、そのときは頼む。トリタス、お前も馬も大丈夫か。少し急ごうか』
 一同は、馬の歩みのピッチを速めて目的地に向かった。
 浜を出て2時間余りの時を経て、エノスの砦に着いた。
 砦では、門前の広場に兵を集めて、領主のエノゼリアスがじきじきに叱咤して教練の真っ最中であった。一行を認めた衛兵が駆け寄ってくる、イリオネスが身構えた。それは杞憂に過ぎた。アエネアスは衛兵に近づき、来意を告げ、取り次ぎ方を伝えた。彼ら四人はいっときの休憩である。彼らは門前の教練の風景を眺めた。
 エノゼリアスが衛兵を従えて、こちらに向かって歩んでくるのが見えた。彼らは地に降り立っていた。双方が歩み寄る。エノゼリアスとアエネアス、両者の目が合う。
 『おうっ、アエネアス殿。よう、見えられた』
 『はいっ、領主もお健やかで何よりです』
 二人は、握手から始め、久しぶりに会った喜びを、肩を抱き合い、互いの健在を確かめ合った。
 領主は、アエネアスに短く言葉をかけ、来意をたづねた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  19

2011-12-01 08:24:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『トリタスがそのようにい言ってくれるとは有り難い。後事を託する俺にとって、とてもうれしい。頼むぞ』 と言って、
 アエネアスは、馬上で礼を言った。彼はなお話を続けた。
 『エノスの領主もだが、トリタスも少しは考えただろうと思うが、俺たちが砦を造って、あの浜に居ついて、植民地化するのではと懸念したことだろうと思う。それがないということが、これで判ってもらえると思う。このことを今日の三者の話し合いで判ってもらった上で後事を託する。よろしく頼む』
 『統領の言われることの大切な意味が判りました。私も貴方のような方と別れなければならないことは、とても悲しい。浜の者たちも悲しみます。出会いがあり、別れが人の常なることも然りです。とても悲しいことです。悲しんでいるわけにもいきませんね。無事を祈って送らねばならないのに失礼しました』
 『別れが人の常なることとは、トリタスお前うまく言うな』
 『そうですか、統領。心がゆれますか。ところで、船出されてどちらに向かわれるのです?』
 『船出は、エーゲ海を南に向かう。終着は、どことは決めてはいないが、クレタ島に向かう。ギリシア、西アジアのエーゲ海沿岸には、我々が一国を建てる土地がない。そのようなわけだ』