池田満寿夫 知られざる全貌展 (東京オペラシティアートギャラリー、1月26日~3月23日)
池田満寿夫(1934-1997)の作品をこんなにたくさんまとめて見るのは初めてだ。同じ人の作品を続けて見るときには、この人ならではの特徴を抽出しようなどということが頭に浮かびにくいから、集中しやすい。
それでも版画というのは、特に池田の多くの主要作品のようにドライポイントで独特の密度高く線が飛び交うものを連続して見ていると疲れる。快い疲れであるとしても。
ストレートにエロティックで、卑猥であったり、見るものをだましびっくりさせる引用、コラージュなど、多彩なもの、今で言えばリミックスの才能を一つの流れ、語り口にしているものは、やはり作家の筆である。
感銘というよりは面白さという方が近いのは確かだ。
そこへいくと、晩年の陶芸、それもほとんどは冒険的な、野焼きというのだろうか、そういうものたちは、もっと続けば、何か作家のユニークな力とでも言うべきものが、花開いたのにと、この人の急逝が惜しまれる。もっともこの陶芸の世界を私は知らなかったのだが。
十代に描いた、池田の好きな画家ばりの絵が面白い。私でも、これらは、松本竣介、ルオー、ピカソ、カンディンスキーをイメージしたものということはわかる。これは若い画家としては一応は器用で達者だったということを示すものだろうか。