朝倉慶氏は、株式市場はこれから国家管理に入り、今後は大きく市場は動かなくなり、その結果、市場は<死に体>となって、壊死していくと言われています。
株式市場が国家管理になるということは、資本主義の事実上の崩壊になります。共産主義のように国家が株式を管理するということになるのでしょうか。強欲資本主義が滅ぶことは、人間にとっては良いことだと言えると思いますが、国家が管理するのも問題があると思います。資本主義でも共産主義でもない社会を、これからは模索し構築していく必要があると思います。プラウトなどもその新しい社会のモデルではないかと思います。
<記事転載。
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「上昇、やがて、壊死する株式市場」
朝倉 慶
2009.04
世界中の株式市場が堅調な動きになっています。また、日本の政府は景気対策とともに、今回、50兆円に上る株式の緊急時の買い付けに対しての法案を通す予定です。これで一体、株式相場はどうなっていくのでしょうか?
株式市場は国家管理となって、やがて壊死していく!?
結論的に言いますと、今回の世界的な株式市場の上昇は、大勢、下げ相場の中にあって最大のものになる可能性が高く、短期的には、日経平均10,000円以上を目指して、上昇していくでしょう。世間やマスコミで<景気回復>の文字が踊るまで、その動きは続くかもしれません。そしてその後は反落して落ち着き、やがて国家管理となって大きくは動かなくなる。その結果、市場は<死に体>となって、壊死していくというように考えたほうがいいと思います。
今年の予想として、日経平均4,000円の可能性などを考えていましたが、そのような動きは消えたと思います。今回の50兆円に上る買い支えの効果は、政府が本気で行おうとすれば、機能する形になっています。公的資金を使って、日経平均7,000円のラインを攻防戦にして必死の買い支えをしてきた日本政府ですが、今回の法案通過によって、いよいよ大手を振って株の買い支えができることになりました。
約280兆円(東証1部)の時価総額に対して、その浮動株(市場に出回る株式。大株主など、動かない株を除く)は2~3割程度だと思われますが、(今回の50兆円で)そのほとんどを買うという政策は強烈です。アナウンス効果もありますが、実質発動された場合も効くと思われます。この金額から考えて、株式の底割れはなくなったと考えるべきでしょう。
これはもう実質的な資本主義の否定であって、この市場否定の咎(とが)めはやがて強烈にやってくることになりますが、当面の株式相場の展開を考えますと、今回上げに入っていますが、この上げ基調が一段落して、落ち着いた後に、全く相場としての機能を失い、魅力のない、動かない、息をしない相場となっていくでしょう。今はまだわからないでしょうが、やがて参加者は消えていくでしょう、統制された相場は、もう相場ではなく、ただの管理された値段が存在するだけです。
公的資金は昨年10月から6兆円近い買い付けを行いました。この額は、外人売りに対応したものであって、この間、この公的資金しか日本の相場には頼りになる買い手はいなかったのです。あれだけ強烈な売りを支えた6兆円をはるかに上回る50兆円の買い支え資金ですから、これはもうはっきり言って国家による相場管理です。自由な市場というものは実質否定されたと言っていいでしょう。言い換えれば、このような強権を発動しなければ、国がもたないという判断に至ったということです。そして「日本国を守る」という大義名分のもと、資本主義の根幹である株式市場の国家管理を始めたということになります。その金額から言って、この国家管理は機能しますので、株式市場は国家の管理のもとに値段が形成されていくでしょう。その結果、やがて多くの人々はこの国家管理の状態を知ることになるでしょう。そうすると、市場は(本来それが持つ)ダイナミックさを失い、誰からも見向きもされなくなっていくでしょう。管理された相場であるならば、管理する側(ここでは国家ということになりますが)、その国家の意志を具体的に正確に把握できたものだけが儲かる相場となるのです。どこで国家が買いに入るのか? どこで国家が売りに回るのか? その情報に一番早く、正確にアクセスできる官僚だけが儲かるすべを知ることになるでしょう。
従来ですと、業績がどう変化するのか? 世界経済はどうなるのか? 日本企業の行く末は? 個別的に、その会社はどうなっていくのか? という観点から投資されるのですが、そんなことは今後は、値段を決める要因とはならないでしょう。
いまは株式市場が死ぬ前の〈最後の一花〉と考えた方がよい
現在相場が上げに入り、いかにもダイナミックに動き始めたように感じますが、これは、株式市場が死ぬ前の<最後の一花>といった方がいいでしょう。今、自由な相場の中で、最後に動いていた<売り方>、売って儲けようと勝負をしていた投資家達がこれから最後の決済に向かって、損失を出しながら買い上がっていく展開です。
それが、今までの反動としていかにも激しい形となって出てきますので、活発な状態になっているというわけです。そしてその状態から堅調な相場と見て、折からの景気回復を期待する人々の追随する買い付けも出てくるでしょう。資本市場最後の自由な相場として、派手な上げを演じるかもしれません。
そしてやがて、宴の後には、国家の管理が始まりますので、しばらくは下がらないでしょうが、下がってきた場合の下値のめどは、日経平均の7,000円です(これも国家の意志によって水準が上がるかもしれません。法案に基づいてETF(上場投信)の買い付けを国家が行い始めたところが下値となります)。
そして上値ですが、現在、売り方の買い戻しを中心に、かなりの上げ相場が展開されていますが、この上げも、国家の意志、今回の場合は、年金資金が買った6兆円という大量の株の買い付けが、どこのラインで本格的に市場で売りに出されるのか? の一点にかかってくると言っていいでしょう。
今のところ国家としては、上げ賛成の姿勢ですから、一応はまだ公的年金の売りも出てこないでしょう。今回、買い支えた大量の株をしっかりしまっている形となっていますので、急激に潮目の変わった相場において、取り残された売り方の買い戻しは終わっていませんので、まだ、国家の都合通りに株式相場は上を向いていくことでしょう。これは、完全な管理相場の始まりになりますので、いわゆる5月危機(=決算が悪いので、また株式市場が急激に売られ、暴落する)と言われる、大きな波乱はなくなったものと思われます。あっても多少の波乱で収まるでしょう。
これまでのごまかしの政策、不良債権隠しの時価会計凍結、ストレステストという茶番、常軌を逸した景気対策、不良債権の国家による買い取り、国債という借金の乱発、すべてが一旦は機能する形となりました。日本におけるこの株式市場の管理なども、似たような、その場しのぎのインチキ政策ですが、世界中これらの、粉飾、騙しの大きな波は収まりません。うわべだけ繕って、とりあえず一時的には危機の先延ばしに成功しているようです。もちろん、そのことが新たな世界中の悪性インフレという、収集のつかない大混乱へと向かう道にしかすぎないことは明らかなのですが、マグマをさらに溜め続けて、爆発を待つという形になりつつあるようです。
(※朝倉慶氏は、(株)船井メディア発行の『Kレポート ~経済の羅針盤~』でも詳しい経済レポートをお届けしています。よろしければご購読ください。)
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株式市場が国家管理になるということは、資本主義の事実上の崩壊になります。共産主義のように国家が株式を管理するということになるのでしょうか。強欲資本主義が滅ぶことは、人間にとっては良いことだと言えると思いますが、国家が管理するのも問題があると思います。資本主義でも共産主義でもない社会を、これからは模索し構築していく必要があると思います。プラウトなどもその新しい社会のモデルではないかと思います。
<記事転載。
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「上昇、やがて、壊死する株式市場」
朝倉 慶
2009.04
世界中の株式市場が堅調な動きになっています。また、日本の政府は景気対策とともに、今回、50兆円に上る株式の緊急時の買い付けに対しての法案を通す予定です。これで一体、株式相場はどうなっていくのでしょうか?
株式市場は国家管理となって、やがて壊死していく!?
結論的に言いますと、今回の世界的な株式市場の上昇は、大勢、下げ相場の中にあって最大のものになる可能性が高く、短期的には、日経平均10,000円以上を目指して、上昇していくでしょう。世間やマスコミで<景気回復>の文字が踊るまで、その動きは続くかもしれません。そしてその後は反落して落ち着き、やがて国家管理となって大きくは動かなくなる。その結果、市場は<死に体>となって、壊死していくというように考えたほうがいいと思います。
今年の予想として、日経平均4,000円の可能性などを考えていましたが、そのような動きは消えたと思います。今回の50兆円に上る買い支えの効果は、政府が本気で行おうとすれば、機能する形になっています。公的資金を使って、日経平均7,000円のラインを攻防戦にして必死の買い支えをしてきた日本政府ですが、今回の法案通過によって、いよいよ大手を振って株の買い支えができることになりました。
約280兆円(東証1部)の時価総額に対して、その浮動株(市場に出回る株式。大株主など、動かない株を除く)は2~3割程度だと思われますが、(今回の50兆円で)そのほとんどを買うという政策は強烈です。アナウンス効果もありますが、実質発動された場合も効くと思われます。この金額から考えて、株式の底割れはなくなったと考えるべきでしょう。
これはもう実質的な資本主義の否定であって、この市場否定の咎(とが)めはやがて強烈にやってくることになりますが、当面の株式相場の展開を考えますと、今回上げに入っていますが、この上げ基調が一段落して、落ち着いた後に、全く相場としての機能を失い、魅力のない、動かない、息をしない相場となっていくでしょう。今はまだわからないでしょうが、やがて参加者は消えていくでしょう、統制された相場は、もう相場ではなく、ただの管理された値段が存在するだけです。
公的資金は昨年10月から6兆円近い買い付けを行いました。この額は、外人売りに対応したものであって、この間、この公的資金しか日本の相場には頼りになる買い手はいなかったのです。あれだけ強烈な売りを支えた6兆円をはるかに上回る50兆円の買い支え資金ですから、これはもうはっきり言って国家による相場管理です。自由な市場というものは実質否定されたと言っていいでしょう。言い換えれば、このような強権を発動しなければ、国がもたないという判断に至ったということです。そして「日本国を守る」という大義名分のもと、資本主義の根幹である株式市場の国家管理を始めたということになります。その金額から言って、この国家管理は機能しますので、株式市場は国家の管理のもとに値段が形成されていくでしょう。その結果、やがて多くの人々はこの国家管理の状態を知ることになるでしょう。そうすると、市場は(本来それが持つ)ダイナミックさを失い、誰からも見向きもされなくなっていくでしょう。管理された相場であるならば、管理する側(ここでは国家ということになりますが)、その国家の意志を具体的に正確に把握できたものだけが儲かる相場となるのです。どこで国家が買いに入るのか? どこで国家が売りに回るのか? その情報に一番早く、正確にアクセスできる官僚だけが儲かるすべを知ることになるでしょう。
従来ですと、業績がどう変化するのか? 世界経済はどうなるのか? 日本企業の行く末は? 個別的に、その会社はどうなっていくのか? という観点から投資されるのですが、そんなことは今後は、値段を決める要因とはならないでしょう。
いまは株式市場が死ぬ前の〈最後の一花〉と考えた方がよい
現在相場が上げに入り、いかにもダイナミックに動き始めたように感じますが、これは、株式市場が死ぬ前の<最後の一花>といった方がいいでしょう。今、自由な相場の中で、最後に動いていた<売り方>、売って儲けようと勝負をしていた投資家達がこれから最後の決済に向かって、損失を出しながら買い上がっていく展開です。
それが、今までの反動としていかにも激しい形となって出てきますので、活発な状態になっているというわけです。そしてその状態から堅調な相場と見て、折からの景気回復を期待する人々の追随する買い付けも出てくるでしょう。資本市場最後の自由な相場として、派手な上げを演じるかもしれません。
そしてやがて、宴の後には、国家の管理が始まりますので、しばらくは下がらないでしょうが、下がってきた場合の下値のめどは、日経平均の7,000円です(これも国家の意志によって水準が上がるかもしれません。法案に基づいてETF(上場投信)の買い付けを国家が行い始めたところが下値となります)。
そして上値ですが、現在、売り方の買い戻しを中心に、かなりの上げ相場が展開されていますが、この上げも、国家の意志、今回の場合は、年金資金が買った6兆円という大量の株の買い付けが、どこのラインで本格的に市場で売りに出されるのか? の一点にかかってくると言っていいでしょう。
今のところ国家としては、上げ賛成の姿勢ですから、一応はまだ公的年金の売りも出てこないでしょう。今回、買い支えた大量の株をしっかりしまっている形となっていますので、急激に潮目の変わった相場において、取り残された売り方の買い戻しは終わっていませんので、まだ、国家の都合通りに株式相場は上を向いていくことでしょう。これは、完全な管理相場の始まりになりますので、いわゆる5月危機(=決算が悪いので、また株式市場が急激に売られ、暴落する)と言われる、大きな波乱はなくなったものと思われます。あっても多少の波乱で収まるでしょう。
これまでのごまかしの政策、不良債権隠しの時価会計凍結、ストレステストという茶番、常軌を逸した景気対策、不良債権の国家による買い取り、国債という借金の乱発、すべてが一旦は機能する形となりました。日本におけるこの株式市場の管理なども、似たような、その場しのぎのインチキ政策ですが、世界中これらの、粉飾、騙しの大きな波は収まりません。うわべだけ繕って、とりあえず一時的には危機の先延ばしに成功しているようです。もちろん、そのことが新たな世界中の悪性インフレという、収集のつかない大混乱へと向かう道にしかすぎないことは明らかなのですが、マグマをさらに溜め続けて、爆発を待つという形になりつつあるようです。
(※朝倉慶氏は、(株)船井メディア発行の『Kレポート ~経済の羅針盤~』でも詳しい経済レポートをお届けしています。よろしければご購読ください。)
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