<記事転載>
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「グーグルVS中国」
朝倉 慶
「邪悪になるな!(Don’t be evil)」グーグルの社是、モットーは自由な検索、ネット社会の構築です。中国政府からの常軌を逸した検閲にも我慢を続けてきましたが、もう堪忍 袋の尾が切れたというわけです。
「我慢できない、撤退も辞さない」と中国政府と全面対立というよりは、すでに中国での事業拡張を放棄して自らの道を歩んでいくことを決めたようです。世界中の企業が注目し、発展市場と位置づけ、なんとか中国市場に参入していこう、ないしは大きく事業を伸ばしていこうと必死なのに、グーグルは何とこの、中国から撤退しようというのですから驚きです。
「検閲されたのでは我々の求める本当の事業はできない、事業を始めた原点に戻ろう、たとえ大きな中国の市場を失っても、世界中のネット利用者はわかってくれる。彼らの信頼、本当の検索ルーツこそが我々の目指す道なのだ!」と言わんばかりです。
待ってましたとばかりに、アメリカ政府も全面的にグーグルを応援、グーグルの発表に合わせて、ハワイ訪問中だったヒラリー・クリントン米国務長官は特別に声明を発表、グーグルがサイバー攻撃を受けた件について、「非常に深刻な懸念と疑念を抱く、中国政府からの説明を求める」と発言、にわかに米中がきな臭くなってきたのです。米メディアはこの問題について、グーグルの潔い態度を絶賛すると共に、グーグルが受けたというサイバー攻撃には中国政府関係者が関与していたと報道しています。しかもこれらサイバー攻撃を受けた米企業は20社を超えるというのですから尋常ではありません。中国が国家として不正な攻撃をアメリカ企業に仕掛けたと言わんばかりです。
ネット管理を巡り、まっこうから対立する中国とアメリカ
米議会も勢いづいてきました。人権問題を追及し続けている急先鋒のナンシー・ペロシ下院議長はグーグルの行為に対して「表彰もの」と絶賛、自由な検索が大事で、グーグルの行動はアメリカ企業の手本になるという認識を示したのです。
面白いことにまるで筋書きでもあったかのように、堰(せき)を切ったかのごとく中国攻撃が始まったのでした。確かにくすぶっていた貿易問題、知的所有権の問題、米中間には解決が必要とされる懸案は山のようにあるのです。しかし、オバマ政権ができて以降、オバマ大統領のソフトムードと一緒になり、緊張緩和、融和政策が続いていたのでした。9月は胡キントウ中国国家主席のアメリカ訪問、11月はオバマ大統領の中国訪問となって、まさに米中の蜜月時代の到来を演出していたのでした。「米中は戦略的なパートナーである」との共通認識がなされたと見られていたのです。
グーグルは中国政府のネットの検閲を排除、天安門事件やチベット、ウイグルの問題など自由に公開しようという行動に出たのです。こんなことを中国政府が許すわけはありません。明らかに中国に喧嘩を売って自ら出ていこうとしている確信犯です。その確信犯に米国政府、並びに議会がエールを送っているのです。中国のネット上では「グーグルが撤退すれば中国のネットは闇の世界になってしまう」とグーグル支持が広がる一方で、「グーグルは中国の実情を理解していない」と批判も出てきているのです。中国政府の方針は一貫しています。当たり前のことですが、「ネット管理は治安維持の生命線」との基本方針で、ネット規制など緩めるはずもないのです。人民日報は今回の騒動に対し「インターネットの管理が国家の安全を保障する」と主張しました。
元々、中国とアメリカは受け入れられない部分があるのです。圧倒的な国家管理で社会の安定を優先する中国と、民主主義を世界中に広め、ネットの自由な活用を目指すアメリカは水と油で、交わるはずがないのです。そして今その全面対立が始まるきっかけが作られたのです。
アメリカが強気でいられる理由
今回の事件はおそらく歴史的な意味を持つようになるでしょう。というのもこれはアメリカ側が仕掛けた明らかに中国に対する挑戦であり、オバマ政権発足直後から続いていた対中国の融和政策の放棄であり、新たなアメリカの新方針を見せるデモンストレーションであることは明らかです。今までオバマ政権発足後は、アメリカは中国に対して弱越しでした。米国債の問題があるからです。アメリカはその巨額の借金、ファイナンスを中国に頼ってきたわけです。中国は米国債の一番の買い手です。中国が米国債を買ってくれなくなったら、アメリカの国債は当然金利上昇をなって暴落、アメリカ経済は大混乱、ひいては世界経済が取り返しのつかない局面に陥っていくのは必至なのです。ですからアメリカは中国におもねって緊張緩和を演出、米中蜜月を装っていたのです。それがこの突然の変化です。いったい何があったのか? 何を考えているのか? ここがポイントなのです。
グーグルは中国政府に喧嘩を売りました。これはもうグーグルは中国から撤退してもいい、他で事業を拡張するからいいよ、と中国に三下り半を叩きつけたのです。そしてこのグーグルを全面支援するアメリカ政府、議会、世論も実は同じ覚悟、ないしは方向を見ていると思った方がいいかもしれません。今のアメリカの状況で中国に喧嘩を売るということはすなわち「売れるものなら売ってもいいよ、米国債買いたくなければ買わなくてもいいよ、好きにすればいい!」との覚悟のもとなのです。
何故、アメリカは中国にこんなに強く出るのか? 実はこれこそがアメリカの本性なのです。元々中国などと融和する気などさらさらない、アメリカは覇権国家です。ドルという基軸通貨を持ち、金(ゴールド)を大量に持ち、穀物をはじめとする資源も豊富、いざとなれば一番強い国家です。昨年自動車販売でもアメリカは中国に抜かれました。このままでは多くの人達が思うように、ますます13億人を有する中国が発展して、あらゆる意味でアメリカにとって代わる、まさに中国は今の勢いで覇権を奪いとりにくるのに違いないのです。アメリカはそれを許すことはできません。今の流れで黙って中国の大発展、それに伴う覇権の移動を許すわけにはいかないのです。
「両雄並び立たず」いつかはこの2大国は対決せざるを得ないのです。中国もアメリカもそのことははっきり意識しているはずです。そして喧嘩には仕掛けどころがあるのです。全面的な喧嘩、対立を目指すのはまだ先でしょうが、今回の事件は、アメリカ側としては、もうすでに中国は国家としてのピークに至っており、これから収集のつかない混乱に陥る可能性を見ているに違いありません。今、日の出の勢いの中国にどんな混乱が? 懸念材料が? と思うでしょうが、まさに日の出の勢いだから出てくる混乱に目をつけているのでしょう。中国のこれから起こる問題は?
まさにヒートする経済が起こす、インフレです。先週中国は預金準備率を0.5%引き上げて金融を少し引き締めようとしていますが、この程度のことをしても恐らく全く効果はないでしょう。中国の不動産価格の上昇は異常で、一部の都市では月に10%近く上がるというのですから尋常ではありません。米シンクタンクAEIは年頭のレポートで今年世界の一番のリスクを中国のインフレ圧力と報告したのです。すなわち食料品をはじめとする中国国内物価の急騰、それによる混乱の始まりをみているのです。実際石油をはじめとする資源価格は上がり続けています。いつ最終商品に対しての激しい需要がヒートする状態になるかわからないわけです。日本国内の様子ではデフレでピンとこないでしょうが、勢いのある中国のような市場では一度供給不足状態になれば、あっと言う間に価格が急騰状態になるのは避けられないでしょう。需要が大きすぎるのです。今年の世界をみると年初からの世界的寒波の到来でエネルギー価格は急騰しました。
インフレの波は中国から?
FRBのバーナンキ議長はマネーを有り余るほどに印刷しましたが、まだアメリカ本土ではインフレは起きていません。というのも有り余ったマネーは中国やブラジルへの投資という形になって新興国にバブルを輸出している形となっているからです。ですからこの流れの延長上にインフレがあり、今回世界中を覆うことになるであろう激しいインフレの波はまず、その発展の一番手の中国から火が上がるというわけです。そして仮に中国の物価が制御できないようになると、いよいよ世界経済のコントロールが難しくなる、と考えているのです。13億人の人口は巨大な力の源泉ですが、反面、一度歯車が狂った場合はコントロールが効かなくなるのです。物価が急騰して食べられなくなる人達が溢れる事態を想像してみてください。それが中国全土で発生したら? 中国で景気を冷やすための金融緩和はできません。8%成長を義務づけられているのです。失業者の氾濫は許容できません。いざ物価が上昇したら舵取りが極めて難しいのです。そしてシンクタンクAEIはそのことを予見しているのです。
それだけではありません。米当局とも近い情報サービス会社、ユーラシア・グループは「2010年の最大のリスクは米中関係」と報告したのです。もう完全にシュミレーションはできていると言っていいでしょう。アメリカはこれから来る世界的な未曽有のインフレが襲う混乱を意識し始めているのです。それが中国から発生すること、そのことが世界経済の方向性を不確実にかつ難しくすると思っているのです。今、世界は新興国の爆発的な需要に助けられ、景気回復の足取りを歩もうとしているように見えます。その機関車の中国についにインフレの波が押し寄せ、結果、経済政策に支障を来たし、収集不能の状態に陥ると思っていることでしょう。ですからそれをみて、今、対中国政策の舵を切り替えたのです。そろそろ喧嘩を始める時、これから大混乱になって中国が弱ったときにアメリカは中国に対して牙を剥くでしょう。その時の役者はオバマかヒラリーかはわかりません。「肉を切らして骨を絶つ」、アメリカは自らの犠牲が伴うのはわかりきっています。戦うということは自らも傷つくのです。アメリカは覚悟を決めたのです。そして準備を始めました。勇ましいグーグルの姿はアメリカ国家そのものです。ついに、米中、生き残りをかけた覇権争いの幕は開いたのです。
★船井幸雄と朝倉慶氏の新共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が大好評発売中!!
(※朝倉慶氏は、(株)船井メディア企画の『朝倉慶の21世紀塾』でも詳しい経済レポートやCD情報、セミナーを開催、お届けしています。よろしければご活用ください。)
<転載終わり>
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一昨日はベンジャミン・フルフォード氏がグーグル=CIAだと言って批判していました。朝倉氏は、グーグルがいよいよ中国に喧嘩を売った、と書かれています。
『グーグルは中国政府に喧嘩を売りました。中国に三下り半を叩きつけたのです。そしてこのグーグルを全面支援するアメリカ政府、議会、世論も実は同じ覚悟、ないしは方向を見ていると思った方がいいかもしれません。今のアメリカの状況で中国に喧嘩を売るということはすなわち「米国債を売れるものなら売ってもいいよ、米国債を買いたくなければ買わなくてもいいよ、好きにすればいい!」との覚悟のもとなのです。
何故、アメリカは中国にこんなに強く出るのか? 実はこれこそがアメリカの本性なのです。元々中国などと融和する気などさらさらない、アメリカは覇権国家です。ドルという基軸通貨を持ち、金(ゴールド)を大量に持ち、穀物をはじめとする資源も豊富、いざとなれば一番強い国家です。昨年自動車販売でもアメリカは中国に抜かれました。このままでは多くの人達が思うように、ますます13億人を有する中国が発展して、あらゆる意味でアメリカにとって代わる、まさに中国は今の勢いで覇権を奪いとりにくるのに違いないのです。アメリカはそれを許すことはできません。今の流れで黙って中国の大発展、それに伴う覇権の移動を許すわけにはいかないのです。』
ご存知のように中国は約300兆円の米国債をこれまで買ってきました。アメリカとしては中国に米国債を売ってしまわれると、国債が暴落してアメリカがガタガタになってしまうので、何とか下手に出て、中国が米国債を売らないようにしてきました。中国の国力が弱るまでは、仕方なしに下手に出てきたということのようです。
ところが、このグーグルの態度に表れているように、アメリカは今後中国は弱って来るだろうと読んでいるそうです。今までは、米国債を売られると困るので、嫌々中国のご機嫌をとってきたけれど、そろそろ中国が弱ってきたので、もうご機嫌とりは止めたということのようです。
手の平を反したように、今後はグーグルのように、アメリカは中国に喧嘩を売って行くようです。何故アメリカは中国の国力が衰退していくと判断したのかというと、今後中国がハイパーインフレになると予測しているからだそうです。
リーマン後からずっとアメリカはドルを印刷し続けて来ましたが、アメリカ国内はハイパーインフレにはなっていません。アメリカがドンドン印刷したドルは、中国に投資され、結果として中国バブルを引き起こしたとのことです。
そして中国のバブルは、いよいよハイパーインフレを引き起こすと、アメリカは読んでいるそうです。
アメリカでバンバン印刷されたドルは、中国に投資され、そしてこれからハイパーインフレを中国に引き起こすだろうと、アメリカは予測しているそうですが、これは最初からアメリカの予定通りなのか、たまたま中国に投資されたのか。本当のところは解りません。
だから、アメリカは今まで中国には下手に出てきたけれども、これからは強気でいくぞという姿勢に変わってきたとのことです。もう遠慮はいらない!ということのようです。
中国覇権国家 VS アメリカ覇権国家 という構図です。2大巨頭が、ついに雌雄を決する時が近づいてきたようです。
1989年に天安門事件が起きましたが、その時私は東京の大塚の日本語学校で、日本語を教えていました。その一人の中国人の学生が、「中国はアメリカだけを大国だと思っている。いずれはアメリカと争う時が来る」と言ってました。私は、アメリカだけでなく日本も大国だよ、と言ったのですが、笑って相手にされませんでした。私は、笑って何も答えない中国人の学生に対して、「中国がアメリカと争うなどとは、百年早い!」と思い、相手にしていませんでした。学生も私も、お互い相手にしていませんでしたが、外的な国力だけで見れば、中国人の学生のほうが私よりも、先見の明があったようです。
このように、アメリカの予測が正しければ、そろそろ中国はハイパーインフレに突入するとのことです。例えば、米が日本円で10Kgで30万円、玉子が10個1万円、水高熱費が月額30万円など、とんでもないインフレになるということのようです。ハイパーインフレという巨大な津波は、中国から押し寄せて来るようです。それにしても、朝倉氏の予測にはいつも驚かされます。ハイパーインフレはアメリカ発だと思ってましたが、中国から来るとは。
●船井幸雄.com
http://www.funaiyukio.com/money2/index_1001.asp
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「グーグルVS中国」
朝倉 慶
「邪悪になるな!(Don’t be evil)」グーグルの社是、モットーは自由な検索、ネット社会の構築です。中国政府からの常軌を逸した検閲にも我慢を続けてきましたが、もう堪忍 袋の尾が切れたというわけです。
「我慢できない、撤退も辞さない」と中国政府と全面対立というよりは、すでに中国での事業拡張を放棄して自らの道を歩んでいくことを決めたようです。世界中の企業が注目し、発展市場と位置づけ、なんとか中国市場に参入していこう、ないしは大きく事業を伸ばしていこうと必死なのに、グーグルは何とこの、中国から撤退しようというのですから驚きです。
「検閲されたのでは我々の求める本当の事業はできない、事業を始めた原点に戻ろう、たとえ大きな中国の市場を失っても、世界中のネット利用者はわかってくれる。彼らの信頼、本当の検索ルーツこそが我々の目指す道なのだ!」と言わんばかりです。
待ってましたとばかりに、アメリカ政府も全面的にグーグルを応援、グーグルの発表に合わせて、ハワイ訪問中だったヒラリー・クリントン米国務長官は特別に声明を発表、グーグルがサイバー攻撃を受けた件について、「非常に深刻な懸念と疑念を抱く、中国政府からの説明を求める」と発言、にわかに米中がきな臭くなってきたのです。米メディアはこの問題について、グーグルの潔い態度を絶賛すると共に、グーグルが受けたというサイバー攻撃には中国政府関係者が関与していたと報道しています。しかもこれらサイバー攻撃を受けた米企業は20社を超えるというのですから尋常ではありません。中国が国家として不正な攻撃をアメリカ企業に仕掛けたと言わんばかりです。
ネット管理を巡り、まっこうから対立する中国とアメリカ
米議会も勢いづいてきました。人権問題を追及し続けている急先鋒のナンシー・ペロシ下院議長はグーグルの行為に対して「表彰もの」と絶賛、自由な検索が大事で、グーグルの行動はアメリカ企業の手本になるという認識を示したのです。
面白いことにまるで筋書きでもあったかのように、堰(せき)を切ったかのごとく中国攻撃が始まったのでした。確かにくすぶっていた貿易問題、知的所有権の問題、米中間には解決が必要とされる懸案は山のようにあるのです。しかし、オバマ政権ができて以降、オバマ大統領のソフトムードと一緒になり、緊張緩和、融和政策が続いていたのでした。9月は胡キントウ中国国家主席のアメリカ訪問、11月はオバマ大統領の中国訪問となって、まさに米中の蜜月時代の到来を演出していたのでした。「米中は戦略的なパートナーである」との共通認識がなされたと見られていたのです。
グーグルは中国政府のネットの検閲を排除、天安門事件やチベット、ウイグルの問題など自由に公開しようという行動に出たのです。こんなことを中国政府が許すわけはありません。明らかに中国に喧嘩を売って自ら出ていこうとしている確信犯です。その確信犯に米国政府、並びに議会がエールを送っているのです。中国のネット上では「グーグルが撤退すれば中国のネットは闇の世界になってしまう」とグーグル支持が広がる一方で、「グーグルは中国の実情を理解していない」と批判も出てきているのです。中国政府の方針は一貫しています。当たり前のことですが、「ネット管理は治安維持の生命線」との基本方針で、ネット規制など緩めるはずもないのです。人民日報は今回の騒動に対し「インターネットの管理が国家の安全を保障する」と主張しました。
元々、中国とアメリカは受け入れられない部分があるのです。圧倒的な国家管理で社会の安定を優先する中国と、民主主義を世界中に広め、ネットの自由な活用を目指すアメリカは水と油で、交わるはずがないのです。そして今その全面対立が始まるきっかけが作られたのです。
アメリカが強気でいられる理由
今回の事件はおそらく歴史的な意味を持つようになるでしょう。というのもこれはアメリカ側が仕掛けた明らかに中国に対する挑戦であり、オバマ政権発足直後から続いていた対中国の融和政策の放棄であり、新たなアメリカの新方針を見せるデモンストレーションであることは明らかです。今までオバマ政権発足後は、アメリカは中国に対して弱越しでした。米国債の問題があるからです。アメリカはその巨額の借金、ファイナンスを中国に頼ってきたわけです。中国は米国債の一番の買い手です。中国が米国債を買ってくれなくなったら、アメリカの国債は当然金利上昇をなって暴落、アメリカ経済は大混乱、ひいては世界経済が取り返しのつかない局面に陥っていくのは必至なのです。ですからアメリカは中国におもねって緊張緩和を演出、米中蜜月を装っていたのです。それがこの突然の変化です。いったい何があったのか? 何を考えているのか? ここがポイントなのです。
グーグルは中国政府に喧嘩を売りました。これはもうグーグルは中国から撤退してもいい、他で事業を拡張するからいいよ、と中国に三下り半を叩きつけたのです。そしてこのグーグルを全面支援するアメリカ政府、議会、世論も実は同じ覚悟、ないしは方向を見ていると思った方がいいかもしれません。今のアメリカの状況で中国に喧嘩を売るということはすなわち「売れるものなら売ってもいいよ、米国債買いたくなければ買わなくてもいいよ、好きにすればいい!」との覚悟のもとなのです。
何故、アメリカは中国にこんなに強く出るのか? 実はこれこそがアメリカの本性なのです。元々中国などと融和する気などさらさらない、アメリカは覇権国家です。ドルという基軸通貨を持ち、金(ゴールド)を大量に持ち、穀物をはじめとする資源も豊富、いざとなれば一番強い国家です。昨年自動車販売でもアメリカは中国に抜かれました。このままでは多くの人達が思うように、ますます13億人を有する中国が発展して、あらゆる意味でアメリカにとって代わる、まさに中国は今の勢いで覇権を奪いとりにくるのに違いないのです。アメリカはそれを許すことはできません。今の流れで黙って中国の大発展、それに伴う覇権の移動を許すわけにはいかないのです。
「両雄並び立たず」いつかはこの2大国は対決せざるを得ないのです。中国もアメリカもそのことははっきり意識しているはずです。そして喧嘩には仕掛けどころがあるのです。全面的な喧嘩、対立を目指すのはまだ先でしょうが、今回の事件は、アメリカ側としては、もうすでに中国は国家としてのピークに至っており、これから収集のつかない混乱に陥る可能性を見ているに違いありません。今、日の出の勢いの中国にどんな混乱が? 懸念材料が? と思うでしょうが、まさに日の出の勢いだから出てくる混乱に目をつけているのでしょう。中国のこれから起こる問題は?
まさにヒートする経済が起こす、インフレです。先週中国は預金準備率を0.5%引き上げて金融を少し引き締めようとしていますが、この程度のことをしても恐らく全く効果はないでしょう。中国の不動産価格の上昇は異常で、一部の都市では月に10%近く上がるというのですから尋常ではありません。米シンクタンクAEIは年頭のレポートで今年世界の一番のリスクを中国のインフレ圧力と報告したのです。すなわち食料品をはじめとする中国国内物価の急騰、それによる混乱の始まりをみているのです。実際石油をはじめとする資源価格は上がり続けています。いつ最終商品に対しての激しい需要がヒートする状態になるかわからないわけです。日本国内の様子ではデフレでピンとこないでしょうが、勢いのある中国のような市場では一度供給不足状態になれば、あっと言う間に価格が急騰状態になるのは避けられないでしょう。需要が大きすぎるのです。今年の世界をみると年初からの世界的寒波の到来でエネルギー価格は急騰しました。
インフレの波は中国から?
FRBのバーナンキ議長はマネーを有り余るほどに印刷しましたが、まだアメリカ本土ではインフレは起きていません。というのも有り余ったマネーは中国やブラジルへの投資という形になって新興国にバブルを輸出している形となっているからです。ですからこの流れの延長上にインフレがあり、今回世界中を覆うことになるであろう激しいインフレの波はまず、その発展の一番手の中国から火が上がるというわけです。そして仮に中国の物価が制御できないようになると、いよいよ世界経済のコントロールが難しくなる、と考えているのです。13億人の人口は巨大な力の源泉ですが、反面、一度歯車が狂った場合はコントロールが効かなくなるのです。物価が急騰して食べられなくなる人達が溢れる事態を想像してみてください。それが中国全土で発生したら? 中国で景気を冷やすための金融緩和はできません。8%成長を義務づけられているのです。失業者の氾濫は許容できません。いざ物価が上昇したら舵取りが極めて難しいのです。そしてシンクタンクAEIはそのことを予見しているのです。
それだけではありません。米当局とも近い情報サービス会社、ユーラシア・グループは「2010年の最大のリスクは米中関係」と報告したのです。もう完全にシュミレーションはできていると言っていいでしょう。アメリカはこれから来る世界的な未曽有のインフレが襲う混乱を意識し始めているのです。それが中国から発生すること、そのことが世界経済の方向性を不確実にかつ難しくすると思っているのです。今、世界は新興国の爆発的な需要に助けられ、景気回復の足取りを歩もうとしているように見えます。その機関車の中国についにインフレの波が押し寄せ、結果、経済政策に支障を来たし、収集不能の状態に陥ると思っていることでしょう。ですからそれをみて、今、対中国政策の舵を切り替えたのです。そろそろ喧嘩を始める時、これから大混乱になって中国が弱ったときにアメリカは中国に対して牙を剥くでしょう。その時の役者はオバマかヒラリーかはわかりません。「肉を切らして骨を絶つ」、アメリカは自らの犠牲が伴うのはわかりきっています。戦うということは自らも傷つくのです。アメリカは覚悟を決めたのです。そして準備を始めました。勇ましいグーグルの姿はアメリカ国家そのものです。ついに、米中、生き残りをかけた覇権争いの幕は開いたのです。
★船井幸雄と朝倉慶氏の新共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が大好評発売中!!
(※朝倉慶氏は、(株)船井メディア企画の『朝倉慶の21世紀塾』でも詳しい経済レポートやCD情報、セミナーを開催、お届けしています。よろしければご活用ください。)
<転載終わり>
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一昨日はベンジャミン・フルフォード氏がグーグル=CIAだと言って批判していました。朝倉氏は、グーグルがいよいよ中国に喧嘩を売った、と書かれています。
『グーグルは中国政府に喧嘩を売りました。中国に三下り半を叩きつけたのです。そしてこのグーグルを全面支援するアメリカ政府、議会、世論も実は同じ覚悟、ないしは方向を見ていると思った方がいいかもしれません。今のアメリカの状況で中国に喧嘩を売るということはすなわち「米国債を売れるものなら売ってもいいよ、米国債を買いたくなければ買わなくてもいいよ、好きにすればいい!」との覚悟のもとなのです。
何故、アメリカは中国にこんなに強く出るのか? 実はこれこそがアメリカの本性なのです。元々中国などと融和する気などさらさらない、アメリカは覇権国家です。ドルという基軸通貨を持ち、金(ゴールド)を大量に持ち、穀物をはじめとする資源も豊富、いざとなれば一番強い国家です。昨年自動車販売でもアメリカは中国に抜かれました。このままでは多くの人達が思うように、ますます13億人を有する中国が発展して、あらゆる意味でアメリカにとって代わる、まさに中国は今の勢いで覇権を奪いとりにくるのに違いないのです。アメリカはそれを許すことはできません。今の流れで黙って中国の大発展、それに伴う覇権の移動を許すわけにはいかないのです。』
ご存知のように中国は約300兆円の米国債をこれまで買ってきました。アメリカとしては中国に米国債を売ってしまわれると、国債が暴落してアメリカがガタガタになってしまうので、何とか下手に出て、中国が米国債を売らないようにしてきました。中国の国力が弱るまでは、仕方なしに下手に出てきたということのようです。
ところが、このグーグルの態度に表れているように、アメリカは今後中国は弱って来るだろうと読んでいるそうです。今までは、米国債を売られると困るので、嫌々中国のご機嫌をとってきたけれど、そろそろ中国が弱ってきたので、もうご機嫌とりは止めたということのようです。
手の平を反したように、今後はグーグルのように、アメリカは中国に喧嘩を売って行くようです。何故アメリカは中国の国力が衰退していくと判断したのかというと、今後中国がハイパーインフレになると予測しているからだそうです。
リーマン後からずっとアメリカはドルを印刷し続けて来ましたが、アメリカ国内はハイパーインフレにはなっていません。アメリカがドンドン印刷したドルは、中国に投資され、結果として中国バブルを引き起こしたとのことです。
そして中国のバブルは、いよいよハイパーインフレを引き起こすと、アメリカは読んでいるそうです。
アメリカでバンバン印刷されたドルは、中国に投資され、そしてこれからハイパーインフレを中国に引き起こすだろうと、アメリカは予測しているそうですが、これは最初からアメリカの予定通りなのか、たまたま中国に投資されたのか。本当のところは解りません。
だから、アメリカは今まで中国には下手に出てきたけれども、これからは強気でいくぞという姿勢に変わってきたとのことです。もう遠慮はいらない!ということのようです。
中国覇権国家 VS アメリカ覇権国家 という構図です。2大巨頭が、ついに雌雄を決する時が近づいてきたようです。
1989年に天安門事件が起きましたが、その時私は東京の大塚の日本語学校で、日本語を教えていました。その一人の中国人の学生が、「中国はアメリカだけを大国だと思っている。いずれはアメリカと争う時が来る」と言ってました。私は、アメリカだけでなく日本も大国だよ、と言ったのですが、笑って相手にされませんでした。私は、笑って何も答えない中国人の学生に対して、「中国がアメリカと争うなどとは、百年早い!」と思い、相手にしていませんでした。学生も私も、お互い相手にしていませんでしたが、外的な国力だけで見れば、中国人の学生のほうが私よりも、先見の明があったようです。
このように、アメリカの予測が正しければ、そろそろ中国はハイパーインフレに突入するとのことです。例えば、米が日本円で10Kgで30万円、玉子が10個1万円、水高熱費が月額30万円など、とんでもないインフレになるということのようです。ハイパーインフレという巨大な津波は、中国から押し寄せて来るようです。それにしても、朝倉氏の予測にはいつも驚かされます。ハイパーインフレはアメリカ発だと思ってましたが、中国から来るとは。
●船井幸雄.com
http://www.funaiyukio.com/money2/index_1001.asp