『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  72

2013-08-02 13:48:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『リナウス、どうだ。月が姿を消すまでには、まだ少々間がある。島影が見えるようになるのはもうすぐだろう』
 『初めての海路ですから、それについては、ちょっと、、、』
 『おっ!そうかそうか。そういう俺も初めての海だ。見張っててくれ、島影が見えたら、即 伝えてくれ』
 『判りました』
 パリヌルスはふっと考えた。人間ていうやつは『なんと器用な生きものか』 物事を進めながら、他の事を考えている。そのうえ、突発する事象も処理する。つくづく『器用だな』と感心する。彼は、この生きものの未来のカタチは、どんなものだろうかと考えた。今の彼は、船の進行に気を配りながら、出航時を振り返っていた。考え事が進み、現時点に到達すると『このあとは、、、』と思考が進む。アクションプランを処理して、次のプランに進む。そして今をチエックして、次の行動に移る。『これでいいか』 青信号か、黄信号か、はたまた、赤信号の点滅か、瞬時に行動動機と現状を照合して、青信号でアクションを起こす。
 今の彼の作戦行動の『否』は、意識の中にはない。だが『成』は閾下の意識の中にある。意識はアクションプランの確実実行に集中していた。
 士気の燃焼は充分である。個の闘争の勝利の積み重ねが闘争の勝利である。作戦計画、闘争形態、闘争技法『不敗のカタチ』の確実実行である。それ以外の思念はなかった。
 彼は、あらゆる手段、そして、その実行を入念にイメージしてチエックした。結果の自信を深めた。
 『いいだろう。信号は青だ。前へだ』
 リナウスから『島影見ゆ!』の知らせが来た。彼は舳先へと移動した。
 彼は、事の大事を意識して、充分に距離をおいた沿岸航法で航走していたのである。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  71

2013-08-01 08:33:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、言葉に力を込めた。
 『俺たちは弔いの戦いをやる。彼らの供養だ。それによって、築砦の地の霊を慰める!彼らを襲った海賊どもをせん滅する。いいな、判ったか。一人も残さず、あの世へ送る。一同っ!心するのだ。これが君らの使命だ。これより海賊が根城にしている小島に向かう!』
 パリヌルスの興奮は極度に達していた。軍団長に代わった。
 『隊長の言う通り、君らの使命だ!遂行せよ、やり遂げるのだ!お前らが一丸となってやる大作戦である。励めっ!』
 先駆けする者たちの胸の可燃物に火がついた。そして、喊声をあげる。沸きに沸いた。火は勢いよく燃えあがった。
 『者ども、船を海におろせ!乗船っ!各員配置につけっ!』
 船長、副長らの檄が飛び交った。出航体制が整った。パリヌルスは、アヱネアスと二言三言言葉を交わして、1番船の舳先に立った。右手を高~くかかげて前方に向かって振り下ろした。櫂が海面を泡立てる。船は波を割った、白い泡だつ航跡を残して浜を離れた。浜には、彼らを見送る者たちの手が揺れていた。
 空にかかる月の高さが低い、ほのかに明るい海上を2隻の軍船とそれに比して小さな舟艇が西へと進んだ。風が吹き渡っていく、波高の低い小波がうねる。彼らの作戦行動の隠密性にふさわしい夜であった。
 パリヌルスはリナウスを呼び寄せた。